from scene23 to 27


Stand by U ~scene23~

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あれから

僕たち2人の環境はそんなに大きくは変わっていないけど
僕たち2人の気持ちは、確実に小さな変化を遂げていた


相変わらずお互いに単独の仕事しかないけれど
僕はヒョンを見て思ったんだ

今自分に与えられた仕事に感謝をして、ひとつひとつ誠実に、後悔のないように取り組むこと

それが、僕らの未来にきっとつながっているんだ






そして、僕はずっと彼女のことが気になっていた
あれから1度も連絡をとっていない
多分・・・このままにしても終わるんだろうけど
でも、僕はそんな風にはしたくなかった

男として、きちんとけじめをつけたかった





勇気を出して彼女に連絡をとる

「どうしても、会って話したいことがあるんだ・・・」





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彼女が選んだのは、僕たち2人が初めてデートをして場所だった

「なつかしいね」

と笑ってるけど、彼女が僕の気持ちを察しているのは表情でわかる





「ちゃんとしたいんだ、いろんなことを」


彼女は黙って聞いていた


「今のままじゃ・・すべてが中途半端で終わりそうなんだ・・・・」




嫌いになったわけじゃない
彼女に悪いところがあるわけでもない


全ては僕のせいなんだ



でも、何を言っても言い訳に聞こえるし
そんなことを言って彼女にずるずる気を持たせるのも嫌だった



本当に、こういう時に上手になれない自分が嫌になる




彼女は僕に何も聞いてこなかった


「頑張ってね・・・これからもずっと応援してるから・・・」


笑ってそういう彼女を見ると、僕はなんともいえない切ない気持ちになった





送っていくという僕に、彼女は頑としてひとりで帰ると譲らなかった

「まだ時間も早いし、いろいろ寄りたいところもあるから」


ばいばいと手を振り、遠ざかっていく彼女の背中を見て
今までのことが次々とよみがえってくる



はじめてのまともなデートをした日
はじめて、手を繋いだ日
はじめて、キスをした日
はじめて・・・




どんな時も僕を支えてくれた彼女
たくさんのことを僕に教えてくれた彼女

僕があまりにもまだ未熟だから
君のために何もしてあげられなかった



本当に・・・・ごめん



僕は次々にこみ上げてくる甘く切ない気持ちに押しつぶされないよう
空を見上げて・・・大きく深呼吸をした









「ただいま・・・」

ドアをあけるやいなや、何かいい匂いがする


「ヒョン?」


リビングのドアを開けると、ダイニングテーブルには何やらごちゃごちゃといろいろなものが並べられている


「おうっおかえり」


なぜか少しご機嫌なヒョンが、あろうことか・・・



料理をしていた



「・・・なんのマネ?」
「なんのって・・料理だよ料理」
「・・見ればわかるよ」
「最近さ、お互い忙しくて外食ばっかだったじゃん。だからたまにはいいかなって思ってさ」


その気持ちはわからないでもないけど

でも

僕は台所を見て愕然とした



ありとあらゆる調味料が蓋があいたままで出しっぱなし
散乱する皿、ボール、コップ、・・・粉?
なぜあんなに鍋とフライパンが出てるんだ?



あれは一体・・誰が片付けるんだ・・・




僕の視線の先に気づき、ヒョンが慌てて言い訳する

「ああ、あれは・・なんとかするからさ、ま、とりあえず食べようぜ」



なんとかするね・・・

多分「僕が」なんとかする・・・ね





「チャンミナ、ビール飲むか?」
「あ・・うん」

ヒョンは必ず僕のビールを2口ほど飲む。
もうそれがわかってるから、僕もヒョンと僕の間にビールを置くのが普通になっていた。

「どう?」
「・・・・・・・」
「うまい?」
「・・・・・人参がちょっと固い」
「え~ちゃんと時間かけて煮たんだけどなあ」
「スープ・・・・濃すぎ」
「なんで、これくらいがいいんだよ」
「野菜の切り方・・雑・・・」
「これくらい分厚いほうが噛み応えがあるんだよ」
「なんでこれが入ってるワケ?」
「わかってね~な~。これがうまいんだって、マジで」
「もう少し盛りつけ方なんとかなんないかな~」


