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from to the future5 to 7




Stand by U ~to the future5~

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2人でスタートしてから
それこそ無我夢中で突っ走ってきた僕らにとって
今、ひとつの分岐点を迎えたのかもしれない




少しだけ

ほんの少しだけ

心にできた余裕




現在の自分たちじゃなくて、未来の自分達を考えることのできる時間




でもそれは
訪れるべくして僕たちに訪れた時間だった





2人が認識されつつある今
次に僕らに求められるもの




「ふたり」の魅力ではなく

「ひとり」の存在感






少しずつ増えてきた個人の仕事にも、それは如実に現れていた


それをヒョンはわかっている




僕が理解しているよりも、もっと、ずっと

僕が感じているよりも、もっと、ずっと




個が求められれば求められるほど
僕たちは「個」を失っていくような錯覚に陥った



僕たちはこれまで、どれだけお互いを頼り、必要としていたんだろう。
ひとりの仕事をやってみて、僕はどれだけヒョンに頼っていたかを実感する。
どれだけヒョンがとなりにいてくれたことで、安心して「自分」でいられたんだろう





2人でずっと一緒にいること

1人でそれを守らなきゃいけない運命





そのジレンマに、僕はずっと悩まされていた





ヒョン・・・


また一緒に乗り越えようよ


ひとりで突っ走るなよ



僕を・・・おいていくなよ










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ヒョンに貸した帽子が見当たらなかった
僕たちはお互いのものをよく貸し借りしている


あれ・・・気に入ってたのに・・・


本当は足を踏み入れたくないんだけど、どうしても今日はあの帽子が欲しくて、ヒョンは仕事で遅くなるといっていたから、勝手にヒョンの部屋を捜索する。





相変わらずだな・・・・

こんなんだから僕の部屋でばかりで過ごすのか
まあ・・忙しいのもわかるけど・・・・

目につく片方だけの靴下やら洗濯物やらゴミを片っ端から片付ける





いや・・僕の目的は掃除じゃない。




改めてヒョンの部屋を探す中で・・・・・ふと目についた紙の束。





1番上には

「頼まれていたものです。気になる物件があったら早めに教えて下さい」

の付箋。








「ヤメロ」




警告音が頭の中に一瞬響いたけど、僕はもう止まらない
おそるおそる・・・その紙の束を手にとってみる






部屋の見取り図?

物件情報?

頼まれていたもの?

気になる物件・・・?






急に・・・いろんなことが現実味を帯びてくる




料理を作るヒョンの姿
洗濯をするヒョンの姿
「一人暮らししたい?」というヒョンの言葉

僕を・・・・褒めちぎるインタビューでの発言






いろんなことがフラッシュバックみたいにおそってきて

僕は激しく混乱していた








突然携帯が鳴った

僕は心臓が飛び出すかと思うくらいびっくりした


実家の母からだった

『うん・・週末は帰れるよ。大丈夫だよ・・・最近は余裕もあるし・・・。うん・・・え?・・ヒョン?」






-なんてタイミングなんだろうな・・・・






ヒョンが・・僕の知らない間に・・実家に電話をかけている。
母からの話で・・・・それがわかった。



僕は知らない。
僕の母と話したことを、僕に内緒にする必要なんて全くない。




また・・・・ヒョンはひとりで何かを抱えようとしている




僕の中にまた、何とも言えない感情が押し寄せてくる





僕は・・どうしたいのか


どうして欲しいのか








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「ただいま・・・」



しんどそうにヒョンがリビングのドアを開けて入ってきた。

疲れてるんだろうな
そんなの、足取りでわかる。



「まだ・・起きてたのか・・・」

「起きてちゃ悪いかよ」

・・・僕は・・刺のある言い方になる

「・・・・・・何か・・あったか?」


いつものヒョンのセリフが・・・今日はいやに耳につく


「どうでもいいだろ、僕になんかあったって」

「・・・・どーでも・・・よかないだろ」

ふっと鼻で笑ってそう答えるヒョン。




その一瞬、僕の中で・・何かがはじけた




「人このこと言う前に、自分はどーなんだよ!」

「?」

「影でこそこそ・・人の知らないとこで動きやがって!」

「・・何が?」

「知らないとでも思ってんのかよ!!」




僕はヒョンの足元に、さっき部屋で見つけた物件の束を投げつける





ヒョンは・・・一瞬驚いたけど

でも・・・静かにしゃがんでそれを拾いあげる



寂しげな・・苦しげな表情で・・でも・・・優しく僕に言う



「別に隠していたわけじゃないよ・・」

「じゃあなんなんだよ!」

「まあ・・でも・・悪かったよ・・・」

「・・・・・・・」

「ずっと言おうと思ってたんだけど・・お互い忙しかったからな・・・」




ヒョンの冷静ないい方が・・・どんどん僕の気持ちを逆なでしていく




「ひとりで住むなら住むって・・そうはっきりいえばいいだろ!」

「ちがうよ・・・」

「何がちがうんだよ・・実家にまで電話して!」

「ちょっと・・まてよ」



僕は・・今までの不安や迷いをヒョンにぶつけるように、もう止めることはできなかった。



「僕がかわいそうって思われたり同情されんのが1番大ッ嫌いなのはヒョンが1番よく知っんだろ!」

「・・・・・・」

「言いたいことがあるならはっきり言えよ!」





怒鳴りつけた一方で・・・・




言いたいことがはっきり言えないのは僕

聞きたいことがはっきり聞けないのは僕



答えを・・・先延ばしにしているのは・・・僕




頭の片隅では・・・それがわかっている




ダメだ・・・このままじゃ収拾不可能だ






「ヒョン、しばらく僕はここを出る」

「ちょっ・・待てよ!!聞けって!!」

久しぶりにヒョンの大きな怒鳴り声を聞く。







ああ・・なんでこうなるんだろう。

僕たちはただただお互いを求めているだけなのに。







ヒョンの顔も見ずに、黙って部屋に入る




頭を冷やそう。
行き先はいくらでもある。





一人で・・・ちゃんと現実と向き合おう。

その時間が・・・僕には必要なんだ・・・





幸い、お互い別々の仕事が入っていて、何日間かは顔を合わせずに済む
僕はざっと大まかに荷物をまとめてとりあえず実家に帰ることにする







僕が荷物を持って玄関へと行くと、ヒョンがリビングから走ってきた




「チャンミナ・・・」

「大丈夫だよ・・・・仕事に穴を開けることは死んでもないから」


ヒョンの顔も見ずに、靴を履きながら極力感情を抑えて冷静に言う





ヒョンは・・・
もう止めることはなかった





僕は黙って玄関を出る










車に乗った瞬間

抑えていたものが急に溢れ出してきた





この感情はなんなんだろう





僕はどうしたいんだろう


僕たちはどうしたいんだろう








僕たちは

どこへ向かおうとしているんだろう・・・













Stand by U ~to the future6~

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あれから


僕は実家に泊まったり仲間の家に行ったりしながら、ヒョンのいる宿舎に帰ることはなかった

時々荷物を取りに行ったりはしたけど、ヒョンと僕とは別々の仕事が入っていたり、お互いのプライベートな時間ももちろんあったりで、宿舎で鉢合わせになることはなかった




仕事には普通に来る僕を見て
ヒョンは安心したのか何もいってこない


スタッフには「実家に呼び出されたので」なんて冗談を交えて言いながら話をし、傍から見れば僕たち2人は特に変わったことは何もなかっただろう





もちろんヒョンと僕は仕事場では至って普通に接した





けんか・・・ともちがう





顔を合わせればほっとするし、仕事上必要な会話は普通にするし
お互いに調子が悪そうな時は自然にフォローし合っていたし
周りから見ればなんてことないいつもの僕たちだっただろう


どんなに離れていたって
会った瞬間から息を合わすなんて
僕たちに2人にとっては呼吸をするくらい自然なことなのだから








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仕事が終わり、僕はスタッフに挨拶をしてスタジオを出ようとした
今日は実家に帰るつもりだった




「チャンミナ」




不意にユノヒョンに呼び止められた







それはあらかじめわかっていたかのような


お互い台本を通りの演技をしているかのような


ずっと待っていたかのような


僕にとってはそんなシュチュエーションだった






「・・・何?」

「・・・・ん・・」





ちょっとヒョンが話しづらそうにしているから、僕はなんとなく周りから人がいなくなるのを待つ




「コーヒーでも・・・飲まない?」


「・・・別に・・・いいけど・・・」





僕らはスタジオ内にあるちょっとした休憩所に立ち寄る







そういえば・・・

よくヒョンが「ちょっと出てこいよ」なんて言って、近所のカフェから僕を呼び出してたな・・。
出不精の僕は結局いつも最後は断っちゃうんだけど・・・。



そんな時間も、今となってはなつかしく貴重に思えてくる。


ヒョンは、つい自分の世界に引き籠ってしまって、人間関係にしたって自分の落ち着ける狭い世界の中だけで満足してしまう僕を、いつも外の世界に連れ出そうとしていた。





それはヒョンなりの優しさ。

そしてヒョンなりの厳しさ。





そのままの僕を受け入れてくれる反面
そのままじゃいけないところはちゃんと伝えてくれる










「ちゃんと・・・飯・・食ってるか?」


「・・・ん」



お互い顔も見合わせないまま、コーヒーから漂う湯気をなんともなしに見つめている




第一声が・・・・それかよ





「ビールばっか飲んでないで、他のもんもちゃんと食えよ」


「・・・ヒョンだって・・外食ばっかりは・・よくないよ」


「俺は大丈夫だよ」





そういって、ふっと笑うヒョン。


一瞬の、その寂しげな笑いが・・・なんとなく僕の後ろ髪をひく









ダメだ

これ以上話すと・・僕はまた言いたくもないことを言ってしまいそうだ







「・・・じゃ・・・」

そういって立ち去ろうとする僕に、ヒョンが後ろからまた呼び止める




「チャンミナ」




僕は振り向かずに立ち止まる





「ちゃんと・・眠れてるか?」








・・・・・なんなんだよ


急にそんなこと・・・・聞くなよ








「この肌ツヤみろよ。若さには勝てないだろ?」



精一杯の強がりを言う僕に、ヒョンが伏し目がちに笑う




「そっか・・よかった・・・」




そんなヒョンをあとに、僕は車へと急ぎ足で歩く









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ヒョンが心配することは
いつだって僕のことだ


そっちこそどうなんだよ




最近顔がむくんでないか

その服、2日前と一緒じゃないか

僕がいないと洗濯もまわさないんだろ

シーツだって1ヶ月そのままなんじゃないか

台所は皿の山か

冷蔵庫の中の賞味期限はちゃんとみてるのか






一気にいろんなことが頭をかけめぐる






ヒョン・・・・


ちゃんと・・・眠れてる?





一人になるといろんなとこに電話かけまくって、通話中のまま寝ちゃうヒョン

いつも人の部屋に来て、徹夜でゲームをするヒョン

いつも僕の帰りをひとりでリビングで待つヒョン

僕が眠るまで、ずっとそばにいてくれるヒョン

時々僕が寝ているか、しばらくじっと確認して

それから安心したように眠るヒョン






そんなことを考え始めたら
僕はもうどうしていいかわからなくなる





どうしてこんなにも気になるんだろう





自分のことよりも気にかかる存在ができるなんて

自分のことで精一杯だったあの頃には、考えもしないことだった









こんなにヒョンと離れたのは・・・10年間の中で初めてだった



どこにいても、何をしていても

体の半分を・・・置いてきてしまったかのような喪失感




僕の感じるこの喪失感は

正常なのか
異常なのか






今さらだけど
ステージに立つ時にいつもとなりにいること
仕事が終わればいつも同じ車に乗ること
同じ家に帰ること


これは・・・当たり前のことではないんだってことに気付く
当たり前になっちゃってたけど、決して当たり前のことではないんだ





そして


「いつまでも僕らが2人で一緒にステージに立ち続けること」




当然・・・当たり前のことではないんだ




もちろん、楽しいことも幸せなこともたくさんあると思うけど

それと匹敵するくらいのたくさんの痛みと引換えにしなきゃ



僕らはそれを手に入れることができないだろう








ヒョン ・・・


ヒョンと離れてみて

悲しいけど

僕にはそれが少しずつ見えてきたんだ








僕の感じる喪失感

僕はそれを乗り越えなくちゃいけない



ヒョンとの時間を永遠に続けるために引換えとなる痛み

僕はそれを受け入れなくちゃいけない








そうして僕は・・・


一人の足で


ちゃんと立たなきゃいけないんだ








・・・・そうだろ?














Stand by U ~to the future7~

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そうやって何日か過ぎる中で
もちろん1人の仕事も2人の仕事も一所懸命こなしていく中で
僕は少しずつ、落ち着きを取り戻していた



家でも仕事でも、ヒョンがいない寂しさにも慣れてきた
冷静になって、いろいろなことを考えられるようになっていた




僕と離れようとしたヒョンの選択




ヒョンは・・・多分正しい




ずっとわかっていたことなのに
僕は気づかないふりをして目を背けていたんだ

冷静になるために一時的に家を出た僕だけど
なんとなく2人でちゃんと話せないまま、うやむやにここまで来てしまった

普通に仕事をこなしていても、あえてその話題を話さないことで、お互いずっと気にしていることがわかる

言葉なんかなくてもわかりあえる僕たちだからこそ
余計にそれが重く、つらく、のしかかる











撮影が順調だったおかげで予定より早く終わり、久しぶりに2人一緒のオフの時間ができた

だいたいこういう時は正反対の行動をとる僕たち


こんな時こそ家でゆっくり過ごす僕と
こんな時こそ誰彼構わず声をかけ、食事やら遊びやらに行くヒョン





でも、今日は違った





2人同時に時間ができたのは

きっと「偶然」という名の「必然」






「チャンミナ」


「・・・ん?」






もう・・ヒョンに名前を呼ばれた瞬間から、僕はわかっていた


次に来るセリフがなんなのか
僕にはわかっていたんだ








「・・・海・・・・行こうか?」




「・・ん」











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ハンドルを握るヒョンの横で、僕は流れる景色を頬杖をつきながら眺めていた



「これ、何の曲?」

「ああ・・・最近・・ちょっと昔の曲、聞いてんだよ」

「へえ~」



ヒョンが曲に合わせて歌いだす

そういえばどこか昔に聞いたことがあるような曲だ
でも僕の中ではもう完璧にヒョンの歌声でインプットされてしまった

よくもまあ・・・恥ずかしげもなくこんな大声で歌うよな・・・
となりが彼女だったら・・・


ひくぞ・・・・


まじで ・・・・






特に会話もはずまない僕たちのドライブ
時々鼻歌を歌ったり、ユノヒョンのマジ歌や下手くそな口笛を助手席で聴いたりしながら
でも多分、僕は世界中で1番満ち足りた時間を過ごしていたはずだ





今日はなんだか

ヒョンをとても近くに感じる










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1時間くらいのドライブの末、着いたところは僕の行ったことのない海岸だった
陽は沈みかけ、夜がもうすぐやって来ようとしていた

街灯も何もない海岸が、沈む夕陽に照らし出されている
車から降りて、僕とヒョンはゆっくり海岸に向かって歩いていく





「前の約束からさ・・」

「えっ?」

「随分・・・時間、経っちゃったな」




ヒョンがちょっと笑いながらつぶやく

随分って・・・
あれから何年経ってると思ってるんだよ



でもヒョンは・・・ ずっと気にかけていてくれたのかな

一緒に海に行こうっていう約束を






海風はとても強く、僕は少し肌寒くなって着ているジャケットの襟をたてる
ヒョンは・・・じっと・・まっすぐ海を見つめている

もちろんこんな時間に海辺を歩く人は誰もいなくて
僕たちは久しぶりに周囲を気にせず、リラックスした気分になっていた



しばらく2人で黙って海を眺めていて、ヒョンが静かに話し始める






「ここさ」

「・・ん・・」

「絶対お前を連れて来たかったんだよ」

「・・・なんで?」

「俺が・・・・決意をした場所だから」

「・・・・・・・」


「大切なものを守るって、決意した場所だから」






ヒョンは、それがいつのことかは言わなかったけど
僕はなんとなくそれがわかる気がした





「・・・あの時もさ・・・」

「え?」


今度は僕が切り出す


「ヒョンが・・・僕の撮影場所まで来てくれた時も・・・海だったね」

「ああ・・・・ふふ・・そうだな・・・」

「僕が決意をした場所は・・・・あの海だな」

「・・・ん・・」








そして僕たちは


きっとまた・・・新たな決意をするのだろう









「2人で活動始めた日さ・・永遠をさ・・信じるか?っていったろ?」

「ん・・・・」

「俺は・・今でも信じてんだよ。バカみたいに」




そういってふっと笑うユノヒョン




「・・・・・何を?」


ずっと静かにヒョンの言葉を聞いていた僕が、口を挟む


「ヒョンは・・・何を永遠に残したいの?」



ヒョンはじっと見ていた海から横にいる僕に顔を向け
そして僕を覗き込むようにして答えた






「お前と一緒に創ってきたすべて」






何の迷いも躊躇もなく、ヒョンはさらりと答えた



「俺らの全て。俺らのつくってきた歌、ステージ、グループ・・・俺らが死んでも、ず~っとず~っと残したい。みんなの記憶に残したいし、目に見える、手に取れる形でも永遠に残したい」


「・・なんで・・・?」


「俺らがこの世に生きてきた証だから」


「・・・・」


「俺とお前が・・・一緒に生きた証だから。俺らが人生すべてをかけて走ってきた証だから」


「・・・・」




「それが・・俺とお前の永遠だ」






そこまでいうと・・ヒョンはまた海をじっと見た



「だから・・・俺は・・・そんくらいのものをこれからも創り続けたいんだよ。ずっと何十年先もずっと」


「・・・・」


「今だけとか、あと何年か先までとかじゃなくて・・・ずっとずっと何十年何百年先まで残るものを・・・・」





大げさかな?って言われて

・・・・・僕は・・・小さく首を振る





「だから・・俺らは今さ・・・1人でも守れる力をつけなくちゃいけないと思うんだ」


「・・・・・」


「2人でやっと完成するんじゃなくて・・・なんていうかな・・・1人でも2人の場所を守れる力をつけるべきだと思うんだ」








「僕とヒョンの永遠ために?」



「俺とお前の永遠のために」









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ヒョンには未来が見えている

「ついてきてほしい」といったあの日から、ヒョンは1度もぶれずにまっすぐ未来を見つめている




そんなヒョンを・・・やっぱり僕はすごいと思う





僕にできることはなんだろう

僕はこれ以上あなたの負担になりたくない
僕だって・・・あなたとの永遠を信じたいんだ






だから・・・僕から言おう

僕から言うことが・・・きっとヒョンを少しでも楽にさせてあげられる
いつだって僕を守ってくれた、あなたからの巣立ちも込めて
これからは、1人でも2人の場所を守るための決意として

僕から・・・言うんだ






「ヒョン・・・」


「・・・ん・・」


「僕は・・・家を出る」







言ったあと、僕は泣くかなって思った



でも、涙はでなかった

ふんぎりがついたような

楽になったような

でもやっぱり何かを失ったような

不思議な感覚だった




ヒョンは一瞬びっくりしたような顔をしてたけど
すぐに ・・申し訳ないような、悲しいような

でも

全てを納得したような
そんな顔をしていた



しばらく無言で海を眺めたあと、ヒョンが静かにつぶやいた



「お前の部屋・・そのままにしておくから」





僕はその言葉には答えなかった


答えられなかった





どこかでまだ、僕は期待していたんだ

「何言ってんだよ」って髪をくしゃくしゃってしてくれるヒョンを
「そういうことじゃねーよ」って笑って否定してくれるヒョンを





でも・・・ヒョンは受け入れた

僕の・・僕たちの新たな決意を
ヒョンは受け入れたんだ








ただずっと一緒にいたかった

好きならば、大事ならば、ずっと一緒にいられると思っていた

ずっと一緒にいるべきだと思っていた





でも

好きだからこそ、大事だからこそ、離れなきゃいけないこともあるんだ

そういう愛もあるんだ





僕たちはあまりに多くのものを手に入れて
あまりに多くのものを失った


そしてこれからも僕たちが手に入れ続ける限り
痛みとともに、その代償を払い続けていかなければならない







こんなに

こんなに強くお互いを求めあっているのに






それでも僕らは



離れるべきなんだ・・・・・・




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from to the future1 to 4

Stand by U ~to the future1~

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まだ夜明け前の薄暗い部屋で
僕は幸せな夢の世界から現実にかえってくる




もう・・・朝だ




長年の習慣で体が慣れてしまったせいか、仕事が入っている日は目覚ましがなくても自然と目が覚める



今日は朝早くから撮影が入っていた



早く起きなきゃと思いつつ、昨晩の疲れからか僕の体は重くだるく
もう少だけしベッドに体を横たえていたい衝動にかられ、躊躇する



寝返りを打つと

まだどっぷりと深い眠りに浸かっているであろうあなたがいる




長い睫毛
すっと伸びた鼻筋
目の下の傷
顔の小ささに似合わないたくましい体



そのたくましい二の腕に、さっきまでしっかりと抱きしめられていたのかと思うと
今さらながら少し恥ずかしくなる








こういう関係になってから、もうどれくらい経つんだろう



こういう関係が・・・いつまで続くんだろう








そんなことを考え始めると、僕は不安な気持ちを抑えられなくなるから
今は目の前にいるあなたとの幸せな時間だけを考えようと思い直す



それでも不安の波はすぐ襲ってくる


でも・・・しょうがないんだ


僕が自分で選んだ道なのだから








コーヒーを入れようと、上半身を起こしてベッドに座る


「・・・・・何時?・・・・」


不意に
あなたが目をつぶったままかすかにつぶやく



「起きてたの?・・・・4時・・・かな」

「・・・・今日・・・何時から?・・・・」

「・・・5時半に・・・迎えにくるはず・・・」

「・・・・そっか・・・・」





コーヒーをいれようと思ってたけど、あなたが起きたかと思うと、ここから離れることが嫌になる




「・・・ん・・・どう・・・した?」



あなたの匂いを感じたくて、僕は寝ているあなたの首筋にそっと顔をうずめる




ダメだ


こうなると・・・・もうここから動けなくなる


「別に・・・・・」


「・・・なんだよ・・・」



今まで寝ぼけていたあなたが、急に半身を起こして僕を見下ろすカタチになる




「・・・お前・・・朝から・・・その気にさせてんの・・・」


「・・・その気に・・・なってんの?」





その言葉を合図に、あなたはそのたくましい腕で僕を強く抱きしめる



深く深くキスをして


瞬く間に僕は服を脱がされ、あなたは急いで自分のTシャツを剥ぎ取る





あらわになるあたなの体に、僕は恥ずかしくなって思わず目を背ける

そんな僕を見透かして

あなたは口の端を少し上げながら意地悪く笑う





そんな風にして僕らはまた

堕ちていく











陽の光が、かすかにカーテンから差し込む


「・・・・待って・・・ダメだよ・・・時間・・・・」

「・・・大丈夫だよ・・・」

「・・もう・・・電話来るって・・・」

「・・・・あと・・・もう少しだから・・・・」

「・・・・何言ってんだよ・・・」

「うそうそ・・・でも・・ゴメン・・・マジで・・・あと少し・・・」







あなたの体温を感じながら、頭の片隅では冷静に今日のスケジュールを確認する


でも・・大部分は・・・

あたなのことで・・・いっぱいなんだ










「早く!!早く!!何やってんだよ!!遅刻する!!」


僕は玄関でイライラしながらあなたを急かす


「ちょっと待ってよ・・あれ?携帯は?」
「さっき机の上で充電してだたろ!!」
「あっそっか・・・。あれ?俺のiPad・・・」
「僕が持ってるよ!!」
「なんだよ!先に言えよ!!」
「いいからもたもたすんなよ!!」
「うるさいなあ・・ガミガミと・・・さっきはあんなにかわいかったのに・・・」
「うるさい!!だから時間がないっていったんだよ」
「何だよ、お前だってその気になって・・」
「何か言ったか!!」
「・・・・・・」



