from scene28 to 31

Stand by U ~scene28~

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僕が覚悟してた以上の地獄が始まった

ヒョンはもう鬼以外の何者でもなかった
息が切れて倒れ込んでいる僕を見ても


「ほら、立てよ」


この一言で終わる



泣きたいくらいくやしい
そこら中のものを手当たり次第投げつけて罵倒したくなることもある



「僕だって精一杯頑張ってるんだよ!!」





それでも・・・・僕は黙って立ち上がる


決めたんだ


行けるところまでいくって



僕が自分の意志で
自分の心で







ヒョンはヒョンで苦しんでいた
今までの自分のパートより、はるかに高い音域を求められるから


メンバーで配分していたそれぞれのもち味を
今は2人でまかなわなければいけない


お互いがお互いに頼っていた部分
お互いが足りない部分
それを埋めるように、僕らは必死に練習をした

朝も夜も昼もずっとずっと





そんな中で、僕とヒョンの関係も少しずつ変化していった

「一緒に」と決意したあの日から
ヒョンは僕に今まで以上にいろんなことを話すようになった
何かを決めるときでも、必ず僕の意見を聞く



「チャンミンはどう思う?」

「う~ん・・そのことはチャンミンにも聞いてみてください」



いつもヒョンたちの後ろで、すでに決定したことにただひたすら一生懸命ついて行った僕にとって、堂々と意見を求められることはすごく新鮮でもあり、プレッシャーでもあった


でも、ヒョンが意識的に僕をひっぱりあげようとしてくれているのが伝わる



ありがたかった



「2人で創りあげていく」ことを実感した








でも

2人の関係が対等であろうとすればするほど
2人で一緒に活動する時間が長くなれば長くなるほど
当然意見がぶつかることも多くなり


そして・・・喧嘩も多くなる


ヒョンは時々僕が素直じゃないことに腹を立てる

僕は心に思っていることを上手に表現できないことがある
それは昔から自分でもよくわかってる

それが斜めに構えているような、ちょっと冷めているような、そんな言い方になってしまうことがあって
今までは「末っ子」という身分でなんとなく許されていたようなところが、今はそうはいかなくなる


「チャンミナ、そういう言い方はよせよ」


ヒョンにそう言われると、僕はとたんに不機嫌になってしまう



僕にだって言い分はある



でも

冷静になって考えると「そうだよな」と思うこともたくさんあって、あとで激しく後悔する




僕は僕でヒョンに腹を立てることもある

ステージにかけるあきれるくらいの情熱はわかるけど
ヒョンは時々突っ走りすぎて周りが見えなくなる時がある

いろんなことにルーズなのも相変わらず

大雑把すぎんだよ、ほんと








そして

ちょっとした言い回しとか
ちょっとした態度とか

そんな小さなことで喧嘩になって

僕とヒョンは・・・口をきかなくなっていた




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仕事帰りの車の中で、僕とヒョンの不穏な空気を察してか、マネージャーが間に入る