「・・・もういいよ。じゃ食うな」


さすがのヒョンも少しふてくされる

「・・・嘘だよ。見た目はともかく味は・・・うまいよ」

「・・・だろ?」


ヒョンが嬉しそうにビールを一口飲む


僕は本当はすごく嬉しかった
なんかありがとうとかおいしいとか改まって言えないけど、本当にすごくありがたかったんだ






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台所をやっと片付け終わり
ソファーに座ってゲームをしているヒョンの横に座る



「ヒョン・・・」

「ん~?」

ヒョンは最近ロールプレイにはまっている

「今日さ・・・・・」

「ん~・・・」


「・・・・今日・・別れたんだ・・・」


ゲームをしているヒョンの指が、一瞬止まる

僕は本日4本目のビールをあける



「・・彼女とのこと・・ちゃんと、終わりにしたんだ・・・・」

「・・・そっか・・・」

「・・・いい子・・・だったんだ・・・・」

「・・・そっか・・」

「・・・・僕にはもったいないくらい・・」

「なんだよ・・自慢か?」



ヒョンは笑って僕を見た

でも少し泣きそうになっている僕に気づいて



ゲームを置き、僕の肩を抱いた
僕はヒョンの肩に頭を置く



何も言わず、ただ頭をポンポンと優しく叩いてくれる




-ダイジョウブ




いつものおまじない





「・・・ちゃんと、したかったんだ・・・」

「ん・・・」

「・・・これ以上・・・傷つけたくなかったんだ・・・」

「ん・・・・」




うまく言えないけど
自分でも何をどうちゃんとしたかったのか言葉にできないけど

ヒョンなら・・・わかってくれる気がした

多くを言わなくても、きっとわかってくれる




ああ・・やっぱり僕の帰る場所はここなんだ
なんでこんなに落ち着くんだろう






「・・ほんとに・・・いい子だったんだ・・・」

「・・・なんだよさっきから・・未練あんの?」

「未練は・・・ないけど・・」

「じゃあなんだよ」

「なんだよって・・・なんでヒョンがキレんだよ」



少し口を尖らせるヒョンを見て・・・なんだかからかいたくなる



「・・・・妬いてんの?」

「・・・まさか」


今度はヒョンが聞く


「妬いて欲しいの?」

「・・・・まさか」



言葉遊びのような応酬
耐え切れなくなって、2人でクスクス笑う




そして


笑い声が途切れ


僕はヒョンの肩にもたれたまま


静かな優しい沈黙が僕らを包む





「・・・何落ち込んでんだよ、いい男がこんなに近くにいるだろ?」

「・・・それ・・・本気でいってんの?」

「なんだよ、ちがうか?」

「・・・そう言うセリフは女に言えよ・・・」




ヒョンが僕の手からビールを奪い、一口飲む


「ある意味、本気」

「ん?」

「損はさせない」

「・・・・・・」

「今度は・・守る自信はある」

「・・・・・・」



ヒョンが思いのほか真面目な顔していうから
僕も少し動揺してしまう



それは男として?
女の人に対して?




「また・・・酔っ払ってんの?」


「・・・お前・・・ムカつくな・・・」






そう言って少し笑って


僕の顔を覗き込むように


ヒョンの顔が近づく






僕にとっては3回目。

ヒョンにとっては・・2回目?





僕にとっては自然なこと



多分・・・
ヒョンにとっても自然なこと




こうやって、僕らお互いの気持ちに寄り添うんだ




僕たちだけにしかわからない



絆を確かめ合うんだ・・・






Stand by U ~scene24~

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僕はドラマの仕事がメインになっていて
初めての演技に慣れないながらもやりがいを感じていた



ステージでのパフォーマンスと演技は似ている
歌詞の世界観、曲の世界観を自分なりに理解して、それを歌声で、表情で、ダンスで、表現する


「表現者」という面では歌うことも演技することも同じだ



 -今の全ては未来へ続いている



僕は一人の仕事も以前より自分なりに楽しめるようになっていた





ヒョンも忙しい毎日を送っていた
「もうそのへんでやめとけよ」っていいたくなるくらい


いろんなジャンルに挑戦して、もちろんやるからには死ぬほどの努力をして
やっぱり全てを完璧にこなしていく




僕にはヒョンの選択に口を出す権利はない
ただただ、ヒョンの成功と無事を願うばかりだ








それぞれの仕事を充実させていく中で
僕とヒョンはお互いの仕事場によく足を運んだ



僕はヒョンの舞台やステージは必ず見にいったし
ヒョンも僕のドラマの現場にたびたび足を運んだ
僕はどちらかというと周りに迷惑をかけたくないから、目立たないようにヒョンを見るようにしていたけど
ヒョンはいつも僕の周りのスタッフに挨拶回りをする