急いでマネージャーの車に向かう僕に、あなたが後ろから耳元でささやく



「お前・・・歩き方、変だよ」



僕の腰をポンポンと叩いて、にやりと意地悪く笑う
僕は無言であなたを睨みつけて、赤くなった顔をすぐ背ける




ったく・・誰のせいだと思ってんだよ



今日の撮影・・大丈夫かな・・・












繰り返されるこんな日常

余裕なんて全然なかったけど

今振り返ると、なんて大切な日々だったんだろう




あの頃の僕たちは

それでも2人で歩むこんな日常が幸せでしょうがなかったんだ







ねえヒョン・・・

僕は本当に幸せだったんだ







ゆっくりと忍び寄る影に気づかず

いや・・・・

気づかないふりをして




決して光の当たることのないこの愛を

大事に大事に育てていたんだ











Stand by U ~to the future2~

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2人になってからの僕らは
少しずつ少しずつ、でも着実に
何かが変わっていった



それまで、ヒョンにとって僕はただの弟だったし
僕にとってヒョンは、尊敬するリーダーであり、ただの兄貴だった。



でも、あの壮絶な月日を共に過ごし、共に乗り越え
2人だけの数え切れないステージをこなしていく中で
僕とヒョンとの関係は、明らかに以前のものとは違うものになっていった




目立たないように
いつもヒョンたちの後ろに隠れるようにしていた僕は
ヒョンと2人になったことで、そんなふうな振る舞いは半ば強制的にできなくなった



環境がそうさせたのももちろんある



でも、ヒョンが・・・
僕を引き上げてくれたからだ



ヒョンが何よりグループのことを考え、仲間を立てようとするのは前からだったけど
とにかくヒョンは僕をことごとく前面に押し出そうとした


TVや雑誌のインタビューでも、ヒョンは僕のことばかり話す。
時には照れくさくて恥ずかしくて「やめてくれよ」って思うけど
ヒョンの僕に対する思いに決して嘘はなく
心から僕を思い、僕を評価してくれているのは痛いほどわかる



だから、僕は照れながらも
それはそれとして素直に受け入れたいと思う。


そしてヒョンの僕に対する言葉に恥じないよう、もっともっと成長していきたいと思う。



反対に、僕はといえば
言葉が足りない上に素直じゃないから
ヒョンのことを公の場であまり話をすることができなくて
ついつい憎まれ口をたたいたり
ちょっとからかうようなことを言ってしまったり

言ってしまったあとで激しく後悔することも多い




自分のことですら正確に話すことができないのに
その上、自分にとって大事な人のことを語ろうとするなんて
僕にとっては至難の業だ




通り一遍なことであれば、いくらだって言える
でも僕は活字に載って残るものには責任を持ちたいから、そんなことはしたくない。

真剣に語ろうとすれば語ろうとするほど
伝えようとすればするほど、
なんだか全然見当違いなことを言ってしまって
自分の中の真実から、どんどん遠ざかっていくような気がしてしまう



だから僕はヒョンのことをあまり多くは語らない



でもいいんだ



ヒョンはわかってくれている

2人にしかわからない絆が、僕らには存在するんだ







僕とヒョンの関係は、単なる仲間を超えている


当たり前だけど、男女の仲のようなそれとも違う


兄弟とも違う


家族・・・・とも違う



それはもう、言葉に表すには限界があるんだ




ヒョンは僕の人生の一部であり、僕はヒョンの人生の一部であり

ヒョンは僕の体の一部であり、僕はヒョンの体の一部であり




同じ苦しみ、同じ悲しみ、同じ痛みを分かち合って
同じ喜び、同じ楽しさ、同じ感動を共にして


一緒に過ごしてきた時間が僕らをお互いの一部としてきたんだ





きっかけはなんだったのか

いつだったのか

今となってはもう思い出せないけど


でもそんなことはどうだっていいんだ





僕はヒョンを必要としているし
ヒョンも僕を必要としている




それだけでいいじゃないか



そう、思っていた







朝おきたらとなりにあなたがいて
夜中に悪い夢を見て突然目が覚めても、となりにあなたのぬくもりがあって




それだけでいいじゃないか


そんな時間が永遠に続けばいい



そんなことを夢見ていた






-でも




そんな夢はいつまでも続くはずはなく



どんな幸せな物語にも、必ず終わりはくる

最後は王子様と幸せに暮らすお姫様にも、必ず終わりはくるんだ




それは突然に思えて

でも確実に

じわじわと影を潜めながら、僕たちに近づいているんだ





それに気づかずに


いや


気づかないふりをして



僕たちはまた、幸せな日常の世界へもどっていく





本当は



もうとうの昔に



気づいていたはずなのに














Stand by U ~to the future3~

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1度大きな結果を出してしまうと
その喜びに浸かる間もなく、次のより大きな結果を出すための戦いがはじまる



それが、僕らの生きている世界だ



それでも僕は前に向かっていける
共に戦うあなたがいてくれるから







ヒョンがステージで初めて泣いたあの日


ヒョンの声がうわずって
僕ははじめ信じられなくて
ヒョンをじっと見つめていた



一生懸命泣くのを我慢して、それでも流れてくる涙を見たとき
僕はとまどいより・・・・うれしさがこみ上げていた



僕はすごくうれしかったんだ



絶対泣かないと決めたヒョン
泣くことを忘れてしまったんじゃないかと心配したくらい


でも2人になって
僕はヒョンの今までの重責を少しでも軽くしてあげたくて
少しでもヒョンにもっと気楽にステージを楽しんでもらいたくて




そしてもう二度と・・・


二度とヒョンが自分が愛されているかを心配しなくてもいいように





僕は万全のフォローをしてあげたいと思っていた


ヒョンがヒョンのままで安心してステージに立てること
それをサポートできるのは世界中で僕しかいない






だから

ヒョンがステージの上で泣いたとき
正直僕も泣きそうだったけど
僕は強くあろうと思った



ヒョンが弱ってる時は僕が強気に
ヒョンが調子が悪い時には僕がテンションを上げて
ヒョンが泣いた時には僕は笑って



そうやって僕らはお互いを補いながら
ずっと2人でやっていくんだ




そう・・・・思っていた







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「ヒョン・・・僕もう寝るよ・・・」

「あー・・・ん・・・先に寝てていいよ」

「・・・・・・おやすみ・・・・・」





最近ヒョンはよく夜遅くまで起きている


TVやPCを見ている時もあるし
なんと・・・漫画ではなく本を読んでいることもある
まあ・・いいことだけど
なんとなく・・・・さびしいのも事実だ・・・






相変わらずスタジオレッスンやステージでは厳しい人だけど
でも以前と違って僕にとやかくいうことはまずない。


「お前自身が1番よくわかってるだろう」


といわんばかりに、僕に向かって細かい指示を出すことは滅多になくなった



それはありがたくもあり

でも寂しくもあり



ヒョンに迷惑をかけたくないし、脚も引っ張りたくないから
一人前として認めてもらえるのは嬉しいんだけど


でも、だからといってヒョンが後ろについていてくれないと
僕はまだまだ自分に自信が持てなくて


僕とヒョンは対等な関係のようでありながらも
僕はやはり親鳥から巣立つことのできない雛鳥のようで
無意識のうちにあなたの愛に守られながら、僕は僕のままでいられたんだ






「ちょっと・・今日、出るね」

ヒョンが僕の部屋のドアを開けて声をかける


「僕もでかけるから・・・帰りは遅くなると思う」

「おう、わかった。気をつけろよ」






何を・・・だよ。

そっちこそ気をつけてくれよ。
スクープ狙いの記者はわんさかいるし、大抵狙われるのは逃げも隠れもしない、ある意味天然のあなたなんだ。





僕とヒョンはよっぽどのことがない限り、いちいち誰と何処へ行くということを言い合わない。
お互いのプライベートに関しては、昔から口を出さないのが暗黙の了解だ。




だって、最後には同じ家に帰るのだから・・。

ここが僕らの帰る場所なのだから・・。







そんな日常の中で、少しずつ動き出す。

僕らが目をつぶっていた、物語のその先が・・・・






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「チャンミナ」

「ん~」


いつもの風呂上がりの日常。
僕はソファーでビールを飲み、ヒョンはその隣でゲームやPCをいじる。
何かを2人で話すときは、大抵この時間になる。



「お前さあ~」

「ん~」

僕は手に入れたばかりの新しいソフトに夢中で、話半分に相槌をうちながら聞いていた


「前にさ・・・まあ・・・すごく前だけど・・」

「ん~」

「一人暮らし・・してみたいって・・・・いってたじゃん・・」

「ん~」

「聞いてんの?」

「ん~」


気のない返事の裏側で・・・少しざわつく僕の心


「それが何?」

「あ・・・まあ・・別に・・今でも思ってんのかなって・・ちょっと思ってさ」

「・・なんだよ・・いきなり・・・」

「・・・別に・・・あ~・・・そうだよな・・・。なんでもないよ。うそうそ。なんでもない。忘れて」



そういって笑うヒョン

・・・・そんなこと言われて・・・「はいそうですか」って言えるかよ・・・




「・・・・ヒョンは・・・どうなの・・・?」

「・・ん?」

「さっきの・・話・・・」

「ん?」

「一人暮らしって・・・話・・・」

「ああ・・・・ん~・・どうかな・・・」

「なんだよ、それ。人に話ふっておいて」

「まあ・・そうだよな。う~ん・・そっか・・・どうかな」



ヒョンは言いづらそうに・・・視線をはずして考え事をしているようなフリをしている。

ヒョンは言いにくいことがあるときには・・必ず視線をそらすんだ。




「僕は・・・まあ、自分の部屋もあるし、やりたいようにやってるし・・・今だって一人暮らしに近いっちゃあ近いけどね」

しょうがないから口火をきってやる



「・・・ストレスはなくなったの?」

ヒョンが意地悪っぽく口の端を上げて笑いながら言う

「・・・原因が何を言うか」

僕は大げさにため息をつきながら言い返す。



「いや・・・気をつけてはるんだぜ、いろいろ。これでも・・・」

ヒョンがちょっとバツ悪そうに言う



いつもならここから僕の本領発揮で
この頃気になっているヒョンのだらしない所にいろいろ文句をいいたいところんなんだけど


なんか・・・今日はいつもの雰囲気にはなれなくて
僕はヒョンと話していてもなんだか落ち着かなくて
早々にこの話題を切り上げたくなる




「で、この話のオチは何?」

「ん・・・別に・・・ないよ」


笑いながらそういうと、また何事もなかったかのようにPCをいじり始めるヒョン。






よくある、いつもの風景。

よくある、僕とヒョンの日常。



またお互いのぬくもりを感じながら夜を超え
そしてお互いの息づかいを感じる朝を迎える



でも、僕の中には
確実に小さな影を落としていた。





確実に
何かが動き始めている



それはヒョンだけじゃなく
僕だけじゃなく



僕たち2人にしかわからない


2人の間で


何かが動き始めていた












Stand by U ~to the future4~

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ヒョンは最近、よく一人で考え事をしている




ふと見ると
一点を見つめ、遠い未来を見ているかのように、その瞳は深く、まっすぐだ




時としてそれは自己啓発をしているかのようにも見える



僕が周りのスタッフとふざけながら談笑している時でも
ヒョンはそこからすっと抜け出し
モニターをチェックしたりひとりで目を閉じてじっとしている時も多い





僕はそういう時、なるべく邪魔をしないようにしている


「ああ・・いいなあ」って思う


ずっとずっと周りばかり気にかけていたヒョンには、そんな自分と向き合う時間が必要なんだ






そして僕もまた、一人でいろいろなことを考えていた

今目の前にある仕事、何ヶ月か先の仕事、何年か先の仕事、何年か先の未来







そして

ヒョンとの未来のこと・・・







周りから見ると、現場でもあまり話をしない僕らは仲が悪いと思われているかもしれない




でもそれでいいんだ



いいたいやつには言わせておけばいいし
そう思うやつにはそう思わせておけばいい


小さなことにつまづき、考えすぎてしまう僕は
いつのまにかそんな風に良い意味で開き直れるようになっていた



何より大切なのはぶれない僕らの心であって、お互いを信じる気持ちだ





でも



ヒョンが最近僕のことばかり話すのは
どうしたってその裏に隠された何かを、感じ取らざるを得ない




そう



ヒョンは僕を独り立ちさせようとしている





ヒョンはリーダーで、いつでも前面に出てみんなを一人でひっぱってきた人間だ
ドラマもステージもミュージカルも、なんだって一人でやり遂げてきた人間だ


だから今度は僕が独り立ちする番
そうヒョンが思っているのはすごくよくわかる


なんといっても僕らは2人しかいない
この移り変わりの激しい世界に
たった2人で立ち向かおうとしている僕らにとって
不利になる状況は山ほどあるんだ



いつか僕が一人で守らなければならなくなる日が来る
ヒョンは僕のこと、グループのことを第一優先に考えている



わかっている


それは避けられないことなんだ




でも


でもいつか来るその日まで
僕はヒョンとの暮らしを守りたかった
それはヒョンも同じだと思っていた



でも -





「チャンミンは半端じゃないですよ」



僕のことをこう表現したヒョン。
「チャガン・チャンミン」もしくは「シム・チャンミン」としての僕のことを、ありとあらゆるところで褒めまくっている
ありがたいことだけど・・・どうして少し寂しい気持ちになるんだろう



この頃からうすうす僕は気づいていた

あなたが・・・・僕を自分から離そうとしていることを








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あの日

2人で初めて立ったステージ

あんなにも震え、あんなにも緊張し、あんなにも不安だったステージはこれまでなかった


それでも僕が挑めたのは
同じステージの上にあなたがいたからだ


どんな不安なステージだって
どんな疲れているステージだって

めげそうになる僕が限界までがんばれるのは
隣で最高のパフォーマンスを魅せるあなたがいるからだ



僕が自由に僕らしくいられるのは
いつも変わらないあなたが隣にいてくれるからだ





わかっている

好む好まざるにかかわらず
これから僕らに様々な変化を求められる事はわかっていた




ずっと2人で、すっとステージの上で生きられたら
どんなに素敵だろう


でもそれが現実的でないことを
お互い口には出さないけれど、僕らは痛いほどわかっていたんだ










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「ヒョン!!何やってるの!!」
「あ・・・おかえり」
「お帰りじゃなくて・・・すっごく焦げ臭いんだけど」
「ああ・・・フライパンさ・・火付けっぱなしで空焚きしちゃって・・」
「・・・これは・・・?」
「あっこれ?油が足りなかったみたいでこびりついてさ・・・」



見るも無残な・・多分料理と思われるものが、大きなお皿に大量に盛られていた


そして当然ながら戦のあとのような台所


どうして・・この料理でこれだけの鍋が必要なんだろう
どうして・・この料理でこんなに調味料が必要なんだろう



「ヒョン・・・前から思ってたんだけど」
「ん?」
「何かを使ったらすぐにその場で片付けるようにするといいんだよ」
「・・・・味付けが薄かったらまた使うだろ」
「まだその時出せばいい」
「それがめんどくさいんだよ」
「使った鍋はその場ですぐ洗えばいい」
「段取りを忘れちゃうんだよ、洗ってるあいだに」
「たった数秒か数分だろ?」
「その数秒か数分で味が変わるんだよ!」
「・・・・その結果がこの皿の産物か」
「・・・・これは・・・・まあ・・・試作品だよ」
「・・・・一体いつになったら完成品にお目にかかれるのかなあ」
「・・・うるさいなあ。せっかく作ったのに」


ちょっとしょぼくれるあなたが憎らしくもありかわいくもあり

しょうがないな
今日はこれで我慢するよ




「なんで急に料理なんかしようと思ったの?」
「急にじゃないよ。前からちょくちょくはしてたじゃん」
「まあ・・・そうだけど・・・」
「あっそうだ。洗濯機さ、なんか変なエラー表示出て動かないんだけど」
「洗濯もしたの?」



嫌な予感がした

急いで洗濯機を見に行くと・・案の定、僕のお気に入りのTシャツが真っ青になっていた


僕は大げさにため息をつく
怒る気力も・・・失った・・・・



「ヒョン・・・」
「ん?」

できるだけ感情を抑えて言う

「白いものと色物は一緒に洗わないでほしいんだよ」
「なんで?」
「ヒョンのジーパン、この前買ったばっかのやつだろ?ジーパンは色落ちするんだよ。何回かは単独で洗わないと他の物に色が移るんだよ!」
「そうなの?変なの。色落ちしないように売る前に洗っときゃいいのに」




だめだ
この人には正論を正面から突きつけても通用しない




「このエラー表示は『糸くずフィルターを洗え』ってことだよ」
「糸くずフィルター?何それ?」
「ここにあるやつ」
「そんなとこに引き出しあるの?お前、よく知ってるなあ」
「何年この洗濯機・・使ってるんだよ」
「えっ?俺はこんな表示見たの初めてだぜ」
「僕がいつも掃除してるからだよ」
「そうなの?」
「最近クリーニングばっかりだしてたからなかなかできなかったけど」
「そっか~。よし。これでひとつ勉強になったぞ」
「柔軟剤は入れたの?」
「入れたよ。これだろ?」
「ヒョン・・・これは・・・漂白剤だよ」
「えっ?もお~同じような容器がたくさんあってよくわかんないんだよ。一個に全部まとまってるのってないのかよ」






僕はあなたとコントをしてるんじゃない


喉元まででかかった言葉をぐっと飲み込む









こんな日常も
こんなヒョンのイライラする失敗も
こんな僕の小言も
すべてが僕の一部になっていて


いつか終わりが来るなんて
考えたこともなかった





この前のヒョンの発言
僕はずっとひっかかっていたんだ


「チャンミナ、一人暮らししたい?」










2人で存続することに全力だった日々


そしていま


2人で存続するために


1人で守ることを、考えなきゃいけない時








ヒョンはいつも直球勝負

言わなきゃいけないことははっきり言う
言うべきことは必ず言う

でも、自分の中で迷いや葛藤が生じていることに関しては、すごく慎重になる




僕はそんなヒョンをずっと見てきた


だから


今がその時だって、僕にはわかる





ヒョンは迷っている

ヒョンは心の中で戦っている

ヒョンは決めかねている


ヒョンは・・・・・苦しんでいる







だから



僕が・・・答えを出すべきなんだ






僕から




答えを出すべきなんだ






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from scene28 to 31

Stand by U ~scene28~

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僕が覚悟してた以上の地獄が始まった

ヒョンはもう鬼以外の何者でもなかった
息が切れて倒れ込んでいる僕を見ても


「ほら、立てよ」


この一言で終わる



泣きたいくらいくやしい
そこら中のものを手当たり次第投げつけて罵倒したくなることもある



「僕だって精一杯頑張ってるんだよ!!」





それでも・・・・僕は黙って立ち上がる


決めたんだ


行けるところまでいくって



僕が自分の意志で
自分の心で







ヒョンはヒョンで苦しんでいた
今までの自分のパートより、はるかに高い音域を求められるから


メンバーで配分していたそれぞれのもち味を
今は2人でまかなわなければいけない


お互いがお互いに頼っていた部分
お互いが足りない部分
それを埋めるように、僕らは必死に練習をした

朝も夜も昼もずっとずっと





そんな中で、僕とヒョンの関係も少しずつ変化していった

「一緒に」と決意したあの日から
ヒョンは僕に今まで以上にいろんなことを話すようになった
何かを決めるときでも、必ず僕の意見を聞く



「チャンミンはどう思う?」

「う~ん・・そのことはチャンミンにも聞いてみてください」



いつもヒョンたちの後ろで、すでに決定したことにただひたすら一生懸命ついて行った僕にとって、堂々と意見を求められることはすごく新鮮でもあり、プレッシャーでもあった


でも、ヒョンが意識的に僕をひっぱりあげようとしてくれているのが伝わる



ありがたかった



「2人で創りあげていく」ことを実感した








でも

2人の関係が対等であろうとすればするほど
2人で一緒に活動する時間が長くなれば長くなるほど
当然意見がぶつかることも多くなり


そして・・・喧嘩も多くなる


ヒョンは時々僕が素直じゃないことに腹を立てる

僕は心に思っていることを上手に表現できないことがある
それは昔から自分でもよくわかってる

それが斜めに構えているような、ちょっと冷めているような、そんな言い方になってしまうことがあって
今までは「末っ子」という身分でなんとなく許されていたようなところが、今はそうはいかなくなる


「チャンミナ、そういう言い方はよせよ」


ヒョンにそう言われると、僕はとたんに不機嫌になってしまう



僕にだって言い分はある



でも

冷静になって考えると「そうだよな」と思うこともたくさんあって、あとで激しく後悔する




僕は僕でヒョンに腹を立てることもある

ステージにかけるあきれるくらいの情熱はわかるけど
ヒョンは時々突っ走りすぎて周りが見えなくなる時がある

いろんなことにルーズなのも相変わらず

大雑把すぎんだよ、ほんと








そして

ちょっとした言い回しとか
ちょっとした態度とか

そんな小さなことで喧嘩になって

僕とヒョンは・・・口をきかなくなっていた




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仕事帰りの車の中で、僕とヒョンの不穏な空気を察してか、マネージャーが間に入る

「お前ら・・・いい加減にしろよな」


ヒョンは少しバツの悪そうな顔をして

「すみません・・・大丈夫ですから・・・・」とマネージャーに言う


僕もなんだか居心地が悪くて、無言で窓の外をじっと眺める









部屋に入ってからも、僕もヒョンも無言のままだ


こうなると、僕は意地でも謝らない
僕もヒョンも根っこの部分ではすっごく負けず嫌いで
自分でもこうゆうのはいけないってわかっているけど、でもやっぱり素直になれない




そんな雰囲気を見かねてか、ヒョンがぶっきらぼうにつぶやく



「先に、シャワー浴びろよ」




「・・・・・いいよ。ヒョンが先に使えよ」




僕はこの一言を言い返すのがやっと。





でも・・ヒョンが先に口をきいてくれた

多分・・・精一杯の譲歩だよな




ヒョンがシャワーを浴びている間、僕はなんとなくリビングでソファーに座りビールを飲む




自分の部屋に帰らないこと




これが僕なりの譲歩



かわいくないよな

自分でもそう思うけど、でも、僕はこういう風にしか振る舞えない




ヒョンがシャワーを浴び終わると
ヒョンはヒョンで台所やリビングで細々としたことをする



ヒョンもなかなか自分の部屋に戻らない




これが・・・・・多分僕たちの精一杯の譲歩






髪の毛をかわかしながら、無言でヒョンが僕からビールを奪い、一口飲む

「だから・・・いつも言ってんだろ。自分も飲めばいいじゃんって。冷蔵庫に入ってんだろ」

「だから、いつも言ってんだろ。俺はビールは嫌いなんだんよ。一口でいいんだよ」




・・・むちゃくちゃだ




そういいながらも・・・
ヒョンは僕の横に座り、ゲームを始める


ヒョンはいつもゲームをやりながらブツブツ言う。
僕は黙ってやる派だから、そんなことでもイライラするんだけど・・・



「っあ~くそっ!だめだ~」

なかなかクリアできないヒョンを見て、僕は横から口をはさむ

「・・・・あのさ~そこの攻略法知らないの?前に教えたじゃん」
「・・・・教えてもらったか?」
「・・・・もう忘れたのか・・・教えただろ!」
「別のやつじゃないの?」
「・・・・いいから貸してみ」