「お前ら・・・いい加減にしろよな」


ヒョンは少しバツの悪そうな顔をして

「すみません・・・大丈夫ですから・・・・」とマネージャーに言う


僕もなんだか居心地が悪くて、無言で窓の外をじっと眺める









部屋に入ってからも、僕もヒョンも無言のままだ


こうなると、僕は意地でも謝らない
僕もヒョンも根っこの部分ではすっごく負けず嫌いで
自分でもこうゆうのはいけないってわかっているけど、でもやっぱり素直になれない




そんな雰囲気を見かねてか、ヒョンがぶっきらぼうにつぶやく



「先に、シャワー浴びろよ」




「・・・・・いいよ。ヒョンが先に使えよ」




僕はこの一言を言い返すのがやっと。





でも・・ヒョンが先に口をきいてくれた

多分・・・精一杯の譲歩だよな




ヒョンがシャワーを浴びている間、僕はなんとなくリビングでソファーに座りビールを飲む




自分の部屋に帰らないこと




これが僕なりの譲歩



かわいくないよな

自分でもそう思うけど、でも、僕はこういう風にしか振る舞えない




ヒョンがシャワーを浴び終わると
ヒョンはヒョンで台所やリビングで細々としたことをする



ヒョンもなかなか自分の部屋に戻らない




これが・・・・・多分僕たちの精一杯の譲歩






髪の毛をかわかしながら、無言でヒョンが僕からビールを奪い、一口飲む

「だから・・・いつも言ってんだろ。自分も飲めばいいじゃんって。冷蔵庫に入ってんだろ」

「だから、いつも言ってんだろ。俺はビールは嫌いなんだんよ。一口でいいんだよ」




・・・むちゃくちゃだ




そういいながらも・・・
ヒョンは僕の横に座り、ゲームを始める


ヒョンはいつもゲームをやりながらブツブツ言う。
僕は黙ってやる派だから、そんなことでもイライラするんだけど・・・



「っあ~くそっ!だめだ~」

なかなかクリアできないヒョンを見て、僕は横から口をはさむ

「・・・・あのさ~そこの攻略法知らないの?前に教えたじゃん」
「・・・・教えてもらったか?」
「・・・・もう忘れたのか・・・教えただろ!」
「別のやつじゃないの?」
「・・・・いいから貸してみ」