ったく・・・保護者じゃないんだから・・



僕はなんだか恥ずかしくって、ヒョンの袖をひっぱってそっという

「ねえ、ヒョン・・・そんなに周りに挨拶しなくていいよ・・」
「なんで?ちゃんとお前のことお願いしとかないと」
「・・・子供じゃないんだから・・・、それくらい自分でできるよ・・・」
「ダメだよ。お前は言葉が足りない時があるから」





痛いところをつかれた



そうなんだよな




親から「礼儀正しさ」を叩き込まれた僕は、正直「愛想」や「愛嬌」の振りまき方がよくわからない
それは相手に失礼にあたることじゃないかと思ってしまい、どうしても躊躇してしまう

「礼儀正しさ」だけでは、この世界は生きていけない
自分でもそう思うんだけど、どうもうまく振る舞えなくて、僕はよく誤解をされる



ヒョンは、そうやって僕のことをよくわかってくれている
僕に足りないものをいつもそうやって補ってくれる




ヒョンをそっと応援することしかできない僕は
どれくらいヒョンのことを助けられているんだろう・・・






僕とヒョンは、仕事が空いた時間は何かに急き立てられるようにレッスンをしていた

レッスン上ではいつもヒョンの激しい激が飛ぶ

言い返したくもなるし、くやしくて泣きそうな時もある
でも、最後に「お疲れ」といって手と手を合わすと
すべてのしがらみがぱっと消えてなくなるから不思議だ






でも-



ヒョンは最近、精力的に活動しながらも
ふと見ると
ひとりでじっと考え込んでいることが多くなっていた




そんなヒョンを見ていると、僕は少し不安を感じたりもする





また何かひとりで抱え込んでいるんじゃないか


またひとりで乗り越えようとしているんじゃないか





でも僕はこんな時でさえ素直になれず
そんなヒョンに何も言えずにいた





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「チャンミナ・・・」

「・・・ん~なに?」

いつものくつろぎタイムにヒョンが話しかけてくる


「ドラマ・・楽しいか?」

「ん~、ま、楽しいといえば楽しいよ。スタッフもいい人ばかりだし」

「いや・・・そうじゃなくて・・・演技っていう仕事自体が楽しいのかなって思って」

「あ~・・?まあ・・難しいけど・・やりがいいはあるかなって思う」

「・・そっか・・・」


「なに?急に・・・」

「いや・・・・・・うん・・・いいと思うよ」

「あ?」

「俺から見ても、ドラマのお前さ、結構いいと思うよ」

「・・何?なんか悪いもんでもくったか?あっなんか・・・・壊した?」


そんなんじゃないよ、と笑いながら、ヒョンはシャワールームへ向かう




変なの

なんなんだ

多分・・・褒められたんだとは思うけど

素直に喜べないのは・・・なんでだろう・・・






ヒョンは僕の個人レッスンにもよく顔を出す
アドバイスをくれる時もあれば、何も言わずにじっと見てるだけの時もある
その眼差しは、親父のような、兄貴のような
・・・・恋人のような・・・