僕はヒョンからゲームを奪い、ヒョンがクリアできなかったところをやすやすとクリアする


「ほら、ど~ぞ」
「・・・・むかつく・・・」
「お~~むかつけむかつけ。クリアしてからそのセリフ言ってみ」
「・・・・・だからそういうものの言い方がむかつく!」




ちょっと確信をついた、ヒョンの本気とも冗談ともとれる一言




僕は・・・・なんとなく傷つく




そんな僕のちょっとした変化を、ヒョンはすぐに感じ取る


「お前がシャワーから出てくるまでに絶対クリアして見返すからな、見とけよ!!」


どうしていいかわからない僕を、ちらりと見る


「ほら、早く入ってこい!ビール全部飲んじゃうぞ!!」


「・・・・・さっき嫌いっていったじゃん・・・」



僕は立ち上がってシャワー室へ向かう




「あんまりシャワーの温度、あげんなよ」


「ヒョンがぬるすぎんだよ」




言ったあと、少し笑ってる自分に気づく

不思議と・・・気持ちが軽くなっている







僕とヒョンは何も変わらないけど
2人の関係は少しずつ変化している


ぶつかり合うのも、相手を本気で想っているから
腹が立つのも、相手を本気で想っているから


他人に対してちょっと距離をおく癖があった僕にとって
そんな変化をもたらしたのはまちがいなくこの男だ






僕がシャワーを浴びている間

きっとヒョンは慣れないビールを少しずつ飲んでいる

そしてシャワーから出てきた僕に言うんだ



「お前が遅いから全部飲んじゃったぞ」




ちょっと赤い顔をして

いたずらっぽく笑って




僕は何て言おうかな

「やっぱりクリアできないじゃん。まだまだ僕を越えられないな」

こんなことを言って、また「むかつく」って言われるのかな






冷蔵庫からビールを1本取り

ソファーでゲームをするヒョンに近づく




赤く火照ってるであろうヒョンの頬に

後ろから抱きついてビールを当ててやろう



ヒョンは一瞬驚いて

でもきっと僕の手をとってくれる


そして2人で笑い合って
心のわだかまりを少しずつほぐしていくんだ



「ごめん」ってなかなか言えないけど
お互いの言い分もわかるし
お互いが好きじゃない振る舞いも・・・・多分わかってる



肝心な言葉が言えない僕たちだけど
そうやって
少しずつすれ違いを乗り越えていこう




もう二度と心が離れないように



ひとつひとつ2人で乗り越えていこう











Stand by U ~scene29~

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頂点に登りつめた僕らを
2人で超えられるのか


「今の僕じゃダメだ」
そう考えて練習をする


「今の僕ならできる」
そう納得できるまで練習する



練習とひとりの仕事をこなす毎日
僕の24時時間に空白の時間はほとんどない
疲れ果てて、クタクタになって、立ち上がれないほどになる

そんな弱気な僕にヒョンは言う



「チャンミナ、練習は嘘をつかないよ」



僕はヒョンの言葉を信じている
だから何度でも立ち上がる

ヒョンを信じて、ついていくって決めたんだ




2人のステージが決まって
でも現実は手放しで喜べるほど甘くはないことを
あとからあとから嫌というほど思い知らされる




「2人に何ができる」




周囲からの言葉は、重く、深く、僕らに突き刺さる



「大丈夫、大丈夫」って自分に言い聞かすけど
僕のプレッシャーはどんどん大きくなっていく



日に日に激しさを増すネット上での批判
僕とヒョンへの容赦のない言葉の刃
大切な人達への・・・根拠のない攻撃


僕とヒョンだって生身の人間だ
叩かれれば痛いし、切られれば血もでる

心だって・・・・折れるんだ




「言いたいやつには言わしておけばいい」




僕を励ますためにそう言ってくれる仲間もたくさんいた

昔の僕だったら
もしひとりきりだったら

そう思って、自分のモチベーションを上げていたかもしれない



「わかってくれる人だけわかってくれればいい」



昔の僕の思考パターンだ


でも今は違う



「わかってもらえるまであきらめない」




ヒョンが僕に教えてくれた

そんなヒョンの生き方を、僕は尊敬する
ヒョンは僕を変えていく男だ






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暗闇の中に一筋の光が射し
目標ができた僕らの毎日は、一見充実しているように見えただろう



でも、僕らは本番が近づくにつれ、周囲からはわからない、どうしようもないプレッシャーと戦っていた




グループの存続を求める声

メンバーの存続を求める声




僕らが披露するステージ



ファンが求めるのは、僕らの代表曲


そしてファンが否定するのも・・・きっと僕らの代表曲




5人でつくりあげた歌声。5人でつくりあげたパフォーマンス。

それをたった2人でつくっていかなればいけない。



体が覚えているステップ。
歌い慣れた自分のパート。
それを少しずつ変えなければいけない行程は、決して楽しいものではなかった



結果を求められるステージだ
もし失敗すれば、状況はこれまで以上にひどいものになるだろう




これまで以上にひどい状況



そんなことを考えると・・・僕は情けないと思うけど体が震える




「それなりのステージ」「それなりのパフォーマンス」



そんなものは誰も求めていない
それでは意味がないんだ



「2人で守る」ということは、「維持」ではなく「進化」だ

僕たちは自分達で自分達のステージを超えなくてはいけない




それが「守る」ということなんだ






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僕は緊張と不安と恐怖で、眠れない日が続いていた


そんな日はヒョンの帰りを待つ


僕が不安そうにしていると「何かあったか」とすぐに聞くヒョンだったけど
最近はひとりの時間を大切にする僕が部屋になかなかもどらないと、僕の今の状態を察するようだ

何も言わずにそばにいてくれる
僕が眠りに着くまで、ずっとそばにいてくれる




「ヒョン・・・」

「何?」

「不安は・・・・ない?」

「・・・・・・・ないよ」

「・・・・マジで?」

「・・・・・うそ」

「・・・・・・・・」

「・・・すっげー不安」

「ヒョンでも?」


ヒョンはふっと力なく笑う


「当たり前だろ」

「あんだけの場数踏んででも?」

「場数の問題じゃないよ」

「・・・・・・・・」

「・・・俺らを・・・好意的な目でみてくれる人ばっかりじゃないし」



核心をついたヒョンの答えに・・・・・・2人だけがわかる深い暗闇を実感する


ヒョンも・・・・・苦しんでいる



「怖いか?」

「・・・・ん・・・・」

「俺だって怖いよ」




どれだけ練習しても
どれだけ歌っても
どうしても不安を拭うことができない僕ら


どこまでいけば、この不安から解放されるんだろう





「ヒョン・・・・僕は・・・正直怖い」

「・・・・ん・・・・」

「僕に本当にできるのか自信がないし、僕らへの周囲の良くない目も知ってる・・・」

「・・・・ん・・・・」

「何より・・・・・

会場が・・・・僕らを受け入れてくれるのか・・・・怖いんだ」

「・・・・ん・・・・」



結果を求められるステージ
僕らの未来を・・・・決めるかもしれないステージ




「でも・・・・」

「やるって決めたんだろ」



僕の言うべき言葉を・・ヒョンが奪う



「いけるとこまでいくって決めたんだろ?」

「・・・ん・・・」

「だったらやるしかねーだろ」



ヒョンが僕の頭を引き寄せる



「大丈夫」



僕の頭をトントンたたく



「大丈夫だよ。俺ら2人ならできる」







ヒョンの「大丈夫」は僕の特効薬だ

どれだけの眠れない夜をこの言葉で乗り越えてきたんだろう






そうだねヒョン

「2人で守る」と決めた日から

僕らはお互いを信じるって決めたんだ






僕ら2人が選んだ道を信じて


2人で乗り越えてきた道のりを信じて



ぼくは・・その先へ進もうと思うんだ




うっすらと見える


あの光の先へ・・・









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運命のステージ


でも、それは僕とヒョンに突然ふりかかった事の大きさと比例して
とてつもなく難しく、とてつもなく複雑なステージだった



僕らがステージに立つのは、終盤だ
もちろん他の共演者より格段に出番は少ない



僕たちに与えられた
数曲、数分間 ・・・・・



そこで、僕とヒョンの未来が・・・決まるかもしれない






そして

僕たちに用意された名前は


「yunho & changmin」


グループ名さえ・・・表立って名乗れない現状



でもヒョンは必死にスタッフとかけあっていた
ヒョンも僕も今の複雑な事情は百も承知だ
だから大切なスタッフたちと余計ないざこざを起こしたくなかった



でも、ゆずれないものがある


僕とヒョンがゆずれないもの



「東方神起」という名。




僕とヒョンは「東方神起」という名をステージ上で名乗ること


これだけは、絶対に何があってもゆずらなかった






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ゴールの見えない日々

違うな

スタートラインの見えない日々だ



あれから・・・・どれくらい時が経ったんだろう



いろいろなことがあった

僕もヒョンも、たくさん・・・たくさん傷ついた


自分たちからまいた種ではない
言ってみれば不可抗力だ

それでも、その場にうずくまって、立ち止まっていても何も変わらない
すでに、起こってしまったことだ

気持ちを切り替えるまでに時間がかかったけれど
幸いなことに、僕らは2人いた



ヒョンじゃなかったら
僕は今、ここにいない





僕らはそれこそ血の滲むような努力をした
口にすると簡単だけど、それは実際に手にとって、体で実感することのできる痛みの連続だった



皮肉にも
いつのまにか早朝と深夜のレッスン場は僕とヒョンが当たり前のようにおさえていた



次々にデビューする後輩たち
いつのまにか背中を見るようになった仲間たち



追われる立場が追う立場になり
自尊心と謙虚さの狭間に揺れていた日々



それでも僕とヒョンはあきらめなかった




もう1度ステージに立つために



この名を、守るために








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そしてとうとう・・・運命の日を迎えた



”地に足がつかない”とはこのことか

今までに感じたことのない緊張感が僕をおそっていた





デビューの舞台だってこんなに緊張しなかった
あの頃はある意味怖いもの知らずだったんだ
失敗したら・・・・また考えればいい
もしだめだったら・・・その時考えよう


でも今は違う


失敗は、許されない
僕とヒョンは、あまりにも大きな成功を手にしてしまったから
あの頃とは求められるものの大きさが違う


背負っているものの大きさが、全然違うんだ




僕とヒョンは尋常じゃない緊張感の中にいた

そしてそんな僕らを



触れてはいけないものに触れるように
逆にあからさまに核心に触れるように

そして・・・あたたかく見守るように



周囲のスタッフや共演者の僕らへの反応は、なかなか複雑なものがあったようだ

そんな視線に・・・少し自嘲気味に笑う


「なんか・・笑っちゃうけど・・・僕らより周りの方が緊張してない?」


ヒョンも笑う




なんにしたって僕とヒョンは


「お前らに本当にできるのか?」


そんな周囲からの無言のプレッシャーをひしひしと感じていた



そんなのにいちいち反応していちゃダメだ
そんな周囲からの視線を払拭するのは、このステージ上のパフォーマンスだ

戦うべき相手は周りじゃなく、自分自身だ



大丈夫。
やれる。
大丈夫。
僕はできる。



何度も何度も自分に言い聞かす




「チャンミナ」


ヒョンが不意に僕を呼ぶ


「ん?」



「・・・・大丈夫だよ」



ヒョンが笑い、僕の背中を軽く抱き、トントン・・・とたたく


「大丈夫だ。絶対。」







僕が1番欲しい言葉

誰よりもあなたに言って欲しい言葉








「俺たちのステージを・・・見せつけてやろう」

「 ・・・・うん」

「他のやつらとは違う、俺らだけのステージをやってやろうぜ」

「・・・うん」





ヒョンがとなりにいてくれて、これほどありがたいと思ったことはない


あなたの存在が
こんなにも僕を強くするんだ







「ヒョン・・・・」

「ん?」

「このステージが終わったら・・・・・」

「・・・ん・・・・」

「・・・・海に・・・」

「・・・・・・」

「・・・・また・・・2人で海に行きたい」



こんな時に他に気の利いたことはいえないのか

自分でも呆れちゃうけど、僕が今1番伝えたいのはこの言葉だった



ヒョンが笑う



「・・・・約束だ」




僕とヒョンが2人で決意したあの日

僕とヒョンが守ると誓い合ったあの日





あの日ヒョンとみた海を

僕はずっと覚えている



海はどこまでもどこまでも果てしなく続いていて




僕とヒョンの誓いも


ずっと・・ずっと・・・続いていくんだ・・・・








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僕らの出番だ


僕とヒョンは別々のところからステージにあがる



スタッフやら出演者やらがたくさん行き来する楽屋で、僕とヒョンは別々の入口へと向かう







僕は振り向く




一瞬


すべての音が消え


すべての動きが止まり



僕とヒョンは離れた場所からアイコンタクトをする




小さく



本当に小さくヒョンが頷く



-大丈夫。行くぞ!




僕も小さく・・・でも力強く頷く



-やれる。絶対。





僕は足早に入口へと向かう。



もう迷いや戸惑いはない
まっすぐに前を見据え
僕は僕らの道を信じて進むだけだ






ここは


あの日々からのゴールじゃない


僕たちの、スタート地点だ



ここからまた、はじまるんだ





僕は



今までは遠くに見ているだけだったあの光に



絶対にこの手を触れてみせるんだ





行こう、ヒョン



もう1度、あのまばゆい光の中へ










Stand by U ~scene31~

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暗闇の中で待機している僕らには
もちろん会場の様子は何も見えない






「大丈夫、大丈夫」






呪文のように唱える



心の中で何度も自分に言い聞かせて震える足を止めようとはするものの
僕の体は他人の体のように、全くいうことをきいてくれない
これほどの緊張ははじめてだった



最後に見た、ヒョンのうなずく姿を思い出す

きっとヒョンも、同じ気持ちでいる






大丈夫 大丈夫





待っていたんだ・・・この日を
いくつものつらい夜を、越えてきたんだ
何度も何度も、立ち上がってきたんだ


いくら言い聞かしても不安は消えないけれど
それでも僕は何度でも繰り返す





大丈夫、大丈夫









-その時だった









「・・・バンシンギ・・・トンバンシンギ・・・」









僕らの名を呼ぶ声が・・・かすかに聞こえた









「トンバンシンギ、トンバンシンギ」









そして、はっきりと

その声は僕の耳に届いてきた








聞き慣れたはずのコール



一度は・・・・失いかけたこの名前







心が震えるとはこういうことをいうのか







僕は・・・


僕の心はこんなにもこの声を求めていたのか




今さらながら思い知らされる





この世に・・こんなにも美しい声があるのか










そして-




その声に呼応するようにステージへと進んだ瞬間






僕が見たのは

光耀くレッドオーシャン







そして



会場を埋め尽くす人々のあたたかな声援、笑顔の数々




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ひとつ残らず心に刻もうと思った




ひとりひとりの顔、ひとりひとりの声
涙、笑顔、手を振る一本一本の指先まで




ひとつも逃したくなかった





僕らを待っていてくれた人がいた



僕らは・・・ここに帰ってきたんだ









後からステージに到着したヒョンに、僕は手を差し出す




ヒョンは、その手をしっかりと握り返す





繋いだ手から、ヒョンの思いが伝わる






「大丈夫。行くぞ」






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ヒョンも僕も、ありったけの魂をぶつけたステージだった



こんなにもがむしゃらに


こんなにも激しく


冷静さが売りの僕が


感情をぶつけたステージは初めてだったかもしれない






とてつもなく長く

それでいてあっという間にも思えた僕らのステージ






そして

僕たちの挨拶




ヒョンと僕は約束していた




「東方神起のユノとチャンミン」




そう、はっきり名乗ろうと









「せーの・・・こんばんは。東方神起です」










そう言えたとき



会場からは割れんばかりの歓声が聞こえた










その瞬間、僕の中で


「大丈夫、できるはず」が



「大丈夫、やれる」に変わっていた





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ステージが終わり、仲間やスタッフからもたくさんのあったかい声をかけてもらった



「お前ら、2人でやっていけるな」



僕らにかける、ほとんどの声がそれだった




ヒョンは幸せそうに

本当に幸せそうに仲間達の輪の中で笑っていた













倒れそうなほど疲れているはずなのに
僕とヒョンは意識だけが妙に高ぶっていて
家についてもなかなか眠ることができなかった




お互い話したいことはたくさんあるはずなのに
僕とヒョンには会話はなくて・・・・





「あんだけ飲んだのに・・・まだ飲むのか・・・」


冷蔵庫から出した缶ビールを開け、ソファーに座る僕にヒョンがあきれたように言う


「なんとなくね・・・眠れないし・・・」


これだけ飲んでも全然酔わないのは、気持ちが高ぶってるせいだろうな・・・


「俺も・・・・飲もうかな」


「お・・めずらしいね」



普段は家では飲まないヒョンが、ビールを取り出してくる。



「チャンミナ、いちおう乾杯しようぜ」

「はいはい」


嬉しそうに乾杯の音頭をとるヒョン


僕までつられて笑ってしまう









「海・・・いつ行けるかな」


ヒョンが唐突に言った




・・・・覚えていてくれた・・・




あんな忙しない混乱した中で僕が言った、たった一言をヒョンが覚えていてくれた




「忙しく・・・・なりそうだからな」


「ん・・・・いつだって・・・いいよ」



「そっか・・・」




だって、僕らはこれからずっと・・



「これからずっと一緒だもんな」



びっくりした
ヒョンが僕の心の中を見透かしたように言う



「・・・嫌でもね・・・」



僕はなんだか照れてしまって、またもかわいくないことを言ってしまう



「健やかなる時も、病めるときも、喜びの時も、悲しみの時も・・・」



ヒョンが牧師さんのような真似をしてふざけていう



「意味わかんない」



「そお?俺は結構本気なんだけど・・・・」


ヒョンが笑いながらビールを一口飲む





「チャンミナ」


「何?」





「・・・・永遠って・・・信じるか?」



ヒョンは・・・窓の外を見ながら唐突に僕に聞いた




「・・・・生物学的には・・・ないだろうね」





ふふっとヒョンが笑う

相変わらず現実的だな、とつぶやいて




「俺は・・・信じるよ。


今日・・・永遠を・・・・信じたいと思った」







ヒョンの言う永遠は


人々の心に残る何かをさしているのか


僕らの・・・未来をさしているのか





「チャンミナ」


「ん?」


ヒョンが真正面から僕を見る



あの日



「ついてきて欲しい」といった目と同じ瞳で







「・・・・ついてきてくれて・・・ありがとな」








そのヒョンのひとことで


僕は・・・・泣きそうになっていた





「・・・You are welcome!」





肩をすくめて、おどけて、目をそらす



僕の精一杯。




だめだ

泣いてしまう





「先シャワーあびるよ」




泣き顔を見られたくないから、足早にシャワールームに向かう











お礼を・・・言わなきゃいけないのは僕の方だ



僕をどん底からはいあがらせてくれたのは


ヒョン


あなただ



あなたがとなりにいてくれなかったら


僕は今ここにはいない



あなただったから



僕はここにいる







「永遠」を・・・



僕は信じたいと思う



この先あなたとつくっていく未来で



永遠に残るものを、つくってみたい



そう思った






僕はあなたとなら



できると思うんだ




あなたがとなりにいてくれて


僕があなたのとなりにいれば





永遠を




信じられると思うんだ・・・・







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from scene23 to 27


Stand by U ~scene23~

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あれから

僕たち2人の環境はそんなに大きくは変わっていないけど
僕たち2人の気持ちは、確実に小さな変化を遂げていた


相変わらずお互いに単独の仕事しかないけれど
僕はヒョンを見て思ったんだ

今自分に与えられた仕事に感謝をして、ひとつひとつ誠実に、後悔のないように取り組むこと

それが、僕らの未来にきっとつながっているんだ






そして、僕はずっと彼女のことが気になっていた
あれから1度も連絡をとっていない
多分・・・このままにしても終わるんだろうけど
でも、僕はそんな風にはしたくなかった

男として、きちんとけじめをつけたかった





勇気を出して彼女に連絡をとる

「どうしても、会って話したいことがあるんだ・・・」





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彼女が選んだのは、僕たち2人が初めてデートをして場所だった

「なつかしいね」

と笑ってるけど、彼女が僕の気持ちを察しているのは表情でわかる





「ちゃんとしたいんだ、いろんなことを」


彼女は黙って聞いていた


「今のままじゃ・・すべてが中途半端で終わりそうなんだ・・・・」




嫌いになったわけじゃない
彼女に悪いところがあるわけでもない


全ては僕のせいなんだ



でも、何を言っても言い訳に聞こえるし
そんなことを言って彼女にずるずる気を持たせるのも嫌だった



本当に、こういう時に上手になれない自分が嫌になる




彼女は僕に何も聞いてこなかった


「頑張ってね・・・これからもずっと応援してるから・・・」


笑ってそういう彼女を見ると、僕はなんともいえない切ない気持ちになった





送っていくという僕に、彼女は頑としてひとりで帰ると譲らなかった

「まだ時間も早いし、いろいろ寄りたいところもあるから」


ばいばいと手を振り、遠ざかっていく彼女の背中を見て
今までのことが次々とよみがえってくる



はじめてのまともなデートをした日
はじめて、手を繋いだ日
はじめて、キスをした日
はじめて・・・




どんな時も僕を支えてくれた彼女
たくさんのことを僕に教えてくれた彼女

僕があまりにもまだ未熟だから
君のために何もしてあげられなかった



本当に・・・・ごめん



僕は次々にこみ上げてくる甘く切ない気持ちに押しつぶされないよう
空を見上げて・・・大きく深呼吸をした









「ただいま・・・」

ドアをあけるやいなや、何かいい匂いがする


「ヒョン?」


リビングのドアを開けると、ダイニングテーブルには何やらごちゃごちゃといろいろなものが並べられている


「おうっおかえり」


なぜか少しご機嫌なヒョンが、あろうことか・・・



料理をしていた



「・・・なんのマネ?」
「なんのって・・料理だよ料理」
「・・見ればわかるよ」
「最近さ、お互い忙しくて外食ばっかだったじゃん。だからたまにはいいかなって思ってさ」


その気持ちはわからないでもないけど

でも

僕は台所を見て愕然とした



ありとあらゆる調味料が蓋があいたままで出しっぱなし
散乱する皿、ボール、コップ、・・・粉?
なぜあんなに鍋とフライパンが出てるんだ?