僕はヒョンからゲームを奪い、ヒョンがクリアできなかったところをやすやすとクリアする


「ほら、ど~ぞ」
「・・・・むかつく・・・」
「お~~むかつけむかつけ。クリアしてからそのセリフ言ってみ」
「・・・・・だからそういうものの言い方がむかつく!」




ちょっと確信をついた、ヒョンの本気とも冗談ともとれる一言




僕は・・・・なんとなく傷つく




そんな僕のちょっとした変化を、ヒョンはすぐに感じ取る


「お前がシャワーから出てくるまでに絶対クリアして見返すからな、見とけよ!!」


どうしていいかわからない僕を、ちらりと見る


「ほら、早く入ってこい!ビール全部飲んじゃうぞ!!」


「・・・・・さっき嫌いっていったじゃん・・・」



僕は立ち上がってシャワー室へ向かう




「あんまりシャワーの温度、あげんなよ」


「ヒョンがぬるすぎんだよ」




言ったあと、少し笑ってる自分に気づく

不思議と・・・気持ちが軽くなっている







僕とヒョンは何も変わらないけど
2人の関係は少しずつ変化している


ぶつかり合うのも、相手を本気で想っているから
腹が立つのも、相手を本気で想っているから


他人に対してちょっと距離をおく癖があった僕にとって
そんな変化をもたらしたのはまちがいなくこの男だ






僕がシャワーを浴びている間

きっとヒョンは慣れないビールを少しずつ飲んでいる

そしてシャワーから出てきた僕に言うんだ



「お前が遅いから全部飲んじゃったぞ」




ちょっと赤い顔をして

いたずらっぽく笑って




僕は何て言おうかな

「やっぱりクリアできないじゃん。まだまだ僕を越えられないな」

こんなことを言って、また「むかつく」って言われるのかな






冷蔵庫からビールを1本取り

ソファーでゲームをするヒョンに近づく




赤く火照ってるであろうヒョンの頬に

後ろから抱きついてビールを当ててやろう



ヒョンは一瞬驚いて

でもきっと僕の手をとってくれる


そして2人で笑い合って
心のわだかまりを少しずつほぐしていくんだ



「ごめん」ってなかなか言えないけど
お互いの言い分もわかるし
お互いが好きじゃない振る舞いも・・・・多分わかってる



肝心な言葉が言えない僕たちだけど
そうやって
少しずつすれ違いを乗り越えていこう




もう二度と心が離れないように



ひとつひとつ2人で乗り越えていこう











Stand by U ~scene29~

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頂点に登りつめた僕らを
2人で超えられるのか


「今の僕じゃダメだ」
そう考えて練習をする


「今の僕ならできる」
そう納得できるまで練習する



練習とひとりの仕事をこなす毎日
僕の24時時間に空白の時間はほとんどない
疲れ果てて、クタクタになって、立ち上がれないほどになる

そんな弱気な僕にヒョンは言う



「チャンミナ、練習は嘘をつかないよ」



僕はヒョンの言葉を信じている
だから何度でも立ち上がる

ヒョンを信じて、ついていくって決めたんだ




2人のステージが決まって
でも現実は手放しで喜べるほど甘くはないことを
あとからあとから嫌というほど思い知らされる




「2人に何ができる」




周囲からの言葉は、重く、深く、僕らに突き刺さる



「大丈夫、大丈夫」って自分に言い聞かすけど
僕のプレッシャーはどんどん大きくなっていく



日に日に激しさを増すネット上での批判
僕とヒョンへの容赦のない言葉の刃
大切な人達への・・・根拠のない攻撃


僕とヒョンだって生身の人間だ
叩かれれば痛いし、切られれば血もでる

心だって・・・・折れるんだ




「言いたいやつには言わしておけばいい」




僕を励ますためにそう言ってくれる仲間もたくさんいた

昔の僕だったら
もしひとりきりだったら

そう思って、自分のモチベーションを上げていたかもしれない



「わかってくれる人だけわかってくれればいい」



昔の僕の思考パターンだ


でも今は違う



「わかってもらえるまであきらめない」




ヒョンが僕に教えてくれた

そんなヒョンの生き方を、僕は尊敬する
ヒョンは僕を変えていく男だ






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暗闇の中に一筋の光が射し
目標ができた僕らの毎日は、一見充実しているように見えただろう