僕は恥ずかしくてもうこなくていいよと何度も言ったけど
ヒョンは時間が空けば、僕のレッスンや現場を見に来ていた
恥ずかしいけど・・・
でも少しうれしいような・・・

僕はなんともいえない複雑な気持ちで、半ばあきらめたヒョンの挨拶回りを遠くから眺めていた







レッスンからの帰りの車の中で
ヒョンが運転をしながらつぶやいた



「お前・・・成長したな」
「あ?」
「ん・・・・なんか成長したなって思って」



また、いきなり変なことを言い出した
僕は助手席でオーディオをいじりながらふざけて返す



「・・・・まあね。いつのまにか事務所で1番でかくなってるしね」


ヒョンがそんなことを言ってるんじゃないってわかってるけど
なんか照れてしまってついそんな返ししかできなくなってしまう



けれどヒョンは真顔だった


「お前さ・・・」

「・・・?」

「・・・・・・いいや、なんでもない」

「なんだよ」

「ん・・・・いいんだいいんだ、本当になんでもない」




すごく気になった



最近ひとりで考え込んでいる姿とか
僕をやたらほめるところとか
言いかけてやめるところとか



なんだろう・・この何とも言えない胸のざわつきは




なんでもいって欲しいのに
もっと頼って欲しいのに
何かあるなら相談して欲しいのに





僕らは仕事に関することはなんでも言い合えるのに
肝心なところではいつも言葉が足りない


そう思っているのは 僕だけなのかな・・・








そして・・・僕は僕で考えていた



今お互いの仕事を充実させている意味



確かに自分のスキルアップや糧になっているのは事実だけど




その先に・・・何がある?




お互いの一人の仕事が充実すれば充実するほど
時としてお互いを遠く感じてしまうのはなぜだろう





運転しているヒョンの横顔を見る



こんなに近くにいるのに、すごくあなたを遠く感じるときがある



どうして僕はいつも言葉を飲み込んでしまうんだろう







そんな気持ちを抱えながらも

僕らは目の前にある仕事にただただ打ち込むしかなかったんだ 








Stand by U ~scene25~

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ヒョンは相変わらずひとりでじっと考え込むことが多くて

心配はしていたけど


前見たくお酒を飲んでいるわけじゃないし、どこへ行っているのかわからないわけでもないから
僕はそんなヒョンをただ黙ってみていることしかできなかった




ひとりでのスタジオレッスンが終わり
帰ろうとしていたところで、事務所のスタッフに呼び止められた


いろいろと雑談をしている中で、そういえば・・と切り出される


「お前、あの話、どうした?」

「あの話って?」

「舞台だよ。今度の事務所の公演」

「・・・・・?」




-なぜか胸騒ぎがした




「あれ?もしかしてまだ聞いてないのか?ユノが何度も話に来てるからてっきりお前ももう知ってるかと思ってたけど」

「何の・・・・ことですか?」



僕は自分の鼓動で胸が潰れてしまうかと思うくらいだった



「今度の公演でさ、お前とユノが出るかって話があってさ」


もうユノが上の連中と何度も話し合いをしてるんだけど・・・
なんでかあのユノがイマイチ消極的なんだよな。
てっきりお前ら2人で話し合ってるとばかり思ってたけど・・・・






そこから先の話はよく覚えていなかった






ここ最近、ヒョンが1人で考え込んでいる理由がやっとわかった


いろんなことが頭の中でぐるぐる回り
僕は激しく混乱していた



どうして?
どうしてヒョンは僕に何も言ってくれないんだ

そんな話、聞いてないよ


なんで?
なんで相談してくれないんだ

僕はそんなに頼りにならない?




-「ユノがイマイチ消極的」


スタッフの言葉がよみがえる




ヒョンが消極的・・・・
あんなにステージに立ちたいと願うヒョンが足踏みしている



なんで

どうして

僕と・・・だから・・・・?