あれは一体・・誰が片付けるんだ・・・




僕の視線の先に気づき、ヒョンが慌てて言い訳する

「ああ、あれは・・なんとかするからさ、ま、とりあえず食べようぜ」



なんとかするね・・・

多分「僕が」なんとかする・・・ね





「チャンミナ、ビール飲むか?」
「あ・・うん」

ヒョンは必ず僕のビールを2口ほど飲む。
もうそれがわかってるから、僕もヒョンと僕の間にビールを置くのが普通になっていた。

「どう?」
「・・・・・・・」
「うまい?」
「・・・・・人参がちょっと固い」
「え~ちゃんと時間かけて煮たんだけどなあ」
「スープ・・・・濃すぎ」
「なんで、これくらいがいいんだよ」
「野菜の切り方・・雑・・・」
「これくらい分厚いほうが噛み応えがあるんだよ」
「なんでこれが入ってるワケ?」
「わかってね~な~。これがうまいんだって、マジで」
「もう少し盛りつけ方なんとかなんないかな~」


「・・・もういいよ。じゃ食うな」


さすがのヒョンも少しふてくされる

「・・・嘘だよ。見た目はともかく味は・・・うまいよ」

「・・・だろ?」


ヒョンが嬉しそうにビールを一口飲む


僕は本当はすごく嬉しかった
なんかありがとうとかおいしいとか改まって言えないけど、本当にすごくありがたかったんだ






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台所をやっと片付け終わり
ソファーに座ってゲームをしているヒョンの横に座る



「ヒョン・・・」

「ん~?」

ヒョンは最近ロールプレイにはまっている

「今日さ・・・・・」

「ん~・・・」


「・・・・今日・・別れたんだ・・・」


ゲームをしているヒョンの指が、一瞬止まる

僕は本日4本目のビールをあける



「・・彼女とのこと・・ちゃんと、終わりにしたんだ・・・・」

「・・・そっか・・・」

「・・・いい子・・・だったんだ・・・・」

「・・・そっか・・」

「・・・・僕にはもったいないくらい・・」

「なんだよ・・自慢か?」



ヒョンは笑って僕を見た

でも少し泣きそうになっている僕に気づいて



ゲームを置き、僕の肩を抱いた
僕はヒョンの肩に頭を置く



何も言わず、ただ頭をポンポンと優しく叩いてくれる




-ダイジョウブ




いつものおまじない





「・・・ちゃんと、したかったんだ・・・」

「ん・・・」

「・・・これ以上・・・傷つけたくなかったんだ・・・」

「ん・・・・」




うまく言えないけど
自分でも何をどうちゃんとしたかったのか言葉にできないけど

ヒョンなら・・・わかってくれる気がした

多くを言わなくても、きっとわかってくれる




ああ・・やっぱり僕の帰る場所はここなんだ
なんでこんなに落ち着くんだろう






「・・ほんとに・・・いい子だったんだ・・・」

「・・・なんだよさっきから・・未練あんの?」

「未練は・・・ないけど・・」

「じゃあなんだよ」

「なんだよって・・・なんでヒョンがキレんだよ」



少し口を尖らせるヒョンを見て・・・なんだかからかいたくなる



「・・・・妬いてんの?」

「・・・まさか」


今度はヒョンが聞く


「妬いて欲しいの?」

「・・・・まさか」



言葉遊びのような応酬
耐え切れなくなって、2人でクスクス笑う




そして


笑い声が途切れ


僕はヒョンの肩にもたれたまま


静かな優しい沈黙が僕らを包む





「・・・何落ち込んでんだよ、いい男がこんなに近くにいるだろ?」

「・・・それ・・・本気でいってんの?」

「なんだよ、ちがうか?」

「・・・そう言うセリフは女に言えよ・・・」




ヒョンが僕の手からビールを奪い、一口飲む


「ある意味、本気」

「ん?」

「損はさせない」

「・・・・・・」

「今度は・・守る自信はある」

「・・・・・・」



ヒョンが思いのほか真面目な顔していうから
僕も少し動揺してしまう



それは男として?
女の人に対して?




「また・・・酔っ払ってんの?」


「・・・お前・・・ムカつくな・・・」






そう言って少し笑って


僕の顔を覗き込むように


ヒョンの顔が近づく






僕にとっては3回目。

ヒョンにとっては・・2回目?





僕にとっては自然なこと



多分・・・
ヒョンにとっても自然なこと




こうやって、僕らお互いの気持ちに寄り添うんだ




僕たちだけにしかわからない



絆を確かめ合うんだ・・・






Stand by U ~scene24~

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僕はドラマの仕事がメインになっていて
初めての演技に慣れないながらもやりがいを感じていた



ステージでのパフォーマンスと演技は似ている
歌詞の世界観、曲の世界観を自分なりに理解して、それを歌声で、表情で、ダンスで、表現する


「表現者」という面では歌うことも演技することも同じだ



 -今の全ては未来へ続いている



僕は一人の仕事も以前より自分なりに楽しめるようになっていた





ヒョンも忙しい毎日を送っていた
「もうそのへんでやめとけよ」っていいたくなるくらい


いろんなジャンルに挑戦して、もちろんやるからには死ぬほどの努力をして
やっぱり全てを完璧にこなしていく




僕にはヒョンの選択に口を出す権利はない
ただただ、ヒョンの成功と無事を願うばかりだ








それぞれの仕事を充実させていく中で
僕とヒョンはお互いの仕事場によく足を運んだ



僕はヒョンの舞台やステージは必ず見にいったし
ヒョンも僕のドラマの現場にたびたび足を運んだ
僕はどちらかというと周りに迷惑をかけたくないから、目立たないようにヒョンを見るようにしていたけど
ヒョンはいつも僕の周りのスタッフに挨拶回りをする



ったく・・・保護者じゃないんだから・・



僕はなんだか恥ずかしくって、ヒョンの袖をひっぱってそっという

「ねえ、ヒョン・・・そんなに周りに挨拶しなくていいよ・・」
「なんで?ちゃんとお前のことお願いしとかないと」
「・・・子供じゃないんだから・・・、それくらい自分でできるよ・・・」
「ダメだよ。お前は言葉が足りない時があるから」





痛いところをつかれた



そうなんだよな




親から「礼儀正しさ」を叩き込まれた僕は、正直「愛想」や「愛嬌」の振りまき方がよくわからない
それは相手に失礼にあたることじゃないかと思ってしまい、どうしても躊躇してしまう

「礼儀正しさ」だけでは、この世界は生きていけない
自分でもそう思うんだけど、どうもうまく振る舞えなくて、僕はよく誤解をされる



ヒョンは、そうやって僕のことをよくわかってくれている
僕に足りないものをいつもそうやって補ってくれる




ヒョンをそっと応援することしかできない僕は
どれくらいヒョンのことを助けられているんだろう・・・






僕とヒョンは、仕事が空いた時間は何かに急き立てられるようにレッスンをしていた

レッスン上ではいつもヒョンの激しい激が飛ぶ

言い返したくもなるし、くやしくて泣きそうな時もある
でも、最後に「お疲れ」といって手と手を合わすと
すべてのしがらみがぱっと消えてなくなるから不思議だ






でも-



ヒョンは最近、精力的に活動しながらも
ふと見ると
ひとりでじっと考え込んでいることが多くなっていた




そんなヒョンを見ていると、僕は少し不安を感じたりもする





また何かひとりで抱え込んでいるんじゃないか


またひとりで乗り越えようとしているんじゃないか





でも僕はこんな時でさえ素直になれず
そんなヒョンに何も言えずにいた





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「チャンミナ・・・」

「・・・ん~なに?」

いつものくつろぎタイムにヒョンが話しかけてくる


「ドラマ・・楽しいか?」

「ん~、ま、楽しいといえば楽しいよ。スタッフもいい人ばかりだし」

「いや・・・そうじゃなくて・・・演技っていう仕事自体が楽しいのかなって思って」

「あ~・・?まあ・・難しいけど・・やりがいいはあるかなって思う」

「・・そっか・・・」


「なに?急に・・・」

「いや・・・・・・うん・・・いいと思うよ」

「あ?」

「俺から見ても、ドラマのお前さ、結構いいと思うよ」

「・・何?なんか悪いもんでもくったか?あっなんか・・・・壊した?」


そんなんじゃないよ、と笑いながら、ヒョンはシャワールームへ向かう




変なの

なんなんだ

多分・・・褒められたんだとは思うけど

素直に喜べないのは・・・なんでだろう・・・






ヒョンは僕の個人レッスンにもよく顔を出す
アドバイスをくれる時もあれば、何も言わずにじっと見てるだけの時もある
その眼差しは、親父のような、兄貴のような
・・・・恋人のような・・・



僕は恥ずかしくてもうこなくていいよと何度も言ったけど
ヒョンは時間が空けば、僕のレッスンや現場を見に来ていた
恥ずかしいけど・・・
でも少しうれしいような・・・

僕はなんともいえない複雑な気持ちで、半ばあきらめたヒョンの挨拶回りを遠くから眺めていた







レッスンからの帰りの車の中で
ヒョンが運転をしながらつぶやいた



「お前・・・成長したな」
「あ?」
「ん・・・・なんか成長したなって思って」



また、いきなり変なことを言い出した
僕は助手席でオーディオをいじりながらふざけて返す



「・・・・まあね。いつのまにか事務所で1番でかくなってるしね」


ヒョンがそんなことを言ってるんじゃないってわかってるけど
なんか照れてしまってついそんな返ししかできなくなってしまう



けれどヒョンは真顔だった


「お前さ・・・」

「・・・?」

「・・・・・・いいや、なんでもない」

「なんだよ」

「ん・・・・いいんだいいんだ、本当になんでもない」




すごく気になった



最近ひとりで考え込んでいる姿とか
僕をやたらほめるところとか
言いかけてやめるところとか



なんだろう・・この何とも言えない胸のざわつきは




なんでもいって欲しいのに
もっと頼って欲しいのに
何かあるなら相談して欲しいのに





僕らは仕事に関することはなんでも言い合えるのに
肝心なところではいつも言葉が足りない


そう思っているのは 僕だけなのかな・・・








そして・・・僕は僕で考えていた



今お互いの仕事を充実させている意味



確かに自分のスキルアップや糧になっているのは事実だけど




その先に・・・何がある?




お互いの一人の仕事が充実すれば充実するほど
時としてお互いを遠く感じてしまうのはなぜだろう





運転しているヒョンの横顔を見る



こんなに近くにいるのに、すごくあなたを遠く感じるときがある



どうして僕はいつも言葉を飲み込んでしまうんだろう







そんな気持ちを抱えながらも

僕らは目の前にある仕事にただただ打ち込むしかなかったんだ 








Stand by U ~scene25~

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ヒョンは相変わらずひとりでじっと考え込むことが多くて

心配はしていたけど


前見たくお酒を飲んでいるわけじゃないし、どこへ行っているのかわからないわけでもないから
僕はそんなヒョンをただ黙ってみていることしかできなかった




ひとりでのスタジオレッスンが終わり
帰ろうとしていたところで、事務所のスタッフに呼び止められた


いろいろと雑談をしている中で、そういえば・・と切り出される


「お前、あの話、どうした?」

「あの話って?」

「舞台だよ。今度の事務所の公演」

「・・・・・?」




-なぜか胸騒ぎがした




「あれ?もしかしてまだ聞いてないのか?ユノが何度も話に来てるからてっきりお前ももう知ってるかと思ってたけど」

「何の・・・・ことですか?」



僕は自分の鼓動で胸が潰れてしまうかと思うくらいだった



「今度の公演でさ、お前とユノが出るかって話があってさ」


もうユノが上の連中と何度も話し合いをしてるんだけど・・・
なんでかあのユノがイマイチ消極的なんだよな。
てっきりお前ら2人で話し合ってるとばかり思ってたけど・・・・






そこから先の話はよく覚えていなかった






ここ最近、ヒョンが1人で考え込んでいる理由がやっとわかった


いろんなことが頭の中でぐるぐる回り
僕は激しく混乱していた



どうして?
どうしてヒョンは僕に何も言ってくれないんだ

そんな話、聞いてないよ


なんで?
なんで相談してくれないんだ

僕はそんなに頼りにならない?




-「ユノがイマイチ消極的」


スタッフの言葉がよみがえる




ヒョンが消極的・・・・
あんなにステージに立ちたいと願うヒョンが足踏みしている



なんで

どうして

僕と・・・だから・・・・?





このあと撮影が入ってなくて本当に良かった
僕は頭の中が混乱していて、とてもじゃないけど演技に集中できるような状態じゃなかった






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その夜

僕はどんなタイミングで話をしていいのか
どんな風に話をすればいいのかわからなくて
普段にも増して言葉数が少なくなっていた


そんな僕を変に思ったのか

「チャンミナ、なんか・・・あった?」

とヒョンの方から僕にたずねる


そんな風にいつも僕の変化にいち早く気付いて
誰よりも僕を理解しようとしてくれるくせに

どうして・・・・・






「聞いたよ・・・」

「んっ?何を?」

「事務所のスタッフから・・・今度の公演のこと・・」


ヒョンの動きが一瞬止まる


「僕たち2人でって・・話」

「・・・ん・・・そっか・・」

「そっかって・・・・知ってたんだろ」

「・・・・まあな・・・」

「なんで隠してんだよ」

「いや、別に隠してたわけじゃなくて・・・」

「隠してんだろ!なんで何もいってくんないんだよ!」


冷静さが売りの僕が
自分でもびっくりするくらい感情を露わにしていた



-「ユノがイマイチ消極的」

 スタッフの言葉がよみがえる




「いや・・・時期が来たらさ・・・」

「時期ってなんだよ。自分はもう上の連中と話してんだろ」

「それは・・・・・」

「僕は関係ないってか?」

「・・・・・チャンミナ・・そうじゃなくて・・」

「ひとことくらい相談があってもいいだろ!」

「だから・・それは・・」



「またなんでも自分ひとりで抱えんのかよ!」




自分でもびっくりするくらい大きな声が出た





ヒョンは・・・黙っていた

じっと一点を見つめて
次に言う言葉を考えあぐねているようだった



嘘が嫌いで直球勝負で
言いたいことはいつもストレートに言う

そんなヒョンが
今日は違う人に見える




僕はもう何も言えずにいた

くやしいのか悲しいのか
もう自分の感情も整理できないでいた



お互い気まずい沈黙の時間がただ流れていく



そうして

耐え切れなくなった僕は黙って自分の部屋へと入っていった




僕はどうしたいんだろう


何を求めているんだろう





次の日

僕は早朝からロケ地へ向かうことになっていた
今日から泊まりのロケになる


このままの状態で何日間かヒョンと離れる不安と

冷却期間をおいた方がいいと思う気持ちと


半々くらいで家を出る





マネージャーの車の窓から流れゆく景色を見つめる


夜明けが近かった

ヒョンは・・・眠れているんだろうか


そんなことを考えると
ヒョンを追い詰めてしまった自分がとても嫌になる

あの人を守りたいと思ったのに
あの人を支えたいと思ったのに
どうしてこんな風になってしまうんだろう





言って欲しい言葉

言わなければいけない言葉





僕らは世界中の誰よりも近い位置にいるけれど

心は誰よりも遠く遠く離れているようだった 



 




Stand by U ~scene26~

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撮影場所になっているこの島は
観光地としても有名なとても美しい島だ


美しい風景と澄んだ空気は
毎日せわしなくピリピリしている僕の心を、優しく癒してくれる


あんな風にヒョンと別れ、動揺していないといえば嘘だけど
僕は気持ちを切り替え、演技に集中しようと努力していた


僕が今頑張らなきゃいけないことは目の前にあるこの仕事
誠実に、一生懸命、後悔しないよう、周りに迷惑をかけないように


ヒョンが・・・僕に教えてくれたことだ



短い時間での強行スケジュールではあったが、撮影はとても順調に進んでいた


そんなとき



思いもよらない来客が現れた

「あれ~?もしかしてユノヒョン?」

スタッフが何やらざわついていた







-びっくりした





よく撮影現場にきていたし
この島にも1度は行ってみたいといっていたけど






まさか本当にくるとは・・・・





いつもの通り、スタッフと和やかに話をしているヒョンを見て
僕は本当に呆れてしまって・・・もう笑うしかなかった


そんな僕に気がつき、ヒョンが手を挙げて寄ってくる




「来るなっていったのに・・・・」
「いったっけ?そんなこと」

わざとらしくとぼけるヒョンがちょっと憎たらしくもあり、・・・・うれしくもあり・・・

「どうやってきたの?」
「フェリーだよ」
「フェリー?車は?」
「乗せてきたよ、もちろん」


あきれた
心底あきれた

そこまでしてくるか?普通


こう、と決めたら直球勝負のヒョン
この人らしいといえばこの人らしいけど・・・




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撮影現場からすぐの場所に海があり
ヒョンがここに来たら絶対に行きたかったんだといっていたから
撮影の空き時間を見つけて僕ら2人は海へ行くことにした



海に着くと、ちょうど水平線の彼方にまんまるの夕日が見えた
撮影が忙しく、こんな綺麗な景色を堪能することもなかった




「すっげ~いいところだな・・」

「・・・うん・・・」


ヒョンと僕は砂浜まで歩き
どちらからともなく岩場に座った


しばらく2人で雑談をした後で・・
ヒョンが静かに話し始める



「チャンミナ・・・」

「・・・ん?」

「お前を・・・傷つけたとしたら・・・ゴメン」



さっきは何も言わなかったけど・・あの夜のやり取りをお互いずっと気にしていたのがわかる



僕とヒョンはお互い海をじっと見ていた



「俺さ・・・・・」

「・・・ん・・・」

「ずっと考えてたんだ・・」

「・・・・・」

「俺ら2人にとって、何が1番最善の道か、って」




少し間をおいてから・・
ヒョンが堰を切ったように話しだした




「俺は・・・もちろんステージに立ちたい

ステージで生きたいし、ステージで死にたい

こんな風になって・・もうずっと悩んで、考えて・・・最終的にやっぱりそこに行き着いた」


僕は小さく頷く


「俺がさ・・2人で出る舞台のこと、お前になかなか話せなかったのはさ・・・」



「・・・俺の夢に・・・俺の夢にお前を巻き込んじゃっていいのかなって・・・そう思ってたんだ」




-夕日が・・・ゆっくりと海へ沈んでいく




「お前はさ、才能あるよ、いろんな面で・・・賢いしさ。
ここ最近のお前を見ていて・・・・ダンスや歌の成長はもちろんだけど、演技の方だって楽しそうにやってる


・・・もしかしたらさ


お前はソロの方がうまくいくんじゃないかって

その方がお前の才能を十分発揮できるんじゃないかって

そう・・・思ってたんだ・・・」




知らなかった・・・
ヒョンがそんな風に僕を見てたなんて・・・





「でも・・・」


ヒョンが立ち上がって、大きく息を吸った


「よく聞けよ、これはあくまでも俺一人の気持ちだからな」


ヒョンは沈みゆく夕日を見ていた
僕からはヒョンの顔は見えなかったけど
その声から何か強いものを感じる



「俺は・・・グループを守りたい」



「ユノユンホ単独の仕事もして、それはそれですごく俺にとっては充実していたんだけど・・・俺はやっぱり東方神起っていうグループそのものが大事なんだ


俺のこれまでの人生のすべてをかけてきたし、ここからの人生すべてをかけたいと思ってる


ここまで愛されるグループになって、多分・・今も俺らを待って、愛していてくれる人たちもいるんじゃないかって思う


俺は・・今あらためてこの名が誇りだって自分の中で再確認したんだ」




ヒョンは・・・ここまでいうと・・言葉を止めた



「チャンミナ」

ヒョンが振り向いて僕の名を呼ぶ


「俺は、自分の夢のためにも、自分を待っていてくれる人たちのためにも、守りたいんだ、この名前を」


-お前と一緒に



ヒョンが僕の目をまっすぐ見て言った




「お前と2人で、守りたいんだ」




太陽が水平線の彼方へ沈んだ
水面には、わずかに残った光が、ゆらゆらと揺らめいていた









「なんで・・・それをそのまま僕に言ってくれなかったの?」

ヒョンは・・少しうつむく

「・・・俺の中で迷っているものを・・・お前にぶつけたところで混乱させるだけだと思ったから・・・」

-僕は

「僕は・・例え混乱したとしても・・言って欲しかった」

「・・・ん・・・・・」

「一緒に・・・ヒョンと一緒に迷いたいし、悩みたいし・・・」

不安や恐怖を共有したいし、一緒にそれを乗り越えていきたい

「メンバーって・・・・そうあるべきだろ?」

「・・・そうだな・・・悪かった・・・」




そこまで言うと・・僕らのあいだには沈黙が続き
波の音だけが絶えず聞こえる





「もう・・もどらなきゃ」


撮影がまだ残っていた
立ち上がって歩き出そうとする僕を、ヒョンが思いのほか大きな声ではっきりと呼ぶ


「チャンミナ」


まっすぐ、あの人らしいまっすぐな目で僕を見る



「ついてきて欲しい」


-まっすぐ 揺るぎなく



「それを言うために・・ここまで来たんだ」






僕は・・・何も言えずにいた


そこまでいろんなことを考えていてくれたヒョン

そんなことも知らず、バカみたいにイラついていた僕



僕は・・・やっぱり未熟だ






くやしいのか悲しいのか・・・
泣きたくなる気持ちを精一杯我慢して


ヒョンを残し、僕は現場へといそいだ










Stand by U ~scene27~

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その夜はスタッフ、共演者、そしてヒョンも一緒に
みんなで夕飯を囲んだ


ヒョンは相変わらずサービス精神旺盛で
しゃべるわ食べるわ笑うわで、一気に場が和み、盛り上がった


「・・・・・だよなあ。チャンミナ?」

「・・・えっ?・・あっ?えっと・・・なに?」

僕はぼーっとしていて、ヒョンの言葉を何も聞いていなかった

「この子、いつもこうなんですよ。俺の方が年上なのに全然俺の話を聞かない」


みんながそれに笑う
僕もちょっと照れながら笑う

時々みんなの会話に相槌をうちながらも・・・僕はさっきのヒョンとの会話をずっと頭の中で考えいた





「ユノさん・・・今日は泊まっていくでしょう?」
「えっああ・・まあ・・」
「部屋がさ・・小さなところなんで・・もういっぱいなんですよ」
「あっ・・別に俺はチャンミンの部屋に行くからいいですよ。同じ家に住んでんだから」
「そっか~そうですよね~」



そっか~そうですよね~




あっけないくらいに簡単に納得するスタッフたち
そりゃそうなんだけど・・・




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「ふう~くったくった」
部屋に着くなりベッドに大の字に寝っ転がるヒョン

「あんまりちらかすなよ」
僕は荷物の整理をしながら明日の準備をする

「わかってるって~」


絶対わかってない、この男は






なんだか不思議だった
一緒に住んでいるのに、環境が変わるだけでなぜかすごく新鮮だった



そういえば最近はひとりの仕事ばかりで、同じホテルに泊まるなんて久しぶりだもんな・・・



「ヒョンは、そっちのソファーで寝ろよ」
「え~っ?なんで?ジャンケンで決めようぜ~」
「なんでだよ!もともとここは僕の部屋なんだからな」
「お前、年上にベッドを譲らないのか!!」




そんなやりとりをしながら

ふっと、僕もヒョンも笑ってしまう



多分・・・・・同じことを考えている





「昔・・・・よくベッドの取り合いしたな・・・」
「・・・うん・・・・」
「あんなことでバカみたいに盛り上がって・・マジになって・・・」
「・・・・うん・・・」
「お前・・・本気でマネージャーに言いつけに行こうとした時、あったろ」
「ヒョンだって・・マジになって部屋でてったときあったじゃん」