でも、僕らは本番が近づくにつれ、周囲からはわからない、どうしようもないプレッシャーと戦っていた




グループの存続を求める声

メンバーの存続を求める声




僕らが披露するステージ



ファンが求めるのは、僕らの代表曲


そしてファンが否定するのも・・・きっと僕らの代表曲




5人でつくりあげた歌声。5人でつくりあげたパフォーマンス。

それをたった2人でつくっていかなればいけない。



体が覚えているステップ。
歌い慣れた自分のパート。
それを少しずつ変えなければいけない行程は、決して楽しいものではなかった



結果を求められるステージだ
もし失敗すれば、状況はこれまで以上にひどいものになるだろう




これまで以上にひどい状況



そんなことを考えると・・・僕は情けないと思うけど体が震える




「それなりのステージ」「それなりのパフォーマンス」



そんなものは誰も求めていない
それでは意味がないんだ



「2人で守る」ということは、「維持」ではなく「進化」だ

僕たちは自分達で自分達のステージを超えなくてはいけない




それが「守る」ということなんだ






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僕は緊張と不安と恐怖で、眠れない日が続いていた


そんな日はヒョンの帰りを待つ


僕が不安そうにしていると「何かあったか」とすぐに聞くヒョンだったけど
最近はひとりの時間を大切にする僕が部屋になかなかもどらないと、僕の今の状態を察するようだ

何も言わずにそばにいてくれる
僕が眠りに着くまで、ずっとそばにいてくれる




「ヒョン・・・」

「何?」

「不安は・・・・ない?」

「・・・・・・・ないよ」

「・・・・マジで?」

「・・・・・うそ」

「・・・・・・・・」

「・・・すっげー不安」

「ヒョンでも?」


ヒョンはふっと力なく笑う


「当たり前だろ」

「あんだけの場数踏んででも?」

「場数の問題じゃないよ」

「・・・・・・・・」

「・・・俺らを・・・好意的な目でみてくれる人ばっかりじゃないし」



核心をついたヒョンの答えに・・・・・・2人だけがわかる深い暗闇を実感する


ヒョンも・・・・・苦しんでいる



「怖いか?」

「・・・・ん・・・・」

「俺だって怖いよ」




どれだけ練習しても
どれだけ歌っても
どうしても不安を拭うことができない僕ら


どこまでいけば、この不安から解放されるんだろう





「ヒョン・・・・僕は・・・正直怖い」

「・・・・ん・・・・」

「僕に本当にできるのか自信がないし、僕らへの周囲の良くない目も知ってる・・・」

「・・・・ん・・・・」

「何より・・・・・

会場が・・・・僕らを受け入れてくれるのか・・・・怖いんだ」

「・・・・ん・・・・」



結果を求められるステージ
僕らの未来を・・・・決めるかもしれないステージ




「でも・・・・」

「やるって決めたんだろ」



僕の言うべき言葉を・・ヒョンが奪う



「いけるとこまでいくって決めたんだろ?」

「・・・ん・・・」

「だったらやるしかねーだろ」



ヒョンが僕の頭を引き寄せる



「大丈夫」



僕の頭をトントンたたく



「大丈夫だよ。俺ら2人ならできる」







ヒョンの「大丈夫」は僕の特効薬だ

どれだけの眠れない夜をこの言葉で乗り越えてきたんだろう






そうだねヒョン

「2人で守る」と決めた日から

僕らはお互いを信じるって決めたんだ






僕ら2人が選んだ道を信じて


2人で乗り越えてきた道のりを信じて



ぼくは・・その先へ進もうと思うんだ




うっすらと見える


あの光の先へ・・・









Stand by U ~scene30~

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運命のステージ


でも、それは僕とヒョンに突然ふりかかった事の大きさと比例して
とてつもなく難しく、とてつもなく複雑なステージだった



僕らがステージに立つのは、終盤だ
もちろん他の共演者より格段に出番は少ない



僕たちに与えられた
数曲、数分間 ・・・・・



そこで、僕とヒョンの未来が・・・決まるかもしれない






そして

僕たちに用意された名前は


「yunho & changmin」


グループ名さえ・・・表立って名乗れない現状



でもヒョンは必死にスタッフとかけあっていた
ヒョンも僕も今の複雑な事情は百も承知だ
だから大切なスタッフたちと余計ないざこざを起こしたくなかった



でも、ゆずれないものがある


僕とヒョンがゆずれないもの



「東方神起」という名。




僕とヒョンは「東方神起」という名をステージ上で名乗ること


これだけは、絶対に何があってもゆずらなかった






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ゴールの見えない日々

違うな

スタートラインの見えない日々だ



あれから・・・・どれくらい時が経ったんだろう



いろいろなことがあった

僕もヒョンも、たくさん・・・たくさん傷ついた


自分たちからまいた種ではない
言ってみれば不可抗力だ

それでも、その場にうずくまって、立ち止まっていても何も変わらない
すでに、起こってしまったことだ

気持ちを切り替えるまでに時間がかかったけれど
幸いなことに、僕らは2人いた



ヒョンじゃなかったら
僕は今、ここにいない





僕らはそれこそ血の滲むような努力をした
口にすると簡単だけど、それは実際に手にとって、体で実感することのできる痛みの連続だった



皮肉にも
いつのまにか早朝と深夜のレッスン場は僕とヒョンが当たり前のようにおさえていた



次々にデビューする後輩たち
いつのまにか背中を見るようになった仲間たち



追われる立場が追う立場になり
自尊心と謙虚さの狭間に揺れていた日々



それでも僕とヒョンはあきらめなかった




もう1度ステージに立つために



この名を、守るために








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そしてとうとう・・・運命の日を迎えた



”地に足がつかない”とはこのことか

今までに感じたことのない緊張感が僕をおそっていた





デビューの舞台だってこんなに緊張しなかった
あの頃はある意味怖いもの知らずだったんだ
失敗したら・・・・また考えればいい
もしだめだったら・・・その時考えよう


でも今は違う


失敗は、許されない
僕とヒョンは、あまりにも大きな成功を手にしてしまったから
あの頃とは求められるものの大きさが違う


背負っているものの大きさが、全然違うんだ