このあと撮影が入ってなくて本当に良かった
僕は頭の中が混乱していて、とてもじゃないけど演技に集中できるような状態じゃなかった






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その夜

僕はどんなタイミングで話をしていいのか
どんな風に話をすればいいのかわからなくて
普段にも増して言葉数が少なくなっていた


そんな僕を変に思ったのか

「チャンミナ、なんか・・・あった?」

とヒョンの方から僕にたずねる


そんな風にいつも僕の変化にいち早く気付いて
誰よりも僕を理解しようとしてくれるくせに

どうして・・・・・






「聞いたよ・・・」

「んっ?何を?」

「事務所のスタッフから・・・今度の公演のこと・・」


ヒョンの動きが一瞬止まる


「僕たち2人でって・・話」

「・・・ん・・・そっか・・」

「そっかって・・・・知ってたんだろ」

「・・・・まあな・・・」

「なんで隠してんだよ」

「いや、別に隠してたわけじゃなくて・・・」

「隠してんだろ!なんで何もいってくんないんだよ!」


冷静さが売りの僕が
自分でもびっくりするくらい感情を露わにしていた



-「ユノがイマイチ消極的」

 スタッフの言葉がよみがえる




「いや・・・時期が来たらさ・・・」

「時期ってなんだよ。自分はもう上の連中と話してんだろ」

「それは・・・・・」

「僕は関係ないってか?」

「・・・・・チャンミナ・・そうじゃなくて・・」

「ひとことくらい相談があってもいいだろ!」

「だから・・それは・・」



「またなんでも自分ひとりで抱えんのかよ!」




自分でもびっくりするくらい大きな声が出た





ヒョンは・・・黙っていた

じっと一点を見つめて
次に言う言葉を考えあぐねているようだった



嘘が嫌いで直球勝負で
言いたいことはいつもストレートに言う

そんなヒョンが
今日は違う人に見える




僕はもう何も言えずにいた

くやしいのか悲しいのか
もう自分の感情も整理できないでいた



お互い気まずい沈黙の時間がただ流れていく



そうして

耐え切れなくなった僕は黙って自分の部屋へと入っていった




僕はどうしたいんだろう


何を求めているんだろう





次の日

僕は早朝からロケ地へ向かうことになっていた
今日から泊まりのロケになる


このままの状態で何日間かヒョンと離れる不安と

冷却期間をおいた方がいいと思う気持ちと


半々くらいで家を出る





マネージャーの車の窓から流れゆく景色を見つめる


夜明けが近かった

ヒョンは・・・眠れているんだろうか


そんなことを考えると
ヒョンを追い詰めてしまった自分がとても嫌になる

あの人を守りたいと思ったのに
あの人を支えたいと思ったのに
どうしてこんな風になってしまうんだろう





言って欲しい言葉

言わなければいけない言葉





僕らは世界中の誰よりも近い位置にいるけれど

心は誰よりも遠く遠く離れているようだった 



 




Stand by U ~scene26~

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撮影場所になっているこの島は
観光地としても有名なとても美しい島だ


美しい風景と澄んだ空気は
毎日せわしなくピリピリしている僕の心を、優しく癒してくれる


あんな風にヒョンと別れ、動揺していないといえば嘘だけど
僕は気持ちを切り替え、演技に集中しようと努力していた


僕が今頑張らなきゃいけないことは目の前にあるこの仕事
誠実に、一生懸命、後悔しないよう、周りに迷惑をかけないように


ヒョンが・・・僕に教えてくれたことだ



短い時間での強行スケジュールではあったが、撮影はとても順調に進んでいた


そんなとき



思いもよらない来客が現れた

「あれ~?もしかしてユノヒョン?」

スタッフが何やらざわついていた







-びっくりした





よく撮影現場にきていたし
この島にも1度は行ってみたいといっていたけど






まさか本当にくるとは・・・・





いつもの通り、スタッフと和やかに話をしているヒョンを見て
僕は本当に呆れてしまって・・・もう笑うしかなかった


そんな僕に気がつき、ヒョンが手を挙げて寄ってくる




「来るなっていったのに・・・・」
「いったっけ?そんなこと」

わざとらしくとぼけるヒョンがちょっと憎たらしくもあり、・・・・うれしくもあり・・・

「どうやってきたの?」
「フェリーだよ」
「フェリー?車は?」
「乗せてきたよ、もちろん」


あきれた
心底あきれた

そこまでしてくるか?普通


こう、と決めたら直球勝負のヒョン
この人らしいといえばこの人らしいけど・・・




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撮影現場からすぐの場所に海があり
ヒョンがここに来たら絶対に行きたかったんだといっていたから
撮影の空き時間を見つけて僕ら2人は海へ行くことにした