お互いに言い合ってゲラゲラ笑う



こんな風に・・・あの頃を笑えるようになったんだ・・・・



今思うと・・・あの頃は、本当に修学旅行みたいだった
殺人的なスケジュールの中、僕らに残されたほんのわずかなプライベートな時間



つい・・・この間の話しだったように思えるし
もう何十年も前の話しだったようにも思える




あれから・・・・いろんなことが変わった・・




でも、僕とヒョンは
何も変わらず同じ場所にいる





久しぶりに僕とヒョンはいろいろな話をした
オフの旅行にきているかのようなテンションで、2人して大笑いしながら夜を過ごした




気づくと日付はとっくに変わり・・・・
でも不思議と全然眠くなくて・・


「明日も撮影だろ?早く寝たほうがよかったのにな・・」
「あ・・まあ僕の分は結構遅い時間からだから・・大丈夫だよ」
「でもちょっとは寝たほうがいいよな」


そういうとヒョンは約束通り?ソファーに横になって電気を消す


「おやすみ」

「ん・・・おやすみ・・・」






・・・とはいったものの・・・僕は全然眠れなかった




いろんなことを考えていた

いろんなことを思い出していた




昔のこと、今のこと、未来のこと


・・・夕方の・・ヒョンの話







「・・・ヒョン・・・」
「・・・ん?」
「起きてる?」
「・・・ん・・・」
「なんか・・・やっぱり眠れなくて・・・」
「実は・・・俺も・・・」



外はまだ真っ暗だったけど
もう夜明けは近かった





「チャンミナ、さっき行った海、もう一度見に行かない?」
「えっ?今から?」

ヒョンの唐突な誘いに面食らう


「うん、今から。まだ間にあうよな、日の出」


そりゃあ間に合うだろうけど・・


「太陽が昇る時の海、見たことあるか?」
「ないけど・・・」
「すっげ~感動するよ」
「ヒョン、見たことあるの?」
「あるよ・・何度も・・・」



いつ?って聞こうと思ったけど・・なんとなくその言葉を飲み込む



「よし!行こう!支度しろよ!」

いつもの通り、こう、と決めたら即行動のヒョン
全くこの人は・・・


でもなんだかんだいって・・・結局僕もその気になっていた








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夜明けの海はまだ薄暗くて肌寒くて
でも少しずつ明るくなっている遠くの空は、本当に美しかった



「今日も・・晴れるな」
「・・・うん・・」
「チャンミナ・・・寒くないか?」
「ん・・・厚着してきて正解」
「よかった。こんなとこで風邪ひかれたら、周りのスタッフに申し訳ないからな・・」



いつだって周囲を気にかけるヒョン
だから・・・人より余計に傷つくんだ




「俺さ・・・」

海を見ながら、ヒョンが話し始める

「迷って・・不安で・・・どうしようもなくなった時・・よくひとりで海にいったんだ

・・・太陽が昇るの見ながらさ

なんでこうなっちゃったんだ
どうして俺は何もできなかったんだって

そんなことばっかり考えてて・・・」



ヒョンが荒れていた時期・・・
そんな風にして・・・ひとりで過ごしていたんだ・・・




「でも・・ある時さ、”今大事なものを見失うな”って言われて・・・

気づいたんだよ

俺にとって1番大切なものがなんなのか・・」





その時

ひとすじの光が・・水面を反射する




「ほらほら!チャンミナ、見ろよ!すげ~だろ!綺麗だろ!」



ヒョンが興奮しながら水平線から少しずつ頭を出す太陽を指さす



キラキラと乱反射する光





本当だ・・・

言葉にできないくらい・・本当にきれいだ



僕は昇りゆく太陽に、畏敬の念すら抱いていた







「ヒョン・・・」

「ん?」


「・・・来てくれて・・・ありがと・・」


ヒョンが僕を見つめる



「うまく・・・言えないけどさ・・・・」



僕は恥ずかしくなって・・・うつむいてしまう



「僕は・・・・いつもヒョンたちのうしろで・・・できるだけうまく振舞おうってそればかり考えてた」


「・・・ん・・・」


「だから・・・無我夢中でここまでやってきて・・・その瞬間頑張るので精一杯で・・・」


「ん・・・」



「だから・・ヒョンみたく先のことがはっきり見えてなかったんだ」



「・・ん・・・」




-でも



「でも、僕は僕なりにこの仕事に楽しみを見い出してるし・・・・ヒョンを見ていて・・・僕ももっと頑張りたいって・・・心から思えるようになったんだ」




ヒョンが・・・本当に優しい目で・・僕を見つめる






-僕は



「僕も・・・どこまで行けるか・・・やってみたい」



顔を上げ、ヒョンの目をまっすぐ見て、はっきりと言った



「ヒョンと一緒に・・・僕が・・僕たち2人がどこまで行けるか」






-これが、ヒョンの思いに対する僕なりの答えだった







明るく輝く海と空を背に

ヒョンは少し笑って・・僕に軽く片手をあげる

僕も、ヒョンのその手に自分の手を合わす


お互いしっかり握って

肩と肩をぶつけて


ヒョンが僕を引き寄せ、抱きしめた



-背中を・・トントン




「ありがとう、チャンミナ・・・」







その時


初めて心に引っかかっていたものが、すべて取り除かれた気がした


頑なだった僕の心が


ゆっくりと、とかされていくような気がした








「太陽はさ・・・誰にでも平等に新しい1日を与えてくれるんだって」

「へえ・・・それ聖書にでも書いてあんの?」

「ちがうよ。ユノ語録」

「なんだそれ」



お互いふっと笑い合う





でも、本当にその通りだと思う


僕らの未来には、なんの確証もないけど



それでも与えられたこの新しい1日を


ヒョンと2人で歩きだそうと思うんだ




僕らの道を


信じて歩こうと思うんだ






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from scene19 to 22



Stand by U ~scene19~
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ヒョンが、少し変わった



お酒が入った状態で帰ってくることが少なくなった
変な時間に帰ってくることもほとんどない
家でも、あまり飲んでいる形跡はない

もちろん僕が飲んでいれば隣で少し飲んだりもする
でも僕のビールを一口二口もらうだけだ

「だったら飲めばいいじゃん」と僕が言うと
「この二口くらいがちょうどうまいって感じるんだよ」
とわけのわからない理論を自信有りげに言う



でも、何かに向けてヒョンが歩きだしたのはわかる




夢の人の夢の舞台

ヒョンが迷っていたのは知っていたけど、あの夜、ヒョンは僕に挑戦することを宣言した
相談、というより、宣言。決意表明。



僕は・・・正直・・複雑だった



ヒョンが、例えようもない大きなものを背負って下した決断であることが想像できたから


だから
がんばって、とか、応援するよ、とか
そんな軽い言葉では片付けられなかった

僕らは十分すぎるほど傷ついてきた



ただただ、僕は心から願うだけだ

どうかそのステージが成功しますように




この人はステージで輝く人だ

ステージの上で生きて、死ねる人だ




もちろん、僕たちの未来になんの確証もないけど
ヒョンが暗闇のトンネルから一歩を踏み出してくれる


この一歩が 僕らの未来に少し光を見い出してくれる

ヒョンがレッスンに打ち込む姿を見ていると
そんな気がしていた




僕はといえばどうだろう

相変わらずの引きこもり生活を送っていたが
少しずつ少しずつ、何かに向けて歩き出さなければならないことはわかっていた



早朝の誰もいないレッスン場
夜中の、静まり返ったレッスン場


他の仲間のスケジュールがない時間しかレッスン場が使えないから、どうしてもそんな時間になってしまう
少し前までは、考えられないことだった


僕とヒョンだけのレッスン場
靴と床のこすれる「キュっ」と言う音が鳴り響く


僕とヒョンの間には、なんの会話もない
ただ汗だくになりながら、振りの確認を淡々とするだけ
でも言葉はなくても、僕とヒョンはこの積み重ねていく日々が未来へ続くと信じるしかなかった


一緒に積み重ねていく時間が
一緒に乗り越えていく時間が
僕らには何より必要だった


ひとりきりだったら、とうに耐えられなかっただろう





そんな中で、僕は時間を見つけて彼女と会っていた
会うことに断る理由もなく、会えばあったで楽しい時間を過ごせる


けれど
ステージにかけるヒョンの姿を見ていると、僕はとても複雑な気持ちになっていた


このままでいいのだろうか
僕は自分の心に正直に生きているのだろうか



彼女を大切にできるのか
彼女のそばにいてあげられるのか

彼女のことを愛しているのか


僕はいろんなことが複雑に絡まった現実に、自分の気持ちを整理できないでいた






そして、ヒョンが仕事のために渡米した


自分一人残った部屋が、とてつもなく大きく感じる
5人が2人になり、少しずつヒョンと2人で埋めていった空間
お互い別々の仕事が入っていても、必ず帰るところはここだった


僕は不思議だった


あんなに苦手だった他人との共同生活が、今や僕の1番落ち着ける場所になっている
今はヒョンと過ごすこの家が、僕の帰る場所だった


ヒョンがいることが当たり前のリビング
互いのシャワーを浴びる音
一緒に見るTV
最後には喧嘩になる対戦ゲーム


出しっぱなしのペットボトルを片付けて
開けっ放しのペットボトルの蓋を閉め
ヒョンが散らかしたゴミを片付け
そこらじゅうにある洗濯物を集めてまわす


イライラすることも多いけど
喧嘩になることもあるけれど
いつもヒョンが変わらずそばにいてくれる
だたそれだけで、僕はどれだけ心強かっただろう

どれだけ救われただろう




ヒョンのいない部屋
ヒョンのいない時間



こんなにも心に穴があいたように感じるものなのか

この気持ちをなんて表現すればいいんだろう





僕はヒョンが散らかした洗濯物や漫画を片付けながら


遠い異国の地で頑張っているヒョンに
静かな思いを馳せていた








Stand by U ~scene20~
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帰ってきてからのヒョンは、僕から見ても呆れるくらいレッスンに励んだ

その集中力と忍耐力はもう神がかり的だった
声をかけることすらためらわれる


でも家に帰ればいつものヒョンだ
だらしないところは相変わらずだし
僕と2人のときはとてもリラックスしているように見えた


ステージではカリスマなヒョン
どんな難しい振りでも完璧にこなす

そんなヒョンでも、やはり今回ばかりはプレッシャーが違ったようだった


「チャンミナ」

「あ?」


だいたいヒョンが何かを言う時はシャワーのあとだ
それぞれ忙しくて、滅多に家でゆっくりする時間はないのだから、どうしても寝る前のその時間になってしまう
そして大抵僕がゲームかPCをしているときだ
僕にしたってその時間しかそんなことできやしない



「前日のリハさ・・」

いつも通り頭を乾かしながらヒョンが言う


「見にこられる?」



意外だった

リハを見に来て欲しいなんて、今までヒョンの口から聞いたことがなかった


それだけ、ヒョンもこのステージにプレッシャーを感じていることがわかる
僕は正直すごく嬉しかった
えらそうなことは言えないけど、僕が見ることで少しでもヒョンの役に立てるなら


でも・・・


「ん・・・何時から?」

「まあ・・多分1日通してやってると思うんだけど」

「そっか・・・・」

「仕事?」

「ん・・・・いや・・・・・」

「あ・・・約束?」

「あ・・・ああ・・・うん・・・」

「それだったらいいよ。もちろんそっち優先しろよ」




ヒョンも僕の歯切れの悪さで、なんの約束かは想像できたようだ

もしいつもの仲間でつるむのなら僕はすぐに言うし
もしいつもの仲間なら・・・
当然、ヒョンを優先した




彼女と、先日喧嘩をした
喧嘩、といっても言い合いをしたわけではない
煮え切らない僕の態度で彼女を傷つけたことはわかっていた

ちょうどヒョンのステージの前日が僕らの記念日にあたっていて
彼女がどうしてもその日は空けておいて欲しいと言っていた

彼女を傷つけたくない
彼女は何も悪くない
悪いのは僕だ




「でも・・・もしいけそうなら・・・・」

「あっいいいい、うそだようそ。暇そうにしてたらって思ってさ」

「・・ん・・・」

「なんだよ。当たり前だろ。そっち大事にしてあげろよ」




この複雑な想いはなんなんだろう

当たり前だろ?彼女を優先するなんて




でも・・・・





一体僕はどうしたいんだろう










ヒョンは文字通り、血の滲むような努力をして

僕から見ても「やりすぎだろう」って心配になるくらい

でも誰も止めることはできなくて






そうしてステージの前日を迎えた






ヒョンは昨日も日付が変わった頃に帰ってきて、そのまま倒れこむように寝てしまった


朝起きたヒョンは・・
気のせいか少し調子が悪そうに見えた
どっちかというとステージが近づくとテンションがあがって、人を寄せ付けないような気合オーラがみなぎる人なんだけど

なんだか少し・・・ちがう


「ヒョン・・・」

「ん・・・」

「・・・大丈夫?」

「ん?なにが?」

「いや・・・なんか・・」


いつも通りにネットを見ながらコーヒーを飲むヒョンを見て、これ以上の言葉を失う
口に出すと本当になりそうだから、僕はそのことには触れなかった



「今日は帰ってくるんでしょ?」

「ああ・・・多分・・・遅くなると思うけど」

「そっか・・・」

「お前も遅いんだろ?」



・・・なんだよ、その言い方

僕はなぜか少しムッとして何も答えなかった



「じゃ、いくわ」

マネージャーの車が迎えに来て、ヒョンがでかける

「あ・・・ヒョン・・・」

「ん?」

「・・・・あまり・・・無理しないで・・・」


この人に言っても100%無駄な言葉だけど、それでもなぜか今日のヒョンには言いたかった

ヒョンはにやりと笑って親指を立てた

僕はヒョンの後ろ姿を見送りながら、なぜか気持ちが落ち着かずにいた







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彼女との約束の時間が近づき、僕は車を走らせていた
もうすぐ会えるっていうのに、僕が考えているのはリハのヒョン

そのステージ自体にももちろん興味がある

最高のスタッフ、最高のダンサー、最高のバンド
どんなふうにアレンジされて、どんなふうな舞台になるのか

やっぱり自分も舞台人だな
色気もへったくれもあったもんじゃない





そんなとき


ふと携帯にメールの着信が入った
僕は車を側道に止め、メールを確認した

ヒョンのマネージャーからだった








「ユノが倒れた」








その文字を見た瞬間、心臓がおかしくなったんじゃないかと思うくらい早鐘を打った

画面をスクロールする指が震える








「もう病院だしスタッフもいるから大丈夫だけど、いちおう一晩入院することになると思うから、チャンミンに伝えておこうと思って」









だからいわんこっちゃない

だから無理すんなっていったんだ

いつだってそうだ





僕は気が動転していて、何をどうしていいかわからなかった





行かなきゃ

ヒョンのところに行かなきゃ

事務所のスタッフもいる
もちろん病院のスタッフもいる
僕が行かなくったって大丈夫なことはわかっている


でも

僕が行かなきゃ





僕は焦る気持ちをどうにかおさえて、今自分がするべきことを整理する


-彼女


何ヶ月も前からこの日を待っていた
いつも我慢ばかりさせていた
いつも僕を支えてくれるのに、僕は何もしてあげられない


でも

僕はヒョンのそばに行かなきゃ


僕の意思で
僕の嘘のない正直な心で
僕は今すぐにヒョンのそばに行きたかった




「ごめん・・どうしても・・ダメなんだ」




言い訳すら見当たらない
彼女を傷つけない、うまい言葉すら見つからない
僕はそれだけいうのが精一杯だった



「わかった」



彼女も何か感じるものがあったのか
本当に短い電話で終わる



ヒョンのことを言っても良かった
今の状況をよく知っている彼女だから、それは理解してくれただろう

でも、違う気がした
ヒョンのことを持ち出すのも違う気がしたし、それを言ってわかってもらうのも違う気がした

これ以上彼女を傷つけたくない
その場限りの言い訳は、もっと傷つけるだけだ









早く、一刻も早くヒョンに会いたい



僕しかいないんだ

ヒョンを理解し、支えられるのは僕しかいないんだ




どこをどう曲がったのかすら覚えていない
信号で止まったのかすらあやうい



僕はヒョンのマネージャーが教えてくれた病院に

ただひたすらに車を走らせていた








Stand by U ~scene21~

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病院につくと、ヒョンは点滴をして眠っていた


青白い顔
ここ何ヶ月かでこけた頬
目の下の傷が余計に痛々しく見える




どこまでこの人は自分を追い込むんだろう






事務所のスタッフは、明日の公演についていろいろ調整をしていた
ヒョンを目当てで見に来てくれるファンもたくさんいる
でもヒョンの今の状態は思ったより重症みたいだった


まさか中止?延期?


それだけは避けたかった
無責任って思われるかもしれないけど、僕にはヒョンの気持ちがわかる
ステージに穴を開けるほど、あの人にとって屈辱的なことはない



例えステージの上で死のうと、あの人はステージにあがる



「あの・・・・」

僕はマネージャーにはっきりといった

「ヒョンは・・・大丈夫です。絶対やりきりますから」








誰もいない薄暗い病室で、僕はヒョンのベッドサイドに座っていた



「・・・チャンミナ・・・」



目が覚めたヒョンが、まだうつろな様子で僕の名を呼ぶ



僕は黙ってヒョンを見つめる


だんだんと意識がはっきりして、ヒョンは自分のおかれた状況を理解したみたいだった



大丈夫じゃないのなんてわかりきってるから「大丈夫?」なんて言えない

医者は「絶対安静」っていってたけど、そんなこと言えるわけがない



だから僕は黙ってヒョンを見つめるだけだった






「・・・知らせなくていいっていったのに・・・」

ヒョンが独り言のようにつぶやく

「そんなことしたら、あとで半殺しだよ」

本気とも冗談とも言えない僕の言葉に、少しだけヒョンが笑った





「今日は・・・・」

「仕事はオフだよ」

「いや・・・・ちがう・・・お前・・・・」

ヒョンがいおうとしていることはなんとなくわかった



「・・・・いいんだ、もう・・・」


僕はヒョンの点滴が一滴一滴落ちるのを確認して、そして静かにいった




「多分・・・終わったんだ・・・・」



ヒョンは一瞬僕の顔をみたけれど、そのことには何も触れずに、また天井を向いて目を閉じた





「明日・・・死んでも出るんだろ?」

「・・・当たり前だ・・」

強気な発言の割に、身体は本当につらそうだ



「一晩、僕がここにいるから」



てっきり帰れと言われるかと思ったけど、ヒョンは何も言わず黙っていた



ヒョンのマネージャーには心配いらないから帰れと言われたけど、僕はてこでも動かないつもりだった






薬が効いているのか、ヒョンはぐっすり眠っていた
もう何日も眠っていなかったかのように


多分・・・そうなんだろうな


僕が眠れないときは、眠りにつくまでずっとそばにいてくれる
でも、ヒョンがそんな弱気なことを言ったことはない


いつもいつでも、なんでもひとりで抱え込み、ひとりで戦う



もっと頼って欲しい、なんて言えない
そんなこと言わなくっても、ヒョンから頼られる男にならないと




僕は点滴が終わりそうになったら看護婦を呼び
多分限界が来ているであろうヒョンの足をマッサージしながら
いま自分にできる精一杯のサポートをしようと思った





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そうしているうちにだんだんと夜明けが近づいてきた


僕はうつらうつらしてはヒョンの様子をみていたけど、いつのまにか椅子に座ったままベッドにうつ伏せの姿勢で寝てしまっていた



ふと、自分の髪にヒョンの手が置かれているのに気がつく

ヒョンはいつのまにか目を覚ましていた



「・・・どう?」


「ん・・・大丈夫」



僕に触れる手がかなり熱い
どうみたって大丈夫には見えないけど、大丈夫じゃなくても大丈夫という男だ



「チャンミナ・・・」


「・・・・ん・・?」


「・・・・ありがと・・・」



「・・・僕は・・・何もしてないよ・・・」




僕がそう答えると、ヒョンはベッドから上半身をゆっくり起こし、僕の顔を覗き込みながら優しく言った



「ほんとに・・・そう思ってる?」




僕は何も言えず、黙ってうつむいた



「なんも・・・わかってねーな・・・」



ヒョンがふっと鼻で笑う



「じゃあ・・・なんかしてよ」




お互い目が合う




ヒョンは目が潤んでいて、トロンとしていて、まだかなり調子が悪そうだ





僕は、この人を支えたい


この人の力になりたい




-心から、そう思った




僕は・・・この人が好きだ





僕は意識が朦朧としているであろうヒョンに


自分から


そっと


・・・・・・キスをした









Stand by U ~scene22~

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本当は絶対安静なんだけど
もちろんそんなことをいっていられるはずもなく
ヒョンはギリギリまで点滴治療を受けてリハに臨んだ


その集中力はすさまじいものだった 


本当は立ってるだけでもつらいはずなのに




本番前、ヒョンは驚異的な精神力で、もう「ユノ・ユンホ」のスイッチがはいっていた
舞台裏でスタッフ全員に声をかけ、気合を入れる。


どこまでもリーダーだな


少し前には僕もここにいたのに、この緊張した空気感をなつかしく感じてしまう


リハ、スタッフ、楽屋、衣装、メイク室・・・・



僕も、ここにいたはずなんだ


僕も・・・・ここにいるはずなんだ




そういえば、今までは当たり前のようにヒョンと同じステージの上にいた。
だからステージに行くお互いに「がんばって」なんて声をかけたこともない



僕はステージへとあがるヒョンにあらためてかける言葉が見つからなかった




でも、僕たちはお互いなんとなくわかっていた
僕は自分もステージに上がるような気分でいたし、ステージに上がるヒョンの気持ちが痛いほど伝わる



ヒョンはいろんなスタッフに声をかけている中、僕を探していた



自意識過剰かな



でも僕にはわかるんだ





スタッフをかきわけ、ヒョンと目が合う



約束したわけでもない

打ち合わせしたわけでもない



でも自然に

僕とヒョンは手と手を合わせていた


そこに言葉なんていらない
そこから僕の気が伝わり、ヒョンの気が伝わるんだ




離れていたって、僕らの心はつながっている









僕はバックステージでもVIP席でもなく、一般席から見ようと決めていた
ステージ全体をみよう
オーディエンスとの一体感をみよう
ヒョンの作り上げるステージ全部を見るんだ



僕は敬虔なクリスチャンではないけれど
でも、今日ばかりは神様に祈らずにはいられなかった




どうか
どうかあの人を最後までステージに立たせてください





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ステージは、圧巻だった



体調の悪さなんて微塵も感じさせない




なぜこの人はこんなにも人を魅了するのだろう



ひとつひとつのステップ、指先の動き、視線、表情、歌声、観客の煽り方
何もかもが

誰も真似できない、誰の真似でもない




ヒョンを綺麗だと思った

余計な言葉もなく
ただ真っ直ぐに
なんて綺麗なんだろうと



ああ・・この人は、やっぱりステージで生きる人だ
ステージの上がこの人の生きる場なんだ




僕は・・・僕は強く思った


「ステージに立ちたい」


この人のそばで
この人のとなりで



それに見合う男になりたい

負けないような男になりたい



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初日の舞台を終え、ヒョンはすぐに病院に運ばれた
ステージから幕に下がったと同時くらいに意識を失っていた