僕とヒョンは尋常じゃない緊張感の中にいた

そしてそんな僕らを



触れてはいけないものに触れるように
逆にあからさまに核心に触れるように

そして・・・あたたかく見守るように



周囲のスタッフや共演者の僕らへの反応は、なかなか複雑なものがあったようだ

そんな視線に・・・少し自嘲気味に笑う


「なんか・・笑っちゃうけど・・・僕らより周りの方が緊張してない?」


ヒョンも笑う




なんにしたって僕とヒョンは


「お前らに本当にできるのか?」


そんな周囲からの無言のプレッシャーをひしひしと感じていた



そんなのにいちいち反応していちゃダメだ
そんな周囲からの視線を払拭するのは、このステージ上のパフォーマンスだ

戦うべき相手は周りじゃなく、自分自身だ



大丈夫。
やれる。
大丈夫。
僕はできる。



何度も何度も自分に言い聞かす




「チャンミナ」


ヒョンが不意に僕を呼ぶ


「ん?」



「・・・・大丈夫だよ」



ヒョンが笑い、僕の背中を軽く抱き、トントン・・・とたたく


「大丈夫だ。絶対。」







僕が1番欲しい言葉

誰よりもあなたに言って欲しい言葉








「俺たちのステージを・・・見せつけてやろう」

「 ・・・・うん」

「他のやつらとは違う、俺らだけのステージをやってやろうぜ」

「・・・うん」





ヒョンがとなりにいてくれて、これほどありがたいと思ったことはない


あなたの存在が
こんなにも僕を強くするんだ







「ヒョン・・・・」

「ん?」

「このステージが終わったら・・・・・」

「・・・ん・・・・」

「・・・・海に・・・」

「・・・・・・」

「・・・・また・・・2人で海に行きたい」



こんな時に他に気の利いたことはいえないのか

自分でも呆れちゃうけど、僕が今1番伝えたいのはこの言葉だった



ヒョンが笑う



「・・・・約束だ」




僕とヒョンが2人で決意したあの日

僕とヒョンが守ると誓い合ったあの日





あの日ヒョンとみた海を

僕はずっと覚えている



海はどこまでもどこまでも果てしなく続いていて




僕とヒョンの誓いも


ずっと・・ずっと・・・続いていくんだ・・・・








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僕らの出番だ


僕とヒョンは別々のところからステージにあがる



スタッフやら出演者やらがたくさん行き来する楽屋で、僕とヒョンは別々の入口へと向かう







僕は振り向く




一瞬


すべての音が消え


すべての動きが止まり



僕とヒョンは離れた場所からアイコンタクトをする




小さく



本当に小さくヒョンが頷く



-大丈夫。行くぞ!




僕も小さく・・・でも力強く頷く



-やれる。絶対。





僕は足早に入口へと向かう。



もう迷いや戸惑いはない
まっすぐに前を見据え
僕は僕らの道を信じて進むだけだ






ここは


あの日々からのゴールじゃない


僕たちの、スタート地点だ



ここからまた、はじまるんだ





僕は



今までは遠くに見ているだけだったあの光に



絶対にこの手を触れてみせるんだ





行こう、ヒョン



もう1度、あのまばゆい光の中へ










Stand by U ~scene31~

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暗闇の中で待機している僕らには
もちろん会場の様子は何も見えない






「大丈夫、大丈夫」






呪文のように唱える



心の中で何度も自分に言い聞かせて震える足を止めようとはするものの
僕の体は他人の体のように、全くいうことをきいてくれない
これほどの緊張ははじめてだった



最後に見た、ヒョンのうなずく姿を思い出す

きっとヒョンも、同じ気持ちでいる






大丈夫 大丈夫





待っていたんだ・・・この日を
いくつものつらい夜を、越えてきたんだ
何度も何度も、立ち上がってきたんだ


いくら言い聞かしても不安は消えないけれど
それでも僕は何度でも繰り返す





大丈夫、大丈夫









-その時だった









「・・・バンシンギ・・・トンバンシンギ・・・」









僕らの名を呼ぶ声が・・・かすかに聞こえた









「トンバンシンギ、トンバンシンギ」









そして、はっきりと

その声は僕の耳に届いてきた








聞き慣れたはずのコール



一度は・・・・失いかけたこの名前







心が震えるとはこういうことをいうのか







僕は・・・


僕の心はこんなにもこの声を求めていたのか




今さらながら思い知らされる





この世に・・こんなにも美しい声があるのか










そして-




その声に呼応するようにステージへと進んだ瞬間






僕が見たのは

光耀くレッドオーシャン







そして



会場を埋め尽くす人々のあたたかな声援、笑顔の数々




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ひとつ残らず心に刻もうと思った




ひとりひとりの顔、ひとりひとりの声
涙、笑顔、手を振る一本一本の指先まで




ひとつも逃したくなかった





僕らを待っていてくれた人がいた



僕らは・・・ここに帰ってきたんだ









後からステージに到着したヒョンに、僕は手を差し出す




ヒョンは、その手をしっかりと握り返す





繋いだ手から、ヒョンの思いが伝わる






「大丈夫。行くぞ」






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ヒョンも僕も、ありったけの魂をぶつけたステージだった



こんなにもがむしゃらに


こんなにも激しく


冷静さが売りの僕が


感情をぶつけたステージは初めてだったかもしれない






とてつもなく長く

それでいてあっという間にも思えた僕らのステージ






そして

僕たちの挨拶




ヒョンと僕は約束していた




「東方神起のユノとチャンミン」




そう、はっきり名乗ろうと









「せーの・・・こんばんは。東方神起です」










そう言えたとき



会場からは割れんばかりの歓声が聞こえた










その瞬間、僕の中で


「大丈夫、できるはず」が



「大丈夫、やれる」に変わっていた





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ステージが終わり、仲間やスタッフからもたくさんのあったかい声をかけてもらった