海に着くと、ちょうど水平線の彼方にまんまるの夕日が見えた
撮影が忙しく、こんな綺麗な景色を堪能することもなかった




「すっげ~いいところだな・・」

「・・・うん・・・」


ヒョンと僕は砂浜まで歩き
どちらからともなく岩場に座った


しばらく2人で雑談をした後で・・
ヒョンが静かに話し始める



「チャンミナ・・・」

「・・・ん?」

「お前を・・・傷つけたとしたら・・・ゴメン」



さっきは何も言わなかったけど・・あの夜のやり取りをお互いずっと気にしていたのがわかる



僕とヒョンはお互い海をじっと見ていた



「俺さ・・・・・」

「・・・ん・・・」

「ずっと考えてたんだ・・」

「・・・・・」

「俺ら2人にとって、何が1番最善の道か、って」




少し間をおいてから・・
ヒョンが堰を切ったように話しだした




「俺は・・・もちろんステージに立ちたい

ステージで生きたいし、ステージで死にたい

こんな風になって・・もうずっと悩んで、考えて・・・最終的にやっぱりそこに行き着いた」


僕は小さく頷く


「俺がさ・・2人で出る舞台のこと、お前になかなか話せなかったのはさ・・・」



「・・・俺の夢に・・・俺の夢にお前を巻き込んじゃっていいのかなって・・・そう思ってたんだ」




-夕日が・・・ゆっくりと海へ沈んでいく




「お前はさ、才能あるよ、いろんな面で・・・賢いしさ。
ここ最近のお前を見ていて・・・・ダンスや歌の成長はもちろんだけど、演技の方だって楽しそうにやってる


・・・もしかしたらさ


お前はソロの方がうまくいくんじゃないかって

その方がお前の才能を十分発揮できるんじゃないかって

そう・・・思ってたんだ・・・」




知らなかった・・・
ヒョンがそんな風に僕を見てたなんて・・・





「でも・・・」


ヒョンが立ち上がって、大きく息を吸った


「よく聞けよ、これはあくまでも俺一人の気持ちだからな」


ヒョンは沈みゆく夕日を見ていた
僕からはヒョンの顔は見えなかったけど
その声から何か強いものを感じる



「俺は・・・グループを守りたい」



「ユノユンホ単独の仕事もして、それはそれですごく俺にとっては充実していたんだけど・・・俺はやっぱり東方神起っていうグループそのものが大事なんだ


俺のこれまでの人生のすべてをかけてきたし、ここからの人生すべてをかけたいと思ってる


ここまで愛されるグループになって、多分・・今も俺らを待って、愛していてくれる人たちもいるんじゃないかって思う


俺は・・今あらためてこの名が誇りだって自分の中で再確認したんだ」




ヒョンは・・・ここまでいうと・・言葉を止めた



「チャンミナ」

ヒョンが振り向いて僕の名を呼ぶ


「俺は、自分の夢のためにも、自分を待っていてくれる人たちのためにも、守りたいんだ、この名前を」


-お前と一緒に



ヒョンが僕の目をまっすぐ見て言った




「お前と2人で、守りたいんだ」




太陽が水平線の彼方へ沈んだ
水面には、わずかに残った光が、ゆらゆらと揺らめいていた









「なんで・・・それをそのまま僕に言ってくれなかったの?」

ヒョンは・・少しうつむく

「・・・俺の中で迷っているものを・・・お前にぶつけたところで混乱させるだけだと思ったから・・・」

-僕は

「僕は・・例え混乱したとしても・・言って欲しかった」

「・・・ん・・・・・」

「一緒に・・・ヒョンと一緒に迷いたいし、悩みたいし・・・」

不安や恐怖を共有したいし、一緒にそれを乗り越えていきたい

「メンバーって・・・・そうあるべきだろ?」

「・・・そうだな・・・悪かった・・・」




そこまで言うと・・僕らのあいだには沈黙が続き
波の音だけが絶えず聞こえる





「もう・・もどらなきゃ」


撮影がまだ残っていた
立ち上がって歩き出そうとする僕を、ヒョンが思いのほか大きな声ではっきりと呼ぶ


「チャンミナ」


まっすぐ、あの人らしいまっすぐな目で僕を見る



「ついてきて欲しい」


-まっすぐ 揺るぎなく



「それを言うために・・ここまで来たんだ」






僕は・・・何も言えずにいた


そこまでいろんなことを考えていてくれたヒョン

そんなことも知らず、バカみたいにイラついていた僕



僕は・・・やっぱり未熟だ






くやしいのか悲しいのか・・・
泣きたくなる気持ちを精一杯我慢して


ヒョンを残し、僕は現場へといそいだ










Stand by U ~scene27~

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その夜はスタッフ、共演者、そしてヒョンも一緒に
みんなで夕飯を囲んだ