僕はもう心の準備ができていたので、冷静に対応出来たと思う
ヒョンは明日の最終日に備え、入院して点滴治療を続けながら体力の回復を待つことになった


ヒョンは薬で眠っていた
その寝顔を見ながら、僕は今日のステージを思い返していた






ヒョンを・・最後までステージに立たせてくれて、ありがとう


ステージの神様に、感謝しなくちゃな




僕はギリギリまで病室にいて、夜明け頃仕事のために家に戻ることにした



大丈夫
ヒョンは大丈夫だ






最終日は僕は仕事で行けなかったけれど、初日よりだいぶ体調もよく、最高のステージだったとヒョンのマネージャーから聞いた


一緒に共演したスタッフとの打ち上げにも参加でき、ヒョンにとっては最高の日になっただろう








「カチャリ」

ドアの開く音がする
「ユノ、お疲れ。ゆっくり休めよ」
ヒョンのマネージャの声が聞こえた




「ただいま」

リビングに来て、ソファーでPCをしている僕にヒョンが話かける


「今日はまだ起きてんの?って言わないの?」

「ん・・・多分待ってると思った」


なんだよ、それ。
どこから来るんだよ、その変な自信。


「なんか飲む?」

「ん・・水くれる?飲めないビール思いっきり飲まされたよ・・・」

「そっか・・・」


僕は冷蔵庫を開け、冷たい水をグラスにそそぐ
ヒョンはその水を一気に飲んでいた


「楽しかった?」

「ん・・・そうだね」


やっぱりまだ完全に回復はしていないんだろう
ヒョンはソファーにどかっと座り、天を仰いでいた



「ヒョン・・・」

「・・・ん?・・・」

「・・・・お疲れ様」

「・・・ん・・・ありがと・・チャンミナもな・・・」

「・・・僕は何も・・・・」



どこかで言ったセリフだな・・・なんて考えていたら
その時のことを急に思い出して顔が赤くなる




それ以上言葉も続かず、僕はPCを続け、ヒョンは・・・・そのまま寝ちゃいそうだった



「・・ヒョン・・・」

「・・・・・」

「ヒョン?」

「・・・・」


寝ちゃったのかな
目を閉じたまま微動だにしない


「ヒョン・・」



寝ててもいいや




「僕は・・・正直・・・くやしかった・・・」


「僕も・・・・頑張らないと・・・」



それだけ言って、僕がPCを閉じてソファーから立とうとしたとき
不意に腕を掴まれた



「・・・起きてたの・・?」



ヒョンはそれには何も答えず、立ち上がって僕の髪をくしゃっとした



それは
「十分だよ」にもとれたし
「がんばれよ」にもとれた



「・・・シャワー浴びてくる」



シャワールームへ向かうヒョンを後ろに感じながら
僕は泣きそうになっていた




立ち止まってばかりいちゃいけない

僕も歩き出さないと



ヒョンの歩き出した一歩を

一緒に踏み出すんだ






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シアワセ色の花 ~from scene1 to 3~

シアワセ色の花 ~scene1~

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地下鉄の路線図を眺めていた
色とりどりの線が、蜘蛛の巣のように張り巡らされている



考えてみれば、故郷から出てきて以来、地下鉄に乗ったのなんて練習生時代のわずかな時間だけだ
それも寮から2,3駅離れたところぐらい
「世界に羽ばたく」なんて言われたものの、俺の知っている世界なんて実は半径10km圏内だったのかもしれない

なんだかおかしくなって自嘲気味に笑う





どこへ行こうか

時間はたっぷりある




そうか・・・・地下鉄にのるまでもない

歩こう

クタクタになるまで

何も考えず













そうして俺は歩くようになった

何日も何日も



行ったこともないところへ

俺の知らないところへ

俺のことを知らない人々のところへ







いろいろなところを歩いた


そのほとんどにおいて、俺は過去を思い出していた

小さい頃のこと
家族で言った旅行のこと
小学生の頃のこと
好きだった女の子のこと
昔の彼女のこと




そうすると不思議と少し心が安定する



俺は幸せだった
愛されていたし、輝いていた
俺の幸せは俺中心にまわっていた
その幸せは、永遠に続くと思っていた






でも、立ち止まり、ふと現実の動く日常が次々に目に入ってくると
瞬間的にどうしようもない不安が襲ってくる
ステージの上でも感じたことのない、嫌な緊張感、いやな汗


逃げたい
ここから逃げたい


真っ向勝負の俺が、はじめて逃げたいと思った現実


でもそんなことできやしない



どうして?
責任感?未練?愛着?恐怖?
もうこんな風になってしまってリーダーも何もないだろう



考え始めると、震えるほどの恐怖が襲ってくる




そしてまた、俺はアルコールに逃げる

なんの解決にならないことがわかっていても
一時的にでもこの恐怖から逃げられるのなら
俺にとっては必要なシェルターだった









-あの夜



自分でも飲みすぎだと思った
でも酒に強くもない俺が
飲んでも飲んでも不思議と意識がはっきりしていた

あいつには見るなといっておきながら
TVで、ネットで、雑誌で、あらゆるメディアからの情報をチェックしていた
「どんな批判も甘んじて受け入れよう」
そう覚悟を決めていたけど

現実はそんな甘いもんじゃなかった







誰かに聞きたかった

 -俺は愛されているのか

誰かに答えて欲しかった






チャンミン・・・お前を傷つけた

こんな現実の中で、お前が唯一の希望だった
お前だけは何があっても守る
そう決めていた


それなのに
自分自身の正気さえあやうくなる現実
愛される自信がなくなる現実
愛を・・・求めてしまう現実


嫉妬だったのか?
お前への?彼女への?
誰かの愛を欲しかったのか?




俺は自分のしたことをはっきりと覚えていた



お前の愛が欲しかったんだ



-でもそれは間違っている




自分の気持ちを抑えるため、俺は覚えていないと嘘をついた
してしまった現実が、君を傷つけたと思った
これ以上、君を傷つけてどうする?



何やってんだ


しっかりしろよ

 


堂々巡りの毎日
逃げ場のない現実
終わることのない夜




そして俺は歩く

何かに向かうように
何かから逃げるように







-気づくと
 空気の匂いや風の質感が変わっていた




-海だ


 俺はとうとう海の近くまで来ていた








シアワセ色の花 ~scene2~

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海にきたのは久しぶりだった


もちろん、撮影では何度も訪れていた
でもたったひとりで、というのは・・・もしかしたら初めてかもしれない


美しい外国の海にも数え切れないくらい行った
でもあの頃は、いつもみんな妙にはしゃぎすぎてしまって
ゆっくり景色を満喫することなんかなかった気がする


海はどこだって変わらない
優しく、おだやかに、そして強く、全てを迎え入れてくれる



久しぶりに、周りを何も気にせず自分に戻れた気がした





ジョギングをしている人
犬を連れて散歩をしている人




当たり前のような日常がそこにある
朝おきて、ご飯を食べて、ある人は学校へ行き、ある人は勤めに出る
家族のために食事を作ったり、洗濯、掃除をし、お腹を空かせて帰ってくる家族のために、また気がつくと食事の準備をする・・・・


ささいなことに腹を立て
ささいなことに喜び
ささいなことに幸せを感じ
時には涙する


そして皆、自分の帰るべき場所へと帰っていく


皆には、帰るべき日常がある





 -俺の 帰るべき場所は どこだ





10代で家を出て
ただ前だけを見て突っ走って生きてきた


努力だけは誰にも負けないつもりでいた
やった分だけ必ず結果はついてくる
そう信じて走ってきた


その結果がどうであれ、傲ることなく、卑屈になることなく
常に周りへの感謝を忘れない
そんな人間になりたかった

そんなグループとして成長したかった
そんなグループにリーダーとして成長させなければならなかった




どこでボタンを掛け違えたのだろう

どこで

手遅れなくらい、気持ちが離れてしまったのだろう




手に平にすくった砂が
指の間からこぼれ落ちていくように

俺は必死でかき集めようとしたが
それはもう2度ともどることはなかった






失いたくなかった

大事な・・大事な仲間だったんだ



弟のように、ときには兄貴のように、友達のように、ライバルのように


ひとりひとり

かけがえのない仲間だった




  -俺が


   守れなかった





やっとの思いで手に入れた夢


俺の夢だった

俺の全てだった



どうして・・どうして守れなかったんだ



なぜつなぎとめておけなかった

俺はリーダーなのに

なぜ分かり合えなかったんだ

なんのためのリーダーだ


しょうがないじゃないか

どうしようもない波が押し寄せてきたんだ

俺の力では どうにもできなかったんだ






 -どうしてもっと-

 -なんでもっと-





一体どれくらい同じ自問自答を繰り返してきたんだろう

答えなんて出やしないのに






唯一、俺の中で出した答え


俺は 全てを受け止めなくてはいけない

批判も擁護も痛みも苦痛も何もかもすべて


それがリーダーとしての責任だ

俺に課すべきことなんだ







チャンミナ

まだあいつはひとりで泣いているんだろうか


あいつは一言だって俺を責めない
だから余計につらい
いいんだよいくらだって俺を責めて


我慢強い男だ
持って行き場のない怒りや悲しみを、あいつはひとりで抱えてしまっている




せめて

せめてあいつの苦しみを少しでも取り除いてやりたい


あいつが楽になるのなら、俺は世間のどんな批判でも受ける



少しでも不安で眠れない夜がなくなるように
少しでもあいつが穏やかな日常を送れるように



それができるのは
この世界で今は俺だけだ



それが今の俺にできる
唯一のリーダーらしいことだろう





遠くで犬を呼ぶ声が聞こえた

潮がだいぶ満ちてきた






帰ろう

いま俺が帰るべき場所へ


帰ろう

いま俺が受け入れなくてはいけない現実へ



それがたとえどんな世界だろうと
俺は逃げてはいけない




それが大切なものを守れなかった

自分にできる精一杯のことだった









シアワセ色の花 ~before dawn~


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その青年を見たのは初めてではなかった



私は愛犬とともに、この海辺を早朝と夕方の2回、散歩をすることが10年以上の日課となっていた



愛犬は私と同じように人生の折り返し地点を軽く超え
一人と一匹でお互い寄り添うように、穏やかな余生をここで過ごしていた





早朝の海は穏やかで、水平線の彼方から陽が少しずつ登り始めるのを見るのがとても好きだった


水面が明るく照らし出され
肌に少しずつ温かみが感じられ
誰にでも、どんな人にも、平等に新しい1日が与えられる



そんな時間がとても好きだった



そして、夕方には太陽が水平線の彼方に沈み
今日1日の出会いや出来事をゆっくりと思い出す


今日1日生かされたことに感謝し
また明日、手付かずの新しい1日を無事に迎えられますようにと
静かに祈りを捧げる



そんな時間がとても好きだった







私がその青年を見かけるようになったのはここ1,2ヶ月位のことだった


何度も会ったわけではないが
早朝のこの時間に出会う人の数は限られていたし
気にせず見過ごすには彼は目立ちすぎていた


帽子を目深にかぶり、とてもラフな格好をしていたが
遠めに見たって彼はとても背が高く
端正な顔立ちをしているのはよくわかった



その青年は多くの場合、防波堤の上に腰を下ろし
陽が昇るのをじっと見ていた



何時間か、あるいは何分か
何をするわけでもなくじっとそこに座り


そうして意を決したように立ち上がり、その場から去ってゆく



その姿は次の目的地があるようにも見えるし
あてもなく次の目的地を探しているようにも見えた




20代前半位の歳の頃だろうか

あどけなくも見えるし大人びても見える
不思議な雰囲気の青年だった



普段私はそんなに周りにいる人を気にするタイプではない

でも、なぜだかその青年には心惹かれるものがあった





ある夜明けに

彼はまたいつもの場所に座っていた



その時愛犬のリードが絡まってしまい
私はその絡まりを直そうとして一旦首輪を外していた

するとめずらしく
愛犬がその青年のそばへと走っていってしまった


本当にめずらしいことだった


警戒心こそ強くはないが、愛犬が私のそばから離れることは滅多にないことだったから



青年は愛犬に気づき、頭を撫でながら顔を寄せていた


 -ごめんなさい。リードが絡まっちゃって。少しの間取った隙に・・

 -大丈夫です。俺も犬を飼っていますから・・・



そういって彼は少しはにかんだような顔をした

近くで彼を見て、やはり思ったよりあどけないと思った




私はお互い初めて・・という空気を感じず
実は彼も私と愛犬の存在を前から気づいていたようにも思えた


そんな不思議な親近感からか
私は思い切って彼に尋ねてみた




 -よく、海をじっと見ているわね・・・



返事をする代わりに彼は少し微笑み、小さく頷いた

ちょうど、水平線から陽が頭を出し、少しずつ水面に光が反射し始めていた



 -私もね、この時間の海が大好きなのよ。



彼はじっと海を見つめていた



 -何もかもね、新しくはじまる気がするのよ。この年になってもね。



私は少し笑って彼を見た。

彼は、なんともいえない顔をしていた
さっきはあどけない、と思っていた彼が、今はとても大人びて見える
大人びてというより、憂いを帯びた悲しい顔をしていた





 -俺は・・・


 -俺は・・失ったものを考えています・・・




彼はじっと海を見ながら、
波に消されてしまうほどの小さな声でつぶやいた






太陽が少しずつ少しずつ、けれど着実に水平線からのぼってくる


彼の端正な顔にも、少しずつ光が射していく







ふと気づくと
彼は泣いていた


声も出さずに
肩をかすかに震わせながら


その姿は、私が今まで見た中で
1番悲しく、そして1番美しい涙に見えた




この青年に何があったのか
私にはもちろんわからない

けれど、こんな早朝に何度もここへ足を運び
失ったものばかりを考えている、という若い彼を見ると
よっぽどのことがあったのだろうと想像せざるを得ない





私はそっと彼の背中に手をおいた




  -失いたくなかったんです



彼は振り絞るように口をきいた
 


  -俺が・・・守れなかったんです





私にはもちろん何の話をしているのかはわからなかった

きっと彼もだからこその告白なのだろう



でも、私は彼の言わんとしていることが、なんとなく、わかる気がしていた





誰しもが通る人生の分岐点
超えなくてはいけない壁
自分との戦い



彼はきっと、今がその時なのだろう



私はそんな時代が懐かしくもあり、同時に彼が抱えているであろう孤独を思うと切なくもあり
名前も知らないその青年に対し、驚く程の親愛の情を抱いていた






 -私も今ままでの人生の中で、多くのものを失ってきたわ



彼は顔を上げ、まだ頬に涙の跡が残る顔で、じっと私を見つめていた




 -でも、取り返せるものもあるし、もう二度と取り返せないものもあった
  自分の心でさえね、不自由なのに・・・
  他人の心まではどうにもならないしね





彼は私を見ているようで、でも私の向こう側にある何かを見ているようでもあった




私は愛犬の頭を撫でながら、この青年に言うべき言葉を探していた



でもきっと、彼は自分で答えをみつけるのだろう
彼の澄んだ瞳を見ていると、彼のこれまでの誠実な人生が伝わってくる




 -今、あなたが大切なものを見失なわないようにね




その一言だけをいって、私は立ち上がった
愛犬がもう待ちくたびれている



彼はじっと海を見ていた
ちょうど、太陽が水平線から登りきったところだった



何かしら彼の心にひっかかるものがあったのか、それはわからない



 -私は散歩の続きをするわ。それじゃあね。



私がそう言うと彼も立ち上がり、ズボンの後ろをパンパンと叩く



 -ありがとうございました



彼は丁寧に頭を下げ、まっすぐな瞳で私を見つめた

その瞳は、本当に澄んでいた
その澄んだ輝きは、太陽の輝きのせいだけではないのだろう




彼は歩き始めた

次の目的地に向かっているのだろうか
次の目的地を探しているのだろうか







私にも・・・こんな時があった



どうか
どうか乗り越えて欲しい



名前も歳も、何も知らない青年だけど
私は彼の幸せを願わずにはいられなかった






どうか あの青年に神のご加護を



私は新しい1日を告げた太陽に

心から祈らずにはいられなかった








シアワセ色の花 ~scene3~

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あれから


俺はあてどなく歩き、現実の世界をしっかり目に焼き付けようとした




今まで通り過ぎていただけの景色が違って見える
目に映るだけでつらかったこの動く現実が
少しずつ 冷静に見られるようになる


人々の息遣いが聞こえる
この現実を生きている姿が見える


皆何かを失い
それでも何かを補填しながら
今を生きている


今大切なものを失わないように

今この瞬間を輝けるように





俺が1番大切なもの
俺が1番楽しいこと
俺が1番好きなこと
俺が1番輝けること


俺が1番生きていることを実感できること


俺が1番シアワセな瞬間




考えるまでもない




ステージの上だ






今の俺じゃダメだ
こんな俺じゃダメだ
こんな俺じゃ受け入れてもらえない
こんな俺じゃ愛してもらえない



堂々めぐりの日々

だから俺はステージを忘れようとしていたのかもしれない


でもそれはちがう


失ったものばかり追いかけて、俺は大切なものを見失いかけていた



ステージの上で生きていきたい

これこそが大切なこと



受け入れてもらえるか
愛してもらえるか
そして何かを人々に与えられるか




それは俺が決めることじゃない
ステージを見た観客が決めること



答えが出る前に逃げてどうする



少しずつ自分の中で何かが動きはじめていた









そんな時

とても大きなオファーが舞い込んできた



夢だった人の夢の舞台



正直迷いがなかったといえば嘘になる


今の状態で受けるべきか
一人の仕事が増えれば増えるほど
どんどんグループから遠ざかる気がしたし

何より・・・

受け入れられるか
不安だった





でも、俺は舞台に立ちたい



自分の中でゆるがない気持ちを確かめた今
あいつにそのことを打ちあける決心がついた


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部屋に帰ってシャワーを浴びたあと
髪をタオルで乾かしながらソファーでゲームをしているお前に話しかけた



「チャンミナ」

「・・・なに?」


マネージャーを通して、この仕事のオファーが来ていることはこいつも知っている

そして俺が迷っていたことも

多分知っている



「俺、この仕事、受けようと思う」


チャンミナはゲームに熱中していて、画面を見ながら小さく答える


「・・・・うん・・・・」


「うんって・・・それだけ?」

「だって・・もう決めたんでしょう?」

「ああ・・・・」

「ヒョンが決めたものは僕が何をいっても曲げないでしょう」

「まあ・・・そうだけど」

「だったら聞くまでもない」

「・・・まあ・・・そうだな・・・」



相変わらずの反応に少し拍子抜けする




「ヒョン・・・」

「・・・ん?」

「その舞台さあ・・・」


ゲームをしながら俺の顔も見ずにあいつが言った


「見に・・いっても・・・いい?」


その瞬間ゲームオーバーになったらしく、ああくそっやられたなんでこうなるんだよ、とかいいながら今の言葉をごまかそうとする





チャンミナ

言葉はなくとも

お前が俺の決断を応援してくれているのがわかる







「早くシャワー浴びろ」

濡れたタオルをチャンミナの頭にかぶせて、ゲームを取り上げる

「何すんだよ!ったく・・冷たいな」

怒りながらもタオルをとって、素直にソファーから立ち上がる

「その画面、クリアしといてよ」

シャワーへ向かうあいつに、返事の代わりに手を振る






そうだな チャンミナ

ひとつひとつクリアしないと

次のシーンへは行けないもんな






そして

相談できる相手がそばにいること

応援してくれる相手がそばにいること


こんなシアワセな日常も
俺は失ってはいけない





「やっぱりヒョンじゃだめか」

そんなあいつの憎まれ口を想像して

俺はゲームをリスタートした





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Stand by U ~from scene17 to episode2~


Stand by U ~scene17~


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あれから

僕は一睡もすることができなかった



ヒョンはそのまま倒れこむようにソファーに寝てしまい
僕もとなりでうずくまる格好になったけど
結局朝まで眠ることができなかった

ヒョンの寝顔を見ながらいろんなことが頭をぐるぐるまわり
空がだんだん明るくなっていき
朝がきてしまった




どう受け止めていいかわからなかった




でも、僕にとっては自然なことだったんだ
全く躊躇がなかったか、といえば嘘になるけど
でも僕がそうしたいと思ったからそうなったんだ




なんとなく顔を合わせずらい




今日ほど朝から仕事が入ってることに感謝した日はない
ヒョンは確か午後からだったはずだ

マネージャーがおこすはずだから
僕はそっと家を出よう


でもコーヒーくらいは飲んでもいいよな



いつもの日課のコーヒーを入れていると
突然声をかけられた




「・・・チャンミナ・・・おはよう・・・」




心臓が飛び出るかと思った


ヒョンはソファーから立ち上がると、こめかみを押さえながらリビングに来た

かなり具合が悪そうだ(二日酔いだろうけど)
ダイニングテーブルの上でも両肘をついて頭を押さえている


僕はそんな様子になんて声をかけていいかわからなくて
無言でヒョンの前にコーヒーを置く



向かい合って座っていはいるけれど
僕はネットで今日のニュースを調べる振りをして
なるべくヒョンの顔を見ないようにして平静を装った



気まずい無言の空気が2人の間に流れていく





「・・・・チャンミナ・・・・・」



頭を押さえたままでヒョンがつぶやく



「・・・・なに?」



何も話したくない
でも無視するわけにも行かず、なるべく興味なさそうにぶっきらぼうにつぶやく



「・・・・・・ゴメン」



予想もしていなかった言葉に、心臓が飛び出すのかと思うくらいドキドキしていた



「なんのこと?」



普通に、興味なさそうに、ぶっきらぼうに、ばれないように


「昨日のこと・・・」
「昨日?」
「うん・・俺・・・なんかお前のこと、怒らしたよね・・」
「・・・なんで?」
「だって・・・チャンミナ・・・朝から俺のことみようともしないし」
「・・・・・・」
「なんか機嫌悪そうだし・・・・」
「・・・・・・・」




「全然・・・覚えてないんだ・・自分が何やったか」



「やっぱり飲み過ぎだな・・・」



「とりあえず、本当にゴメン。よくわかんないけど絶対俺が悪いと思う」






僕はドキドキがピークだった


何かいわなくちゃ




「別に・・何もしてないよ。とにかく飲みすぎは仕事にも影響が出るし、ほどほどにしなよ」

じゃ、僕は仕事行くから
ヒョンの顔も見ずに立ち上がった


何時頃帰るの?というヒョンの声が背中越しに聞こえたけど
僕は聞こえないフリをしてそのまま家を出た




僕は一睡もできなかったのに




僕の中でざわざわしているこの気持ちはなんなんだろう


怒り?
戸惑い?
混乱?

悲しみ・・・・?




少なからずショックを受けているのは確かだ


僕がショックなのは・・・・なに?


ヒョンが
なんでもひとりで抱え込んでいることに
怒りや寂しさを感じているのも事実だ


でも、それとはちがう
別の感情もあった




「ゴメン」
「何も覚えていない」




ヒョンがヒョンの本意ではなかったということ



その場の勢いで

酔った勢いで

何も考えず

記憶からなくなってしまうくらいのことだったってこと





何を期待しているんだ?