「お前ら、2人でやっていけるな」



僕らにかける、ほとんどの声がそれだった




ヒョンは幸せそうに

本当に幸せそうに仲間達の輪の中で笑っていた













倒れそうなほど疲れているはずなのに
僕とヒョンは意識だけが妙に高ぶっていて
家についてもなかなか眠ることができなかった




お互い話したいことはたくさんあるはずなのに
僕とヒョンには会話はなくて・・・・





「あんだけ飲んだのに・・・まだ飲むのか・・・」


冷蔵庫から出した缶ビールを開け、ソファーに座る僕にヒョンがあきれたように言う


「なんとなくね・・・眠れないし・・・」


これだけ飲んでも全然酔わないのは、気持ちが高ぶってるせいだろうな・・・


「俺も・・・・飲もうかな」


「お・・めずらしいね」



普段は家では飲まないヒョンが、ビールを取り出してくる。



「チャンミナ、いちおう乾杯しようぜ」

「はいはい」


嬉しそうに乾杯の音頭をとるヒョン


僕までつられて笑ってしまう









「海・・・いつ行けるかな」


ヒョンが唐突に言った




・・・・覚えていてくれた・・・




あんな忙しない混乱した中で僕が言った、たった一言をヒョンが覚えていてくれた




「忙しく・・・・なりそうだからな」


「ん・・・・いつだって・・・いいよ」



「そっか・・・」




だって、僕らはこれからずっと・・



「これからずっと一緒だもんな」



びっくりした
ヒョンが僕の心の中を見透かしたように言う



「・・・嫌でもね・・・」



僕はなんだか照れてしまって、またもかわいくないことを言ってしまう



「健やかなる時も、病めるときも、喜びの時も、悲しみの時も・・・」



ヒョンが牧師さんのような真似をしてふざけていう



「意味わかんない」



「そお?俺は結構本気なんだけど・・・・」


ヒョンが笑いながらビールを一口飲む





「チャンミナ」


「何?」





「・・・・永遠って・・・信じるか?」



ヒョンは・・・窓の外を見ながら唐突に僕に聞いた




「・・・・生物学的には・・・ないだろうね」





ふふっとヒョンが笑う

相変わらず現実的だな、とつぶやいて




「俺は・・・信じるよ。


今日・・・永遠を・・・・信じたいと思った」







ヒョンの言う永遠は


人々の心に残る何かをさしているのか


僕らの・・・未来をさしているのか





「チャンミナ」


「ん?」


ヒョンが真正面から僕を見る



あの日



「ついてきて欲しい」といった目と同じ瞳で







「・・・・ついてきてくれて・・・ありがとな」








そのヒョンのひとことで


僕は・・・・泣きそうになっていた





「・・・You are welcome!」





肩をすくめて、おどけて、目をそらす



僕の精一杯。




だめだ

泣いてしまう





「先シャワーあびるよ」




泣き顔を見られたくないから、足早にシャワールームに向かう











お礼を・・・言わなきゃいけないのは僕の方だ



僕をどん底からはいあがらせてくれたのは


ヒョン


あなただ



あなたがとなりにいてくれなかったら


僕は今ここにはいない



あなただったから



僕はここにいる







「永遠」を・・・



僕は信じたいと思う



この先あなたとつくっていく未来で



永遠に残るものを、つくってみたい



そう思った






僕はあなたとなら



できると思うんだ




あなたがとなりにいてくれて


僕があなたのとなりにいれば





永遠を




信じられると思うんだ・・・・







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haruno

Author:haruno
2011年のレコード大賞「why?(Keep Your Head Down)」で伝説の”秒殺トン堕ち”したharunoのブログです。「BL」や「腐」という言葉の意味すら知らなかった私が、もはや脳の9割近くが腐っています(笑)。ユノとチャンミンの「萌え日記」と「妄想小説」をマイペースに書いています。

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