ヒョンは相変わらずサービス精神旺盛で
しゃべるわ食べるわ笑うわで、一気に場が和み、盛り上がった


「・・・・・だよなあ。チャンミナ?」

「・・・えっ?・・あっ?えっと・・・なに?」

僕はぼーっとしていて、ヒョンの言葉を何も聞いていなかった

「この子、いつもこうなんですよ。俺の方が年上なのに全然俺の話を聞かない」


みんながそれに笑う
僕もちょっと照れながら笑う

時々みんなの会話に相槌をうちながらも・・・僕はさっきのヒョンとの会話をずっと頭の中で考えいた





「ユノさん・・・今日は泊まっていくでしょう?」
「えっああ・・まあ・・」
「部屋がさ・・小さなところなんで・・もういっぱいなんですよ」
「あっ・・別に俺はチャンミンの部屋に行くからいいですよ。同じ家に住んでんだから」
「そっか~そうですよね~」



そっか~そうですよね~




あっけないくらいに簡単に納得するスタッフたち
そりゃそうなんだけど・・・




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「ふう~くったくった」
部屋に着くなりベッドに大の字に寝っ転がるヒョン

「あんまりちらかすなよ」
僕は荷物の整理をしながら明日の準備をする

「わかってるって~」


絶対わかってない、この男は






なんだか不思議だった
一緒に住んでいるのに、環境が変わるだけでなぜかすごく新鮮だった



そういえば最近はひとりの仕事ばかりで、同じホテルに泊まるなんて久しぶりだもんな・・・



「ヒョンは、そっちのソファーで寝ろよ」
「え~っ?なんで?ジャンケンで決めようぜ~」
「なんでだよ!もともとここは僕の部屋なんだからな」
「お前、年上にベッドを譲らないのか!!」




そんなやりとりをしながら

ふっと、僕もヒョンも笑ってしまう



多分・・・・・同じことを考えている





「昔・・・・よくベッドの取り合いしたな・・・」
「・・・うん・・・・」
「あんなことでバカみたいに盛り上がって・・マジになって・・・」
「・・・・うん・・・」
「お前・・・本気でマネージャーに言いつけに行こうとした時、あったろ」
「ヒョンだって・・マジになって部屋でてったときあったじゃん」



お互いに言い合ってゲラゲラ笑う



こんな風に・・・あの頃を笑えるようになったんだ・・・・



今思うと・・・あの頃は、本当に修学旅行みたいだった
殺人的なスケジュールの中、僕らに残されたほんのわずかなプライベートな時間



つい・・・この間の話しだったように思えるし
もう何十年も前の話しだったようにも思える




あれから・・・・いろんなことが変わった・・




でも、僕とヒョンは
何も変わらず同じ場所にいる





久しぶりに僕とヒョンはいろいろな話をした
オフの旅行にきているかのようなテンションで、2人して大笑いしながら夜を過ごした




気づくと日付はとっくに変わり・・・・
でも不思議と全然眠くなくて・・


「明日も撮影だろ?早く寝たほうがよかったのにな・・」
「あ・・まあ僕の分は結構遅い時間からだから・・大丈夫だよ」
「でもちょっとは寝たほうがいいよな」


そういうとヒョンは約束通り?ソファーに横になって電気を消す


「おやすみ」

「ん・・・おやすみ・・・」






・・・とはいったものの・・・僕は全然眠れなかった




いろんなことを考えていた

いろんなことを思い出していた




昔のこと、今のこと、未来のこと


・・・夕方の・・ヒョンの話







「・・・ヒョン・・・」
「・・・ん?」
「起きてる?」
「・・・ん・・・」
「なんか・・・やっぱり眠れなくて・・・」
「実は・・・俺も・・・」



外はまだ真っ暗だったけど
もう夜明けは近かった





「チャンミナ、さっき行った海、もう一度見に行かない?」
「えっ?今から?」

ヒョンの唐突な誘いに面食らう


「うん、今から。まだ間にあうよな、日の出」


そりゃあ間に合うだろうけど・・


「太陽が昇る時の海、見たことあるか?」
「ないけど・・・」
「すっげ~感動するよ」
「ヒョン、見たことあるの?」
「あるよ・・何度も・・・」



いつ?って聞こうと思ったけど・・なんとなくその言葉を飲み込む



「よし!行こう!支度しろよ!」

いつもの通り、こう、と決めたら即行動のヒョン
全くこの人は・・・


でもなんだかんだいって・・・結局僕もその気になっていた








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夜明けの海はまだ薄暗くて肌寒くて
でも少しずつ明るくなっている遠くの空は、本当に美しかった