僕はどうしようもなく混乱していた





ただでさえややこしい状況にいるのに


さらにややこしい問題に巻き込まれていくようで




僕はもう途方に暮れていた








Stand by U ~scene18~

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僕とヒョンの周りは、相変わらず落ち着かなかった


僕にしても、もともと身長の割に華奢な体つきではあったが
見た目ですぐわかるほど痩せてしまっていたし

出不精も相変わらずだった



あれからヒョンは・・・
家ではあまりお酒を飲まなくなった


少なくとも、僕の前では深酒をしない


その代わり・・・
外で飲むようになったようだ
誰と飲んでいるのかどこで飲んでいるのかもよくわからない


ただ、あまりいい飲み方、酔い方はしていないような気がする


そして帰りが明け方だった朝の変な時間だったり
時として夜中だったり


仕事にしては・・・マネージャーがついていないこともあるし
僕としては心配の種が増えるばかりだった


ヒョンに聞いたところで答えはわかっている



「大丈夫だよ。心配すんな」



だから僕は聞かない。






あれから
僕とヒョンの関係はなにも変わらなかった

相変わらずヒョンは僕の部屋でゲームをやるし
僕の部屋やベッドやソファーで
そのまま一緒に眠りこけてしまう日も多いし


でも、あの夜のような
そんな感じにはならなかった



僕は僕でやっぱり混乱していて
うまく自分の気持ちを処理できないでいた



ただのリーダ-とマンネだったんだ

ステージの上では本当にかっこよくて
その行動で示す統率力は誰にも真似できなくて
仲間を心から愛し、大切にしてくれ
僕は嘘のない誠実なヒョンを、心の底から尊敬し、信頼していた
置いていかれないようについて行くのがやっとだった

その反面、抜けているところも世話のやけるところも多く
僕はそのギャップを間近で見ていて
男ながらもその不思議な魅力に惹かれてもいた



今この状況になって
その愛を一身に受けるようになって(仲間としてでも)
僕はヒョンの人間としての大きさを改めて感じていた
そして人から愛される、大事にされる、大切にされる喜びを感じていた

その愛に答える責任も感じていたし
愛を与えてくれた人に対する愛情もまた、感じていた



でも僕にはよくわからなかった



その愛がどんなものなのか・・・







そんな僕の混乱とは別に
お互い空いた時間にはレッスンをしたし
相変わらずヒョンは厳しかった


でも、僕にはわかる

いくらレッスンをしても
いくらうまく踊れても
いくらうまく歌えても

それだけではダメなんだ




絶対的に足りないもの




僕にもヒョンにも痛いほどそれがわかっていて
でもお互い決して口には出さなくて

意地とプライドだけが僕たちを奮いたたせていた








もう1度、ステージに立ちたい







それがどんなカタチになるのか
どんなカタチであれなのか




わからないけど









もう1度、あの光の中に・・・・







僕はよく空を見上げながら
日本の小さなステージで歌ったあの日のことを
思い出すようになっていた





Stand by U ~episode1~

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帰りたい

毎日空を見上げては
そればかり考えていた



帰りたい


家族に会いたい
友達に会いたい
思いっきり韓国語がしゃべりたい
辞書から逃げ出したい



どうして・・・どうして僕はここにいるんだろう



韓国での共同生活よりもっとストレスのたまる日本での共同生活


行きたいところに行けない
しゃべりたいのに言葉がなかなか出てこない


でも僕はそんなもどかしい自分が嫌で
一生懸命日本語を勉強してした

心休まる時がなかった
緊張がとれる時がなかった


ヒョンたちの間で僕が1番上手くならなくてはいけない
それが僕のポジションなんだ
完璧を目指してしまうこの性格
こんな時、本当に自分の性格が恨めしい


韓国であれだけもてはやされている自分たちが
日本に来ればまた新人の日々


頭の片隅に
ほんの少しだけよくない考えが浮かぶことがあって
一生懸命それを打ち消す





   「なぜ母国だけでけではダメなんだ」





絶対に口に出してはいけないってわかってる


だから僕はその考えを払拭するためにも
がむしゃらに
ただ懸命に、与えられた仕事をこなしていく

そんな考えをする間を自分に与えないためにも

1度出してしまうと、もうそれはとめどなくなりそうだから




僕が塞ぎ込むと1番初めに気づくのはユノヒョン
「元気だせ」とか
「がんばれ」とか
そういうことは一切言わない


その代わり態度で示す


ユノヒョンを見ていると、立ち止まっちゃいけないって気になる
(プレッシャーにもなるんだけど)



「マイケルジャクソン」がユノヒョンの口癖



だからヒョンは外国での活動が苦ではないんだろう
世界中を魅了した彼が目標ならば
苦しいこともきっと乗り越えていけるんだろう


ヒョンにはその苦しみの先が見えているんだ





僕はといえばどうだろう




僕にはユノヒョンのように「先」が見えない
日々をこなすのがやっとで
その先なんて何も見えない



もちろんステージが楽しくないかといえば嘘になる




きらびやかな衣装を身につけて
まばゆい光のスポットライトを浴び
僕らの姿が見えるだけで黄色い歓声が湧き上がり
人々は狂ったように歓喜する



煽る僕らに、ヒートアップする客席




でも、ステージからひとたび降りると
僕は急に頭が真っ白になるときがある




今、あの舞台にいたのは誰だ?

チェガン・チャンミン?
シム・チャンミン?



僕は誰なんだろう?
僕はなんのために歌っているんだろう?
僕はどうしてここにいるんだろう?


僕の本当に目指している場所はここなのだろうか?


ここが、僕のいるべき場所なのだろうか?





同じ年の友達は、将来を見据え
愚痴をいいながらも確実な「何か」に向け
一歩一歩を踏みだしている





「お前はいいよな」




友人に言われるたびに、僕はとてつもない違和感を感じていた
でも、言い返したところでわかってもらえるはずもなく
だから僕は黙って笑っている



何が?
アイドルが?
芸能人という特殊な職業が?
ステージが?
スポットライトが?
歓声が?




周りからみれば、僕は羨望の的なのだろうか




血の滲むようなつらいレッスン
プライベートな時間もなく
友達や家族と過ごす時間もなくなり
毎日自分が磨り減っていくような感覚に襲われる




分刻みで埋まっていくスケジュール
分刻みでこなしていく仕事




これが僕の夢見た現実?
これが、僕の目指しているもの?





僕は自分の心と向き合うこともできず

葛藤と戦うこともできず

ただただ時間の波に押し流されるように

異国での日々を生きていた







Stand by U ~episode2~

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突然飛び込んでしまったこの世界で
僕は数年経ってからの方がより混乱していた



だったら最初によく考えろよ
言われたんだろ?ヒョンに?
「中途半端な気持ちならすぐやめとけ」って




自嘲気味に自分に問う




無我夢中だったんだよ
気がついたらここまで来ていたんだよ
自分の足で歩いてきたつもりだったけど
なぜか他人が歩いているような
他人の歩いた道に立っているような
そんな感覚に襲われるんだよ


袖が長すぎたり
ダボダボだったり
自分に合わない服をきた時のような
どうしようもない違和感を感じるんだよ





そんな感覚、お前にわかるか?







つらいのか?


 -そりゃつらいさ




歌ってて楽しいか?

 -うまく歌えりゃ、楽しいさ



踊ってて楽しいか?

 -うまく踊れりゃ、楽しいさ




じゃあ、幸せか?

  -


お前は今、シアワセか?


 -


「シアワセカ?」






 -わかんないよ


  それがわかんないから


  ここで立ち止まってんだよ


















そんな時

韓国では何万人の前で歌う僕らが
まばゆい光の束を浴び、歓声の渦に巻き込まれる僕らが



小さな小さな外国のステージで
たどたどしい外国の言葉で
愛の歌を歌った



これでいいのかな



僕なりにもちろん一生懸命だったけど
身体も精神も消耗しきっている僕は
少しだけ申し訳ない気持ちでいた




このステージにどんな意味があるんだろう




舞台セットも十分とは言えず
メンバーも戸惑いながらこなしている小さなステージで

僕は足場の悪い中、なんとか歌い、踊り・・・・
やっと顔を上げてまともに観客席を見ることができた






そのとき





一瞬
本当に一瞬

周囲の音が何も聞こえなくなった







 -笑っていた







観客席でステージを見ている人たちの顔が




笑っていた・・・




完璧ではないステージ


けれど


こんな僕の歌で


うれしそうに


幸せそうに


本当に幸せそうに・・・・








この歳で、僕がどんな富や名声を手に入れたとしても出なかった答えが



自分なりに

真面目に一生懸命やってきた自分への



ひとつの答えが、出た気がした





そうか

僕はこのために歌っているのか




僕の頑張りで
僕の歌で
僕のパフォーマンスで



少しでも誰かが幸せな気持ちになってくれ

少しでも誰かの人生の影に温かい光を届けられるなら



こんなに幸せなことはないんだ


それが、僕のシアワセなんだ・・・・・









-ふと見上げると

 真っ青な空に

 美しい白い雲がたなびいている



  この空は母国までつながっている


  この空は世界中につながっている




どこにいたって一緒だよ

この空の下で歌う限り

僕はもしかしたらとてつもない素晴らしいことを達成できるのかもしれない



誰かのシアワセに


力をかせるのかもしれない





だから僕は歌うんだ

だから僕はここにいるんだ

だから僕の居場所は、ここなんだ





この日の空を、僕は決して忘れないだろう

この先

どんなことがあっても




今日の空は

きっと・・・いつまでも変わらずに

僕の中にあり続けるだろう







遠い異国の地で

少しだけ

僕は僕を誇らしい気持ちで

抱きしめてあげたい気分になっていた




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Stand by U ~from scene12 to 16

Stand by U ~scene12~

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「今日は撮影だろ?」
「あ・・うん、そうだけど」
「俺は10時には帰れるから」



ヒョンは自分のスケジュールを事細かく僕に伝え
僕のスケジュールを事細かく把握する



僕がオフでヒョンが仕事の時は、必ずといっていいほど誰かが家に来るか、遊びの誘いがはいる
ヒョンが仕事で1日2日家を空けるときは
誰かしらが必ず泊まるか、深夜まで居続ける

でも、ヒョンが家にいるときは、僕らは2人で過ごすことが多かった



その時は特に僕はなんとも思わなかった




けれど






僕の1日がかりの撮影が、キャンセルになった
急に空いたスケジュールに何をするわけでもなく
僕が一人で家にいる時に、ヒョンのマネージャーから電話があった


「もしもし」
「チャンミン?ユノの撮影さあ、多分今日終わりそうもないや。帰れて深夜か明け方だな」
「わかりました」
「お前も今日遅くまで撮影だろ?」
「あ・・・キャンセルになったんです」
「えっ?じゃあお前今どこにいるの?」
「家・・ですけど」
「一人で?」
「はい・・・そうですけど」
「・・・・・まずいな・・・」
「はい?」



「わかった。とにかく家で待ってろ」
「はい?」
「いいから。今から行かせるから」




僕が何かを言う間もなく、電話は一方的に切られた


わけがわからなかった




数分後、事務所のスタッフが家に来た
昔からずっとお世話になっているスタッフだった



僕は昔から気の知れたそのスタッフと
ゲームをしたりDVDを見たりして、久しぶりにほっとしたオフを過ごすことができた




「相変わらずユノの部屋は汚いなあ」
笑いながら散らかった漫画やCDを軽く足でつつく
僕はくっくっと笑いながらお手上げ、というジェスチャーをしてみる

「でもしょうがないよな、あいつ、お前のことで精一杯なんだよ」



   ・・・・・・・?



「さっきもえらい勢いでユノのマネージャーから電話がかかってきたよ。早く家に行け!じゃないと俺がユノに殺されるって」



   ・・・・・・・・






僕は何も言えなかった



その瞬間、ここのところ、僕がひとりになることがほとんどなかったことに気がついた
しかも、いつも周りにいてくれるのは僕の気心知れた人たちばかり・・・




部屋も片付けられない
忘れ物も多い抜けているヒョンが

なんであんなに僕のスケジュールを覚えていたのか







ヒョン

いつだってそうだ



あなたはそうやって

いつも一人で何もかも背負って

自分のことはほっておいて

何も言わずに

いろんなものを守ろうとするんだ





「おい・・チャンミン・・・どうした?おい・・」




気づくと・・僕はまた泣いていた


全く、どうしていつも僕はこうなんだ






「大丈夫ですから」
といって、お世話になったスタッフには帰ってもらった





そう、大丈夫だ



僕はひとりじゃない



離れていたって、ひとりじゃない





僕はもう泣いてばかりのマンネじゃないんだ







Stand by U ~scene13~

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カチャリ


ドアがあく音がした


かすかに、ドアのところでヒョンとマネージャーの話す声が聞こえる




ドアが閉まり、ヒョンの足音が聞こえる






「・・・チャンミナ?」


リビングに明かりがともっていて
こんな時間にまさか僕が起きているとは思わなかったのか
少しびっくりしたような顔でヒョンが近づいてきた



「どうした?眠れないか?」




いつもそうだね

まずは僕のことを気にするヒョン




「ちがうよ ヒョンを待ってたんだ」




そう答える僕に、ヒョンはコートを脱ぎながら不機嫌そうにつぶやいた

「遅くなるってマネージャ-に伝えるように頼んだのに・・・」


「知ってたよ でも待ってたんだ」





ヒョンは一瞬とまどったような表情をみせていた




「何かあったか?」



ソファーに座っていた僕の横に座り、覗き込むように正面から僕を見据える





どうして・・・
どうしていつも自分はさておき、僕なんだ・・・






僕は自然に

そうしたいと思ったから自然に

ヒョンに抱きついていた




「チャンミナ・・・?」




ヒョンは一瞬びっくりしたように体をこわばらせた

でもすぐに僕の背中に手を回し


「何があった?」

とトントンと背中をたたく





ヒョンは僕とハグするとき
いつも背中をトントンたたく



何かのおまじないみたいに


「大丈夫だよ」っていうように









「大丈夫だから」





ヒョンの首筋に、髪に
かすかに顔をうずめながら
落ち着いて言った






「僕は、もう大丈夫だから」




ヒョンの顔を見ちゃったら、また泣きそうな気がして
首に回した手に力を入れてつぶやく



「チャンミナ・・何かあったんだろ・・話してみろ」


僕の腕をほどこうするヒョンを
さらに力を入れて強く抱きしめる




「ちがうよ・・・・何もないよ」





僕は抱きついた身体から香るヒョンの匂いを感じながら
すごくおだやかな気持ちになっていた




僕が何も言わないと察したのか
僕が落ち着いていることにひとまず安心したのか

ヒョンも僕の腕をほどくのを諦め
この前のようにしっかりと僕を抱きしめてくれた


   背中をトントン





ヒョンの鼓動が直に伝わる




なんでこんなにも安心するんだろう







大丈夫

あなたが隣にいてくれるなら

僕は大丈夫だから






声にならない声を
心の中で何度も繰り返す






「また、このまま寝てもいい?」




ヒョンは何も答えず、ただただ僕をしっかりと抱きしめていた





Stand by U ~scene14~

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この感情をなんと表現したらいいのか




特別なことという意識は全くなかった




ごく自然に
当然のように
僕はヒョンを必要としていたし
ヒョンも僕を必要としていた


誰かのぬくもりが欲しかったわけじゃない
誰でもよかったわけじゃない


僕はユノヒョンを必要としていた







その時、僕には付き合っている彼女がいた

仕事も忙しく、デートらしいデートもまともにできず
会うことだって頻繁にできたわけじゃない

でも僕にとっては(というか、一般的な普通の男子と一緒で)
彼女の存在はすごく心強かったし
支えになってくれていたのも事実だ


ヒョンに会わせたことはないけど、彼女の存在は知っていた
そういうプライベートなことは、昔からあまり聞かない
僕が言えば「ああそうか」と聞く程度だ

ヒョンのこともあまり詳しくは知らない
ただマネージャーや事務所の先輩の話で
ヒョンがすごくモテることだけは確かだった




こんな状態になって
彼女はすごく僕のことを心配してくれていた



でも僕は
「ありがたい」「もう申し訳ない」という気持ちはたくさんあっても

「会いたい」

という気持ちは不思議とおこらなかった










ユノヒョンと彼女を比べるなんてことはできなかった


だっておかしいだろう?


比べること自体がまちがってる
なにもかも違うんだ
根本的なものが違うんだ




でも




この感情をなんと表現したらいいのか





僕はヒョンと一緒にいることで安らぎを感じていたし
辛く苦しいときには、ヒョンを必要としていた





ヒョンを求め
ヒョンに助けられ
ヒョンと共に歩きたかった










あの頃


僕が長い長い暗闇のトンネルの中から抜け出せずにいて

それでもあなたが小さな光をあてて僕を導こうとしてくれていたとき




あなたはあなたで光を求めていた





僕は、そんなあなたに気づかず
ただただあなたの愛に甘えていた



ヒョン





どうしてあなたはいつもひとりで乗り越えようとするんだろう

どうしてあなたはいつもひとりで歯をくいしばるんだろう







どうして僕は


あなたの苦しみにもっと早く気づいてあげられなかったんだろう・・





Stand by U ~scene15~

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僕は休んでいたレッスンを少しずつではあるが開始した

ドラマの仕事も入っていて
それ以外にも何かと撮影やらインタビューやらで
前ほどではないけれど、それなりに忙しい日々を送っていた


僕たちがこういう風な状態になって
メインのレッスン場は、今の最先端を走る(こんな言い方したくないけど)
仲間や先輩、後輩たちによって埋め尽くされている


僕やヒョンがスタジオを使えるのは早朝か深夜だ


ヒョンにも大きな仕事が入ってきていて
仕事以外でレッスンをするとなると
僕とヒョンに残された”空白の時間”は、1日の中でほんのわずかだった


でもそのわずかな時間でさえ
僕はヒョンと過ごしたいと思っていた


その感情が不思議だった



仕事が別々なため、レッスンも別々になることも多々ある
でもヒョンはどんなに遅くなっても、僕がレッスン場にいるときは仕事先から来てくれたし
早朝も、自分の仕事が先に入っていない限り
僕が起きるとすぐに目覚め(その瞬間までいびきをかいていても)
仕事の時間まで一緒にレッスンをした


レッスンは正直つらい


振付師がいるわけではない
これから発売されるであろう歌があるわけではない
ボイストレーニングは先輩方の歌や発声練習が主だった
ダンスはといえば、ここはヒョンの出番だ
でもあの優しさから一変して
レッスン場でのヒョンはとにかく厳しい
僕は何度も食ってかかりそうになったし
何度も泣きそうになった



でも



自分も疲れてるはずなのに、スタッフに明るく振舞う姿や
僕がへたばってうずくまっていても
何度も何度も鏡の前で振りを確認するヒョンをみていると
立ち上がらずを得ない


その強靭な精神力と肉体は、一体どこからきているのか



全くあきれてしまうほどだ








でも

そんなヒョンが

時々部屋でお酒を飲むようになっていた


「めずらしいじゃん、ビールなんて」

「んっまあな・・・」


ビールの日もあればワインの日もある
正直、これには少し驚いた


僕と違ってヒョンは仕事の打ち上げなどのとき以外はあまり飲まない
もちろん、親しい仲間で飲みに行くことはあっても
僕たちの家でひとりで飲むことはほとんどなかった



なんとなく一緒に飲むのも気が引けて・・・
僕はその変化をあまり大きなものとして受け止めっていなかった






でも

本当は、その変化はとても大きなものだったんだ


「強靭な精神力の持ち主」と賞賛されたヒョンが
自分では気づかないうちに、サインを出していたんだ




僕はどうしてそれを気づけなかったんだろう




ヒョンは暗闇をひとりさまよっていたんだ








Stand by U ~scene16~

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久しぶりに彼女と会うことになった

もちろん楽しみじゃないといえば嘘になる


でも、以前とは違った感情をもっていることも

やっぱり認めなければならない




お互いの近況
僕の仕事の話
彼女の仕事の話
最近の映画の話
共通の知り合いの話


とりとめのない、たわいない話だったが
久しぶりに仕事以外の人と過ごす時間は
思いのほか新鮮で楽しいものだった

でも、楽しいと思えた次の瞬間に
「これでいいのか」と冷静に自問自答する自分もいる



肝心なところはお互いに避けていた
彼女も聞きたいであろうこと
僕もはなさなければいけないこと
そこの部分は暗黙の了解のようにお互いが避けていた



「次はいつ会えそう?」





そうか、次か。

当たり前だよな、普通の恋人同士なら



でも僕は返事が出来なかった
約束もできなかった









「ただいま・・・」

思いのほか遅くなってしまい、ヒョンは寝ているかもと思い小声で言う




リビングの間接照明がともっている


ソファーで寝てる?



ヒョンはソファーの背もたれに体をうずめ、目を閉じていた
ガラステーブルの上には、PCと
ビールやらワインやらの空き缶・空き瓶が転がっていた



やれやれ、また飲んだのか・・・



僕は音をたてないようにして、それらを片付けようとした



「・・チャンミナ・・・仕事か・・・?」

「ヒョン・・・起きてたの?」



いきなり話しかけられ、僕はかなり動揺していた


「うん・・・そうだよ・・」


なぜだかわからないけど

僕は咄嗟に嘘をついた

そんな必要ないのに




「・・・嘘だろ?今日はオフってマネージャーが言ってたぜ」




ヒョンは軽く鼻で笑って、少し意地悪そうに言った


「別に俺に遠慮することはないよ」




ヒョンはかなり酔っ払っているようにみえた

僕はなぜかすごく居心地が悪くて早くその場を立ち去りたかった


「こんなとこで寝ると風邪ひくよ。全くこんなに飲んで・・。早く寝ろよ」


と顔も見ずに言い捨てて、立ち上がろうとした




その時、不意にヒョンに腕を掴まれた




「・・・・・一緒に寝るか?」






何をいってるんだ

僕は一気に耳まで顔が赤くなるのがわかった


今までだって一緒に寝ることはあった
でもそれはどちらからともなく自然な成り行きでそうなっていただけのことだ


こんな風にいわれると
僕はなぜか激しく動揺していた


「飲みすぎだよ、ヒョン!いい加減にしろよ!」


僕は動揺を隠すために大げさに手を振り払おうとした


でもヒョンは僕の腕を離そうとはしなかった



「うまくいってんの?」
「何が?」
「彼女と」
「別に!ヒョンとは関係ないよ!」


普通に言えばいいのに
僕はそのことをヒョンには聞かれたくなくて
話したくなくて
ついついそっけない言い方になる


ヒョンはだいぶ酔っている
酒臭い匂いもプンプンするし、いやにからむ
もともとお酒の強い人じゃない
あの空き缶から察するに、もうかなりフラフラなはずだ


「ヒョン・・かなり酔っ払っているでしょう」
「・・・・酔ってねーよ」
「どこが!!ほら早くベッドいって寝て!」
「・・・・・・どっちのベッド?」



また意地悪く笑いながら僕の顔を伺う
なんなんだよ
なんで今日はそういう風にからむんだよ


「いい加減にしろよ!!」
僕がそういってまた腕を振り払おうとしたとき



不意に

ヒョンは僕の腕を引っ張り

僕はその勢いでヒョンの隣に座るようなカタチになった






その時フリーズしていたPCの画面がはずみで動き

映った画面には

僕もみたくなくなるような

ヒョンへの誹謗中傷の言葉の数々、画像・・・・・






ヒョンは毎晩ひとりでこれをみていたのか


こんなことまで受け入れようとしているのか









泣きそうになっている僕と目が合う

ヒョンも泣きそうな顔をしていた









僕らだけが共有できるどうしようもない悲しみ


僕らだけが分かち合えるどうしようもない苦しみ











僕とヒョンは

お互いに

成り行きに身を任せるように身体を寄せ合った






ひとりで乗り越えようとするなよ

ひとりでなんでも受け入れようとするなよ






僕があなたのとなりにいる意味はなに?







僕がヒョンを見上げた瞬間

ヒョンの顔が近づいてきた








僕は当然のように




それを受け入れていた



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Stand by U ~from scene7 to 11~


Stand by U ~scene7~

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季節が、少しずつ移り変わっていった


街の木々の色が変わり
肌に感じる風が変わった

ショーウィンドウに飾られるファッションも様変わりし
行き交う人々もまた、時代に洗練されるように変化した








そして、彼らが部屋を出た








僕は不思議な気持ちで彼らがいなくなった部屋を見ていた


今までだって一人の時はあった
お互い違う仕事が入っていたり、お互いの友人と出かけることだってもちろんあった


でも明らかに今までのそれとは違う

服、靴、食器、本・・・・

実際に失くなったものはそんなに多くはなかった
それでも今までとは全く違う景色に見える





きっと、僕の心が変わっていったんだ





仕事は全くなくなったわけではなかった
ヒョンにも僕にもそれぞれ別の仕事が入り
それなりに忙しい毎日を送っていた





その頃から、少しずつ、心ない声が聞こえるようになった






僕が何をした?

僕は何も変わらずただここにいるだけのに

僕は変わらずただ真面目に仕事に向き合っているだけなのに





それなのに、僕とヒョンに対する風当たりは強くなる一方だった




どうしてこんな風になっちゃったんだろう

どうして何も悪くない僕の周りの大切な人達まで傷つくのだろう





僕は混乱し、塞ぎ込むことが多くなっていった






誰とも会いたくない


誰の声も聞きたくない





僕たちにしかわからない真実が
ただねじまがって違う方向へと流れていく



僕はただ

それを黙って見過ごすしかなかったんだ





そんな中で、僕の唯一の心の拠り所は



ヒョン




あなただけだったんだ








Stand by U ~scene8~


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以前にもまして、ヒョンは僕を気にかけるようになった




「今日はどうだった?」

「別に・・・・変わらないよ」

「そっか・・・よかった」






・・・ったく、何がよかっただ



僕は思わず苦笑いをする


でもそんな日常のヒョンとの小さなやりとりが、その時の僕には必要だったんだ





普段からどちらかというと家でゲームをしたり本を読んだりするのが好きだった僕は
ますます家の中に閉じこもるようになった
以前僕が慣れない環境にふさぎこんでいた時と一緒で
ヒョンはそんな僕を外に連れ出そうとする

ヒョンはいつも僕の心を見透かすんだ



「チャンミナ、ボーリング行こう(いつもの誘いだ)」
「チャンミナ、たまには外食しよう」
「チャンミナ、カラオケでも行くか?」





僕はいつも笑って小さく首を振る




ヒョン
ごめんなさい
あなたの優しさは痛いほどわかる


でも、こんな状態で外に出ても、みんなに迷惑をかけるだけだ
みんなが僕に気を遣い
気を遣わせている自分がまたいやになる




悪循環だ




だから僕は今までにも増して部屋にこもるようになった










家にいる時間が長ければ長いほど

見ないようにはしていたけど
気にしないようにはしていたけど

嫌でもTVやネットで僕らの噂を目にし、耳にするようになる




僕が傷付けられるのはまだいい

でも、僕の家族や大切な人達にまで迷惑がかかってしまうことには我慢ができなかった




僕の両親も妹も何も言わない
ただただ僕を心配するだけだ

でも僕は家族に相当な迷惑がかかっていることをわかっていた






ずっとずっと我慢をしていたけど

もう限界だった




僕の中で何かがはじけた



僕だけだったら何を言われてもいい

そんなの慣れっこだ

でも、なんでなんの関係もない人たちまで巻き込まれてしまうんだ






何への怒りなのか

誰への怒りなのか

僕自身への怒りなのか





コントロールを失った僕は

内側から溢れ出す感情を抑えることができず

堰を切ったように泣き出していた








「ただいま・・・・チャンミナ?」








お願いだ

こんな僕を見ないで欲しい





でも心の中では叫んでいた





お願いだ


こんな僕を・・・・救って欲しい・・・・







Stand by U ~scene9~


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「・・・・・チャンミナ?」



僕のただならぬ様子を察してか
ヒョンが血相を変えて走りよってきた



「チャンミナ、どうした!何があった!」



強く掴まれる両肩を、乱暴にふり払う
僕はもう自分をコントロールできなくなっていた


「なんでだよ!どうしてだよ!なんでこうなるんだよ!」


僕は泣きながら吐き捨てるように怒鳴った


「チャンミナ・・・落ち着・・」
「落ち着け?これが落ち着いていられるかよ!いつまで待てばいいんだよ!いつまで黙ってればいいんだよ!
いったいいつまで・・・」






取り乱して叫ぶ僕の言葉を
ヒョンは辛そうな
悲しそうな顔をして、黙って聞いていた





「・・・・・いつまで・・・・続くんだよ・・・・・」





力なく膝から崩れ落ち、両手で顔を覆った





ちがう
そうじゃない
そうじゃないんだ、ヒョン

僕はあなたを責めているんじゃない

そんなに辛い顔をしないで






僕は久しぶりに
以前こんなに泣いたのがいつだったか記憶がないくらい久しぶりに
しゃくりあげて泣いていた






気づくとヒョンは


震える僕を


痛いくらいに強く抱きしめていた






「チャンミナ・・・ごめん」








どうして

どうしてあなたがあやまるんだよ




僕は、ヒョンまで追いつめてるの?




何に対する怒りなのか

何に対する悲しみなのか






何もかも信じられなくなったこの世界の中で


確かなのは


ヒョン


あなたのぬくもりだけだった






その晩

僕はヒョンにすがりついて

小さな子供のようにわあわあと泣き続けていた






Stand by U ~scene10~

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僕にとってヒョンは遠い存在だった


たった2つしか歳は離れていないけれど
リーダであり、長い年月練習生として経験を積んだヒョンは
何も分からず、突然この世界に飛び込んできた新参者の僕には
どうあがいてもかなわない人


でもそのくせ人懐っこくて寂しがり屋で
世話焼きで(その上世話がかかって)


なんとも不思議な人だった


ヒョンと僕は同室になるのが多かったこともあり
確かにぶつかりあって喧嘩をすることも多かったけど
マンネとリーダーにしては、真剣な話をすることも多かった


ヒョンが僕に真剣な話をするたび
認めてもらえたようですごく嬉しかった


僕はなんだかんだいってヒョンに絶対的な信頼をおいていたし
ヒョンも多分僕を信用してくれていたと思う


なんといっても10代から一緒に生活をしている僕らは
兄弟のようであったし
もちろん仕事上の大切な仲間であった








あれから





ヒョンは一晩中僕を抱きしめていてくれた



僕が泣き止んでも
ずっとずっと僕を離さなかった



僕たちにはなんの会話もなかったけれど


僕は僕で久しぶりに心から安心することができて
いつの間にかヒョンの腕の中で眠ってしまったようだった






気がつくと


僕はリビングのソファーで寝てしまっていて
その体には丁寧に毛布がかけられていた




本当に久しぶりに、朝まで眠ることができた気がする




ダイニングテーブルの上には
見慣れたヒョンの字で置き手紙があった





「おはよう 少しは眠れたか なるべく早く帰る」






ヒョンらしい、短い手紙だった





でもそんな手紙で
僕の心は温かいもので満たされていった





そして僕とヒョンとの関係が
なんとなく変わっていったのを、僕は感じていた









Stand by U ~scene11~

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あの日から


自然に


本当にごく自然に
僕とヒョンは一緒に過ごすようになった





5人だった家が2人になり

「こんだけ部屋があるのに1部屋に固まるのもおかしいよな」

とマネージャーがおどけるようにいい
僕らはそれぞれの部屋を持つようになっていた



けれど



ヒョンはことあるごとに僕の部屋に来る

その名目は、ほとんどが「ゲーム」


「あ~」とか「くそっ」とか「なんでだよ~」とか
とにかくゲーム中でもヒョンはうるさい
たまには一人で静かに本でも読みたい時もある
でも、僕は文句をいいながらもヒョンが部屋に来てくれるのがうれしかった


「うるさいよ!」
「あ~もう散らかさないでよ」
「お皿に出してよ!」
「汚い手でリモコンに触るな!」


僕はヒョンに小言ばかり言う
そこは僕も譲れないところだ


そしてお決まりのようにサッカーゲームをして喧嘩になる
最後にそうなることがわかってるのに対戦する





申し合わせたように
けれど自然に
うまくは言えないけれど
そんな風にして僕とヒョンは一緒の時間を過ごした



そして、そのほとんどにおいて、ヒョンはそのまま僕の部屋で眠る
ゲームをしながら床に寝転がる時もあれば
僕があとから帰った日は、先に僕のベッドでいびきをかいている時もある



やれやれ



僕はため息をつきながら、ヒョンが散らかしたゲームや食べ物の残骸を片付ける
床に寝ているときは、起こさないようにそっと毛布をかける

どうしても疲れている日は
「どいて!」といってヒョンからベッドを奪い取ろうとする

当然だ
僕の部屋だ


でもそれでもなかなか起きないヒョンを見ると
なんだか申し訳なくなって(なぜなんだろう)
僕はベッドの隅っこに小さくなって眠る

考えてみたらおかしなことだ
いくらダブルサイズの大きなベッドとはいえ
こんな大男2人が寝るには無理がある

でも不思議と
朝起きても、お互い当然のように「おはよう」と挨拶し
朝の支度をはじめる


そこに余計な言葉はない


僕ら2人にとっては考えることもなく
自然に
当然のように
お互いのぬくもりを必要としていた







ヒョンが一晩中抱きしめてくれたあの日
僕は朝までぐっすり眠れた


あんなに怖くて不安で眠れたかった日々が嘘のように
僕は子供のように幸せな気分で目が覚めた




そしてそれから

ヒョンがとなりにいてくれるだけで
僕は心が満たされ、恐怖や不安が少しずつ消えていくのを感じていた




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Stand by U ~from scene1 to 6~

Stand by U ~prologue~


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ふと、ラジオから聞こえてきた、聞き覚えのある曲


前奏の、その美しいピアノの和音が、激しく僕の胸を打つ



聞き覚えのある?


当たり前だ

僕らの歌だ




今頃?


なぜ?



ラジオで交通情報を聞こうと適当にボタンを押していたら

突然耳にとびこんできた



ボタンを押していた
指が止まる



 君がサヨナラも言わずに

出て行ったあの日から

この街の景色やにおいが

変わった気がするよ

きみのすべてになりたくて

交わした約束も

果たされないまま思い出に

変わってしまう



失恋した誰かがリクエストでもしたのか


昔の恋人を偶然町でみかけ、この曲を思い出したのか




そして





そして
なんの前触れもなく



なぜだかわからないけど




突然身体の中心から僕を押し上げてくるような

そんな激しい感情に逆らえず






気づくと



僕は



僕は・・・・・・・・





泣いていたんだ・・・・・







Stand by U ~scene1~

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あとからあとから流れてくる涙に視界が遮られ
ハンドルをあわてて側道へときる



だめだ


僕は激しく混乱している



幸い深夜にこの道を走ってる車はほとんどなく
ギアをPにいれ、サイドブレーキをかけ
僕は運転を諦めた


さっきの激しく揺さぶられるような感情の波は去ったが

今度は穏やかな海の、寄せては返すような静かな波が
僕の心を優しく乱す



シートを少し後ろに倒し
ハンドルから離した両手の甲を額にあてる







あれから・・・・


あれからどれくらい経ったんだ・・・




あれから、僕はどこへ向かい
あれから、僕はどこにたどり着いたのか






そして・・・






あなたは今 何をしているんだろう

どんな顔で 笑っているんだろう







ヒョン・・・


ユノヒョン・・・






愛しい人の名を呼ぶだけで

僕はこんなにも満たされる





ヒョン・・・・僕はちゃんと生きてきたかな

ヒョン・・・・僕はまっすぐ歩けているかな







そっと目をつぶる

涙はあとからあとから流れてくる


その涙を拭うこともせず

ただただ感情の波に身を委ね




僕の意識は過去と現在をさまよっていた・・・・。








Stand by U ~scene2~

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僕は昔から自分を内向的な人間だと思っていた



     答えが分かっていても、絶対に自分からは手を挙げない
     何かを決めるときには、絶対自分からやるとは言わない



でも最近そうではない、と思い始めた自分もいる




自分について深く考える時間ができ
自分を冷静に分析する(せざるを得ない)状況になり



自分の見方が、少し、変わってきた




僕は「目立たない」ことで「目立とう」とはしていなかったか
僕は「目立たない」という手段を使って、実は自己主張をしていたのではないか




僕が遠回りでそんなに面倒くさい自己表現をしてしまう理由はただひとつ





傷つきたくないからだ





自分から出過ぎなければ批難されることもない




でも

でもそのくせ・・・心の底では周りから認められたい・・・




いつの頃からか、僕は自分が傷つかずに済む方法を覚え
いつも周りの顔色を気にし
瞬時に、どう振舞ったら周りが喜んでくれるのか
僕を認めてくれるのか



そんなことばかり考えるようになっていた





そんな時、僕は僕のアイデンティティをぶち壊すかのような男に出会った




チョン ユンホ




僕にとってはありがた迷惑な新種の人間だった


目立ちたがる
おせっかいをやきたがる
よくしゃべる
いつも人といたがる
そして暑い、熱い

そして、何事にも絶対に手を抜かない



全てにおいて僕の対局にいる男

「わかってくれる人だけ、わかってくれればいい」

そんな僕の消極的な考えは、この人には通用しない





「わかってもらえるまで、あきらめない」









その真っ直ぐな心が




卑屈になりかけていた僕の心に




光をあててくれたんだ








Stand by U ~scene3~

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他人との共同生活なんて小学校のキャンプ以来だった


自分だけだったらまだしも、家族以外の人間との(しかも5人!!)
「今までの価値観をもったままの共同生活」は
想像以上に厳しいものだった




他人と場所を共有すること
他人とものを共有すること




僕が「常識」と思っていたことが、他人にとってはそうではなかったり
僕が「譲れない」と思っていたことが、他人にとってはどうでもいいことだったり




僕はグループのマンネ(末っ子)で何か言いたくてもやっぱり飲み込んでしまうことも多く

相当なストレスを抱えていたことは確かだ



でも仲間と同じ夢を追い求め
いくつものうれしいこと、つらいこと、苦しいことを共に乗り越えていくことで
いつのまにか僕のストレスは減っていった



いや、ちがうな



正確には、ストレスとうまく付き合う方法を身につけたというべきか



僕たちはお互いの欠点を受け入れ、認め、共に生きていく

言葉じゃなく
感覚でそれを分かり合えるようになっていった




ホームシックにかからなかったといえば嘘になる
でもさみしい時には誰かしらが同じ空間にいてくれる



それぞれが同じ寂しさを抱え、共有し、寄り添うように生きていたあの頃



突然こんな世界に入り
何も知らないマンネの僕は
ただただ目の前の与えられた仕事を黙々とこなし
自分のやるべきことを一生懸命やり遂げることだけを考え、生きていた





でも

ユノヒョン

あなたはちがった





あなたは苦労して苦労してやっと手に入れたこの「東方神起」というグループを

そしてその「東方神起」というグループのリーダーとしての地位を



自分のことよりも大事に考えて、生きていた




あなたは常に「東方神起のリーダー”ユノ・ユンホ”」であり
自分のやるべきこと
取るべき行動を
「東方神起」としてどうあるべきかを考え
生きていた





その孤独は計り知れない





あの頃の僕は

そんなあなたの孤独を知る由もなく



ただただ自分にとっては遠い存在として
置いていかれないように
ついて行くのがやっとだったんだ






でもあの頃

そんなあなたの孤独を癒すことができたのは誰だったのかな






そう考えると




今でも悔しくて悲しくて




僕は






僕はどうしようもなく混乱するんだ・・・















Stand by U ~scene4~

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母国と外国を行ったり来たりする日々
慣れない言葉や習慣に戸惑い

その上家族や友達に会えない寂しさもつのり
僕はどんどん内にこもるようになっていった




そんな時

いつも真っ先に僕を気にかけてくれたのが



ヒョン



あなただった





「チャンミナ、飯食いに行くか」


「チャンミナ、ボーリング行こう」


「チャンミナ、一緒にDVD見よう」




チャンミナ



チャンミナ





あなたの口から出るその呼び方が
あまりに優しくて
照れくさくて
でも、うれしくて




頑なだった僕の心が
少しずつ、少しずつ、柔らかくなっていった





でも、なかなか素直になれない僕は


「ヒョン! また靴下脱ぎっぱなし!」


「ヒョン!ペットボトルから直接飲まないで!」


「ヒョン!靴のまま家に入らないで!」





ヒョン!




ユノヒョン!





同室だったことが多かったこともあり
僕は他の仲間に比べ
あなたを怒ってばかりいた気がする






本当は


本当は「ありがとう」をいいたかったのに






本当は


本当はもっと素直に甘えたかったのに






でもリーダーという立場のあなたは
僕だけじゃなく、いつもメンバーのことばかり考えていた


いつもメンバーの体調を気にかけ
いつもメンバーに話をふり
そして僕たちの知らないところで、いつもメンバーの自慢話をし
惜しみない愛情を僕たちに注いでくれていた




甘えたいけど

甘えちゃいけない、と自分を押さえる



だから
遠回りで面倒くさい僕は
余計に気を張り「しっかり者のマンネ」を演じていたのかもしれない




「目立たない」ことで「目立とう」としていた僕

「しっかり者」を演じることで
あなたの気を引きたかったのかもしれない





あなたに褒められ
あなたに認められることで
あなたの愛情を独り占めしたかったのかもしれない




ユノヒョン




あなたは誰に対しても惜しみない愛情を与えてくれる

でも時にその優しさが、人を傷つけてしまうこともある



どれだけ多くの人があなたの愛を欲し
そして、あなたの愛が自分だけのものでないと知り
どれだけの涙を流しているか




あなたは知らないでしょう・・・・







ヒョン




今考えれば


あの頃の僕はあまりにも幼くて
あなたの愛に甘えすぎていたように思う


それがたとえ僕ひとりに向けられたものでなくても
僕はあなたの愛の下では、自由なマンネでいられたんだ




そして僕がそうだったように

皆もまた、あなたの愛に甘えていたんだ
惜しみなく、自分のことを顧みず、あなたのくれるただただ純粋でまっすぐな愛に

安心して
自由になって


そしていつのまにか傲って・・・・・









そう


僕たちは


あまりにも幼くて



愛を与え続けているあなたの孤独に気づかず



ただただ



自分たちのことだけを考えていたんだ





そうして



僕たちは




いつの間にか心が離れていったんだ・・・・・・・











Stand by U ~scene5~

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土壌を耕し
種をまき
たっぷりと水分を吸収し
耀く太陽の光を浴び


雨の日も風の日も
飛ばされぬよう
折れぬよう
しっかりと大地に根をはり


幹は太くなり
葉は生い茂り

あとはただ実りの季節を迎える




そんな時の出来事だった







僕の意思とは関係なく
突然周囲が騒がしくなり
状況が目まぐるしく変わった




”冷静さ”が売りの僕が

激しく混乱していた





永遠を誓い合った仲間
頂点を目指し、大事に大事に積み重ねてきた数え切れない月日







目の前の全てが信じられなくなっていった







僕は誰だ



僕は、今まで何をしてきたんだ


僕は今、何をしなければいけないんだ








逃げだしたかった


面倒くさいことは全部誰かに任せ
温かい毛布にくるまり、不安なんか何もなく
無邪気な子供のように
ただただぐっすり眠りたかった



朝おきたらすべてが片付いていて
また、僕はいつもの日常にもどっていく


そんなことを何度夢見たことか







でも現実は残酷だった



疲れているはずなのに眠れない日々
お腹は空いているはずなのに、食べ物を受け付けなくなっていく身体
頬がこけ、目の下のクマが浮き立ち、均衡が保てなくなっていく心



朝起きれば、ぎくしゃくした不穏な空気が僕を押しつぶす

それでも寝食をともにする僕たち
それでも笑って仕事をこなす僕たち

愛すべきファンに向け、愛の歌を歌う僕たち






これが現実なのか


これが自分なりに誠実に正直にまっすぐ生きてきた僕の答えなのか







僕は、どんな顔をしている?


僕は、どんな顔をしたらいい?


僕は、どこへ向かっている?


僕は・・・・・・どこへ向かえばいい?








明日も見えない

そんな暗闇をさまよう毎日で




気がづけば


僕のそばには




ヒョン

ユノヒョン







あなたがいたんだ





Stand by U ~scene6~


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できるのなら、時を止めたかった





少し、もう少し待って欲しい





うまくやってきたんだ
喧嘩もしたし、時には手が出そうなくらいヒートアップした時もあった




それでもここまでやってきたんだ




笑って、泣いて、励まして、抱き合って

そうして僕ら、気の遠くなるような試練を乗り越えてきたんだ





時間さえあれば
もう少し時間さえあれば、またこれまで通りうまくやれるはずなんだ




そうだろう?





それなのに





次々に埋まるスケジュール

話し合うこともなく
ぶつかり合うこともなく
気まずい空気のままこなさなければいけない仕事





少し前まで



夜、ヒョンたちの話し合う声が聞こえた


僕がいる時もあれば、いない時もある
僕はわざと聞こえないふりをしたり、話が始まるとそっとひとり部屋に逃げ込んだりした時もあった




争いは嫌いだ




僕はただ、これまで通り、うまくやっていきたいだけだ







そんな僕の動揺とは別に
ユノヒョンはどんな仕事でも今まで通りこなしていく


不安や混乱など微塵も見せることなく
インタビューに笑顔で答え、カメラが回れば愛嬌を振りまき
今まで通り、東方神起のリーダーとして責任ある行動をとっていた


そんなヒョンに
ぼくは時として苛立ちさえ感じていた



どうしてそんな平気な顔できるんだよ



どうしてもっともっと怒らないんだよ



思いっきり怒って、泣いて、取り乱して、暴れて

もっともっと感情的になればいいのに








今思えば

あの頃

あなたはどれだけの孤独と苦しみを一人で抱え、戦っていたのだろう



自分の感情を押し殺し
メンバーひとりひとりの苦しみを理解しようとし
共有しようとし
たった一人であがき続けていたんだ


あくまであなたは東方神起のリーダー「ユノ・ユンホ」であり
何よりもグループを、仲間を、最優先に考えていた

全ての責任を一身に背負い

「チョン・ユンホ」を封印することで
自分の感情を押し殺すことで
沈黙を押し通すことで


僕らを守っていたんだ






ねえ、ヒョン



僕は今もまだわからないんだ



あの時、僕はどうすればよかったんだろう







いつか



その答えが



見つかる日がくるのかな・・・






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プロフィール

haruno

Author:haruno
2011年のレコード大賞「why?(Keep Your Head Down)」で伝説の”秒殺トン堕ち”したharunoのブログです。「BL」や「腐」という言葉の意味すら知らなかった私が、もはや脳の9割近くが腐っています(笑)。ユノとチャンミンの「萌え日記」と「妄想小説」をマイペースに書いています。

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