「今日も・・晴れるな」
「・・・うん・・」
「チャンミナ・・・寒くないか?」
「ん・・・厚着してきて正解」
「よかった。こんなとこで風邪ひかれたら、周りのスタッフに申し訳ないからな・・」



いつだって周囲を気にかけるヒョン
だから・・・人より余計に傷つくんだ




「俺さ・・・」

海を見ながら、ヒョンが話し始める

「迷って・・不安で・・・どうしようもなくなった時・・よくひとりで海にいったんだ

・・・太陽が昇るの見ながらさ

なんでこうなっちゃったんだ
どうして俺は何もできなかったんだって

そんなことばっかり考えてて・・・」



ヒョンが荒れていた時期・・・
そんな風にして・・・ひとりで過ごしていたんだ・・・




「でも・・ある時さ、”今大事なものを見失うな”って言われて・・・

気づいたんだよ

俺にとって1番大切なものがなんなのか・・」





その時

ひとすじの光が・・水面を反射する




「ほらほら!チャンミナ、見ろよ!すげ~だろ!綺麗だろ!」



ヒョンが興奮しながら水平線から少しずつ頭を出す太陽を指さす



キラキラと乱反射する光





本当だ・・・

言葉にできないくらい・・本当にきれいだ



僕は昇りゆく太陽に、畏敬の念すら抱いていた







「ヒョン・・・」

「ん?」


「・・・来てくれて・・・ありがと・・」


ヒョンが僕を見つめる



「うまく・・・言えないけどさ・・・・」



僕は恥ずかしくなって・・・うつむいてしまう



「僕は・・・・いつもヒョンたちのうしろで・・・できるだけうまく振舞おうってそればかり考えてた」


「・・・ん・・・」


「だから・・・無我夢中でここまでやってきて・・・その瞬間頑張るので精一杯で・・・」


「ん・・・」



「だから・・ヒョンみたく先のことがはっきり見えてなかったんだ」



「・・ん・・・」




-でも



「でも、僕は僕なりにこの仕事に楽しみを見い出してるし・・・・ヒョンを見ていて・・・僕ももっと頑張りたいって・・・心から思えるようになったんだ」




ヒョンが・・・本当に優しい目で・・僕を見つめる






-僕は



「僕も・・・どこまで行けるか・・・やってみたい」



顔を上げ、ヒョンの目をまっすぐ見て、はっきりと言った



「ヒョンと一緒に・・・僕が・・僕たち2人がどこまで行けるか」






-これが、ヒョンの思いに対する僕なりの答えだった







明るく輝く海と空を背に

ヒョンは少し笑って・・僕に軽く片手をあげる

僕も、ヒョンのその手に自分の手を合わす


お互いしっかり握って

肩と肩をぶつけて


ヒョンが僕を引き寄せ、抱きしめた



-背中を・・トントン




「ありがとう、チャンミナ・・・」







その時


初めて心に引っかかっていたものが、すべて取り除かれた気がした


頑なだった僕の心が


ゆっくりと、とかされていくような気がした








「太陽はさ・・・誰にでも平等に新しい1日を与えてくれるんだって」

「へえ・・・それ聖書にでも書いてあんの?」

「ちがうよ。ユノ語録」

「なんだそれ」



お互いふっと笑い合う





でも、本当にその通りだと思う


僕らの未来には、なんの確証もないけど



それでも与えられたこの新しい1日を


ヒョンと2人で歩きだそうと思うんだ




僕らの道を


信じて歩こうと思うんだ






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Author:haruno
2011年のレコード大賞「why?(Keep Your Head Down)」で伝説の”秒殺トン堕ち”したharunoのブログです。「BL」や「腐」という言葉の意味すら知らなかった私が、もはや脳の9割近くが腐っています(笑)。ユノとチャンミンの「萌え日記」と「妄想小説」をマイペースに書いています。

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